第七回ゴイサギ読書会『にず』田宮智美 レポート
・日時:12月26日(土)15時~17時
・会場:Zoom
・歌集:『にず』田宮智美 (現代短歌社)
・レポータ:梅原ひろみ
・参加者(敬称略):梅原ひろみ、川本千栄、河野美砂子、近藤かすみ、 いわこし 他 見学一名
【内容】
梅原さんのレジュメに基づく発表)
最初は『感傷ストーブ』川島結佳子をイメージしたが違っていた。
・丁寧に作られている歌集
・白い壁が要所で歌に登場する
・犬や猫がうたわれるが他の歌集であるような溺愛ではなく距離がある
・その代わりこけし愛がすごい
・現在形のうたが多い
・ウェットではない。
・この作品のあとの次が楽しみ(どういう歌をうたうのか)
川本)
・『感傷ストーブ』川島結佳子と似ているところがある。
それは歌の中で自分を低く見せているような自虐的なところ
この自虐性の歌についてはもう少し上の世代ならそういう歌がない
・客観的であり構成がうまい
忘れるという復興もありましょう わたしは忘れ生きてゆくます p71
→忘れたいという歌として読んだ(川本)
→いやこれは忘れられないという表現なのではないか(河野)
河野)
・歌集の入り方がよい。
・よいと思った歌
溺れたり流されたりもできなくてわたしはわたしのままの水底 p12
→どうしようもないところがリアルでより
声にして涙と波が似ていると気づいた秋の海水浴場 p19
→心に即してこの気づきが新鮮
コンビニに眠れるCDなくなりて痩せるCD置かれる2月 p69
→現場感があってよい
「またね!」って帰り際に言う「さよなら」と先に君から告げられぬよう p88
→切ない
ゆるし方ばかり上手になってゆく心に最上川が流れる p109
→下句がよい
守るものがなければ朝のミサイルも地震も構わず二度寝するなり p132
・ほとんどの歌が「われ」の歌で身近なところ(そういう意味でも「最上川~」はよい
近藤)
・こけし愛
こけしこけしこけしが欲しい胴をにぎり頭をなでて可愛がりたい p39
→読書会の中では性の象徴とも読めるという意見あり
わたくしの名に九つの窓があり結露しているその磨りガラス p91
・作者と歌集が七割から八割重なっているところがあるようで読みやすい
生きづらさということについて)
・今だから生きづらいというわけでもない。ただ、昔のようにいわゆる名歌 というものに嘘くささが感じられるそういう社会になってきている
・社会的に成功されていたように見える河野裕子のうたであってもそこには
寂しさやむなしさといったものが歌われている。個人の社会的属性に頼り すぎないようにする必要がある。
・『にず』は私小説的。震災がテーマということではなく自身の作品に震災 を取り込んでいるよう。この人が次にどこに行くのか興味がある。
その他)
・あけすけに書かれている歌があるがもう少し膨らみをもたせている歌のほ うが好き
・「コシアブラ」のうたがいくつかあるがこれは山菜⇒原発事故の汚染を暗 示している?
やまたずの初潮を迎えしとき母に「いやらしい」とぞ吐き捨てられにき p148
⇒いいという意見と歌としてはやりすぎ(生すぎる)意見あり
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