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それから一か月が経った。 柳場の一件があって後、陰陽寮では上から下まで事後処理に追われて…
夢弦は気が急いていた。 「ええい、まだかえ」 待っているのは、平貞盛の代理を名乗る男である…
薄暗い院の奥に、二、三のあかりが灯る。 たれこめた御簾の内では、先ほどから上皇がうなって…
大広間に面する縁側から庭に向けて、先ほどからいくつもの椀が投げ込まれていた。 怒りをあら…
真中と玄奈は、陰陽寮のとある一室にいた。 二人の前には、腕組みをした直属の上司が一人、机…
狐の祠から峠を三つ越えた個所に、果たして大きな滝があった。 お香の兄、源 義彬は、この近…
一色たち四名が、平貞盛一党に囚われの身となり三日が過ぎた。 この日、辺り一帯の役人である貞盛は、用があると言って朝早くから寺を留守にしていた。 残された者たちはそれまで通りに過ごすこととなり、四名も午前中は書庫にこもっていた。 見張りはうまい具合にいない。 「これは好機ではなかろうか。」 雅之がぼそりとつぶやいた。 「いかにも。」 同調を示したのは一色である。 「好機とは？」 玄奈が尋ねる。 「逃げ出すってこと？」 真中が息をひそめて書棚の間から顔をのぞかせる。 「やっかいな
翌朝は、鍋を金物で叩くけたたましい音で起こされた。 言われるがまま顔を洗い、食事の支度を…
一羽の紋黄蝶が、ひらひらと舞っている。 蝶はしばらく逡巡した後、今しがたこしらえたばかり…
里山をゆく水干姿が二つ。 一色と雅之は、一応の土産話を携え、一路、村の道を辿っている。 社…
「こりゃあ、後始末が大変ですねぇ。」 夜半の女の声でも目覚めず、一人熟睡していた鈴が起き…
鈍い鈴の音が鳴る。 その後に間を置いて、二度、手を叩く音が鳴る。 ここは柳場《やなぎば》近…
一筋の涙が、頬をついと流れた。 その感覚を感じ取って、涙の主はぬっと起き上がる。 「おっ、…
