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土星の耳

西暦1609年、イタリアのガリレオ・ガリレイは、レンズを組み合わせてできる望遠鏡の噂を聞きつけ、好奇心に駆られて望遠鏡作りに取り組んだ。そして3倍の屈折式望遠鏡の製作に成功した。今ならAmazonでポチッとするだけで望遠鏡が買える時代だが、当時は自らレンズを磨き、苦労して作らなければならなかった。
ガリレイは自作した望遠鏡で天体の観測に取り組んだ。月にクレーターがあることや、木星に衛星があることなど、多数の歴史的発見をする。このことにちなんで、天体望遠鏡の発明は1609年とされている。
その後、ガリレイは3倍に続いて、8倍望遠鏡、30倍望遠鏡とどんどん製作する。生涯に60本以上の望遠鏡を作ったと言われている。

わたしも35倍と88倍の接眼レンズのついた初心者向けの天体望遠鏡で夜空を眺めている。クレーターだらけの月や、木星の縞模様、その周りを周る衛星を観る。木星の衛星は現在発見されているもので79個あるが、ガリレイが発見した4個の衛星イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストをガリレオ衛星と言い、わたしの望遠鏡でも容易に観ることができる。他に土星の環っかや三日月のように欠けた金星、さらにはオリオン大星雲やヒアデス星団を観て楽しめる。

ガリレイが初めて土星を観測した時、真ん中の大きな丸の両隣に小さな丸を書いたスケッチが残っている。「土星は3つの星でできている。中央の星が大きく、3つの星は接触するようだ。まるで耳のようだ。」と記している。またその耳が年々どんどん小さくなってついには消えてしまうのを観て、その理屈が理解できなかった。土星には30年の公転周期があり、公転中に地球から見える環の傾きは変わっていく。傾きが水平になると環は消失して見える。ガリレイは環の消失現象を観測していたのだ。
自作した十分な倍率とは言えない望遠鏡で、それでも歴史的な観測成果や発見をしたガリレイという人に改めて感心してしまう。さぞかし好奇心の塊のような人だったのだろうなと思う。

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