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宝物 フィンランドノート①

フィンランドで買ったアメジスト。
紫色のきれいな石。
今日もながめた。



2008年9月28日。
とても遅い夏期休暇。
私はフィンランド北部にある
Luostという町にいた。
ファームステイ先のおじさんが
連れて行ってくれた。

おじさんが途中、車をとめる。
「ほら、トナカイだよ」

この町ではアメジストが有名なんだそう。

カフェに入り、おじさんが、
ドーナツとコーヒーをごちそうしてくれる。
コーヒーはセルフで、
大きなマグカップだったから
私は半分だけそそいだ。
だけど、おじさんが「もっといれなさい」
と、なみなみと注ぐから、苦笑い。

このカフェで同じテーブルになった
フィンランド人の親子がいた。

5歳くらいの息子とパパ。
おじさんが私のことを
紹介してくれたのだろう。
日本から来たんだよ、と。
息子は私に興味がなくて、
大きな青い目をふせて、
ふん、って顔してた。

だけど、パパは興味があったみたい。
きっと日本から来た女の子に
ただ親切にしたかったのだろう。
細いフレームのメガネをかけたパパが
やさしくほほえむ。

パパは息子の素っ気なさを気にしながら、
自分のことを話してくれた。
そして顔を少し赤くして教えてくれる。

「僕は、ここで妻のために
アメジストのネックレスを買ったんだ」

「my wife」の発音、鮮明に覚えている。

買ったネックレスを見せてくれる。
はにかみながら。
箱を開ける手が少し震える。


パパ、すてきすぎるから。

アメジストを見る度に、思い出す。
あの親切な、はにかみパパと
素っ気ないけどかわいい男の子のことを。

カフェで売られていた
小さなアメジストを私も買うことにした。
4ユーロだった。



アメジストをながめる。

つやつやですべすべできらきら。
今日もきれいに輝いている。
輝き続けている。

フィンランドで見つけた私の宝物。