「雨月物語(映画)」を見ました

 溝口健二監督の「雨月物語(映画)」を見ました。
 ヴェネチア映画祭で銀獅子賞を受賞した名作ですが、見たことなかった映画でした。Amazonプライムで見れたので、「どんなものかなー」と思って鑑賞してみました。
 この辺りが、Amazonプライムの好きなところです。ハズレの多いB級映画も気軽に見れるので、「隠居の暇人」と「サブスクリプション」の相性最高!!
(雨月物語は名作なのでB級ではありません。念のため)

ネタばれあります

主人公 源十郎 森雅之:近江に住む焼物を副業とする農民
ヒロイン1 若狭 京マチ子:謎のお姫様、この世のものと思えない美しさ
ヒロイン2 宮本 田中絹代:源十郎の妻、献身的な奥さん

 戦国時代の話です。映画の雨月物語は文学の雨月物語とモーパッサンの小説を組み合わせた脚本となっています。なので、元の雨月物語(怪談の短編集)とは若干違っています。

まずは金銭欲に溺れる源十郎

 近江が豊臣秀吉と柴田勝家の戦場となっていた時の話です。たぶん賤ケ岳の戦いの前後のイメージで作られているようです。
 源十郎は焼物を副業としている農民です。戦乱の中で、自分の焼物が市場で高く売れることに気が付きます。
 妻の宮本が止めるのもかまわず、大量の焼物を作成します。村が戦乱に巻き込まれそうになりますが、無理やり焼物を完成させます。

 金銭欲で目がくらんでいます。一応、妻の宮本や子供を喜ばせようと思って金を稼ごうとしているのですが、それよりも「儲けること」「今、売らないと、高く売れない!」「このチャンス(戦乱)を逃すものか!」となっています。
 まあ、若い男性にありがちです。手段(お金)が目的化して自分を見失っているなー。今だと、高級時計(ロレックスとか)、高級車(レクサス、アウディ、ベンツとか)、高級住居(タワマン、港区住民とか)あたりでしょうか。

次は色欲です

 戦乱のため村の近くの市が立っていないので、琵琶湖を船で移動して市が立っている街まで行きます。この時、妻と子供は危険なので途中で家に帰します。
 市は賑わっていて、焼物は飛ぶように売れます。
 そこへ、侍女をつれたお姫様(若狭)が焼物を買いに来ます。これが、この世の者とは思えない美しさ!明らかに、怪しいです(どうも、源十郎も薄々気づいているみたいですが)。
 購入した焼物を屋敷に持ってくるように言われます。

うーん仕事を褒めるか・・・それ、反則です

 源十郎は、屋敷で若狭に接待されます。源十郎は若狭を若干怪しんでいるので、遠慮しながら接待を受けます。
 ところが、その時にお姫様が源十郎の焼物をほめちぎります。
 しかも、若狭は具体的に焼物を褒めています。漠然と「素敵な仕事ですね」「凄いですね」では無く、「焼物が素敵」「この青色に惚れました」「どうやってこの色は出すのですか」と仕事の細部を褒めています。
 これ、男性が弱いやつです。仕事を褒められると「うーん、俺って凄いのか」「やっと仕事を認められた」と舞い上がってしまいます。銀座とかの高級なお店だと、このテクニックを駆使するとかしないとか(私、行ったことが無いのでわかりません)
 世の中、仕事を褒めてもらえることは、ほとんど有りませんので、普通の男性なら十中八九落ちると思います。もし意中の男性が居る方は、やってみる価値はあると思います。(もしかすると女性にも効果あるかも)

 源十郎はその後、色欲に溺れていきます。確かにこの流れなら、溺れても良いかー、いや溺れてみたい、と思わせる展開です。

やっぱり、この世の者では・・・

 色欲に溺れている源十郎ですが、道ゆく僧侶に「死相がでている」と言われて、亡霊に取りつかれていることがわかります。
 さすがに、源一郎も命は惜しいので耳無し芳一のように全身にお経を書いてもらいます。
 屋敷に戻ると、若狭が侍女とともに本領を発揮します。予想通りですが、かなり怖かったです。さすが京マチ子さん!

なんとか家に帰りますが

 源十郎は命からがら、なんとか家に帰ります。
 家には、妻の宮本が優しく迎えてくれます。
 若狭に溺れていた時と違って、穏やかな時間が過ぎていきます。

 しかし、実は宮本は家に帰る道中で雑兵に殺されていました。子供をかばうために。迎えてくれた宮本は若狭と同じく亡霊でした。

 この対比が、とても良かったです。「自分の欲(男性と契りを結びたい)を満たすために出てきた亡霊」と「夫や子供を幸せにすることを満たすために出てきた亡霊」。同じ亡霊ですが、正反対だなーと感じました。

サブストーリーも面白いです

 サブストーリーとして、妹夫婦の話もあります。
 こちらは、名誉欲がテーマだと思います。

さすが溝口健二監督です

 さすが溝口健二監督です。
 ただ、今だとコンプライアンスに引っかかって、作れない映画だと思いました。戦乱の表現や、女性の描き方(サブストーリーで顕著です)は、もっとマイルドにしないと公開できない気がします。
 逆に、昭和世代の私にはこのくらいの表現の方が素直に受け取れると感じました。今話題のドラマ「不適切にもほどがある」にも通じるところがある気がします。

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