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カシオペイア

25くらいの時にミヒャエル・エンデの『モモ』を初めて読んだ。ものすごくおもしろかった。あまりに感動したから会社の一分間スピーチで『モモ』の話しをした。何を話したかはもう忘れている。でも、後で先輩が「モモ、いいよね」って話しかけてくれた。

私が会社を辞める時、隣の部署の(あんまり話したことのない)同い年のひとがミヒャエル・エンデの『はてしない物語』を送別の品に贈ってくれた。「古本屋で買った」とか言ってたけれど、きれいだしすごく嬉しかった。立派な装帳。古本というのも、この物語にぴったりだ。夢中になって読んだ。センスが良すぎてびっくりした。あの時のスピーチを聞いてくれていたんだな。

実は『モモ』も『はてしない物語』も一度読んだきり。再び通しで読みたいと思っているけれどなかなか読めずにいる。でも、ずっと心にちゃんとあるし、手放したいと思ったことがない。本棚の守り神のような。背表紙を見るだけで安心する。

『モモ』を読んでから、カメが好きになってしまった。カシオペイアという名前のカメが出てくる。読みながらこのカメのことを愛おしいと思った。それでリクガメを飼ってみたい、とよく思う。波のように飼いたい熱がやってくる。やはり諸々覚悟がいるし、何より家族の協力が必要で、現実はかなりきびしい。ホームセンターのペット売り場でカメをながめる。いつもあきらめるしかない、と思って神社にいるリクガメに会いに行く。暑くてなかなか神社に行けずにいたけれど、涼しくなったら会いに行こう。ひとまわり、いやふたまわりくらい大きくなっているはずだ。最初、あのカメさんは手のひらサイズだったのに。カメさん、元気にしてますか?

この本の表紙が大好きだ。
思い出すたび図書館に
リクエストしてしまう。

こんな風に私もカメさんを
かわいがってみたいのです。