とにかく明るいおじさん

「私はホームセンターの職員ですんで、
安心してください！」名刺を渡される。
台所の電気がついに壊れたので、
交換してもらうことになった。
何気なく言ったであろう、
安心してください！が
私の頭でこだまする。

ホームセンターで電気を選んだ時、
見た目が全く同じだけど価格が4000円
くらい違うものがあって。
こっちでいいよね、と安い方を選んだ。
その違いはなんなのか、
今になって聞いてみる。
型落ちですかね？と。

「あー、はいはい。
こっち側にあったのを選んだんですね。
大正解！」

思わぬ、大正解！にビクッとする。
型落ちとのこと。

「それに、前の電気よりも
形が少しだけ大きくて、
天井についた跡も、ほら隠せるでしょう。
（だから）お客さま、大正解！」

二回目の大正解！をいただく。

おじさんは何かにつけ、
大正解！と言う。五回は言った。
そのたび、ばかみたいにハッとする心。
大正解って言われると嬉しいかも。

「何か他に不具合があるところ、
手の届きにくいところとかありましたら、
私見ますから。遠慮なく言ってください」

台所の電気取り付けが終わった後、
そんなことまで言ってくれた。
親切なおじさんだ。
50代？60代？
マスクをしているからか、
ちょっと年齢不詳。
帽子を取り、深々頭を下げて帰られた。
さわやかにおじさんが帰られる。
なんと気持ちの良い接客。

夫に話す。
安心してください、から始まったことを。
「はいてますよ、って言わなかった？」
「言わなかったけど、大正解！
　って言ってた。五回くらい言ったよ。
　他にも何かあれば見ますよ、だって」
「へえ、親切だねえ」

＊

…という出来事が少し前にあり、
おじさんの安心してください＆大正解が
忘れられずにいる。
安心してください、は難易度が高いが、
大正解！についてはチャンスがあれば、
使ってみたいとひそかに思っている。

言葉使いひとつで、
こんなにも記憶に残すなんて。
おじさんすごい。

今日もきっと、どこかの家で
安心してください＆大正解
とおじさんは言うはずだ。

そう思うと、
なんだか心がぽかぽかする。
あのおじさん、すごいわ。