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修繕時の対応について【民法改正】

2020年4月民法改正より、入居中のアパート
室内にて何か不具合が起きた時

入居者が勝手に修理してもOK

かつその費用を貸主に請求してもOK

となることついてお話しします。


まず、今回の民法改正は

約120年ぶりの改正

となります。

これがどういうことを意味するか。

今までの民法は明治時代に作られた法律をずっと現代まで踏襲していたということです。

当時は圧倒的に住宅不足の時代でした。
食べ物も今のように充足していない、貧しい人も多い、住む場所を見つけるのも困難だった。

となると土地建物を貸す貸主と借主の関係は
必然的に
「貸主 > 借主」
となってしまいます。

そうした時代背景を前提とした民法だったということです。

それから時が経ち、人口減と物件供給過多、ネット社会により貸主と借主の立場は最早逆転しています。

要は、そうした状況を踏まえた上での民法改正ということです。


修繕権に関する民法改正の条文は
以下になります。

改正民法607条の2(賃借人による修繕)
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき

通常であれば、入居中に不具合が出た場合には
借主は貸主側に連絡の上、貸主側が業者を手配し貸主負担にて修理を行う、という流れですが、

借主が連絡したにも関わらず、貸主が負担を拒み修理を許可せずそのままになってしまう、もしくは貸主側の対応が遅く借主にその分迷惑をかけてしまう、というのは現在においても考えられるケースです。

この条文は、修理対応が遅い、もしくは修理しない、という場合は借主が勝手に自ら業者を手配して修理してもOKになるということ。
また、

その費用を貸主に請求OK

という意味にもなります。

これはどういう意味かというと
借主側が手配した業者であれば、例えば借主と関係の強い知り合い業者、借主側と結託している業者等であれば、大きく利益を乗せられて貸主側に請求される可能性があるということです。

また、借主が勝手に手配した業者がある程度の質の高い業者とも限りませんので、それに関するリスク考えられます。

しかも「急迫の事情があるとき」も一緒。

お湯が出ない、電気がつかない等の日々の生活に重大な支障を与える不具合であれば尚更、ということです。

勿論、借主が修理を行って良い場合については
修理の必要がある「必要費」に限りますし、「借主の責めに帰すべき事由」なら当然対象外。必要費でなく「有益費(グレードアップ分)」も同様です。

とはいえども、貸主にとっては
どうしても「不利」と言えてしまいます。

民法改正を盾にして、悪い借主に好き放題される可能性があるからです。

「恣意的に」借主が修理を勝手に行って貸主へ請求してくるかもしれません。

「急迫の事情」については先程例を挙げましたが、具体的にどんな時がそれに当たるのかは条文に明記はないですし、貸主の対応がどれくらい遅ければ借主が勝手に修理しても良いか、具体的に条文に記載はありません。

要は、借主の都合良い解釈によって、貸主側が不利になってしまう可能性があるということです。

貸主がそれを防ぐ手段については、
民法改正に対応した契約書明記をすることです。

相互間の賃貸借契約書に不具合が起きた際の修理手順、修理の必要性、修理箇所について明記し、借主に署名捺印を貰うことが一つです。
まずは「借主が修理を行う際は貸主に事前承諾してもらうことが条件である」旨をしっかり明記すべきですね。

また、不具合が起きた場合の対応をなるべく早く行えるようなスキーム作りに努めることです。

借主と貸主の間には、大抵管理会社が挟まれます。不具合が起きたらまず借主から管理会社に連絡があり、不具合修理の見積もりを取って貸主に負担の了承を貰い、やっと修理に移るというスキームが基本ですが、貸主となかなか電話が繋がらない、もしくは費用でゴネられ対応が遅れることはよくあります。

貸主と管理会社の契約書にも、修理費は貸主の了承の上、行うことができるとの記載が殆どです。

管理会社に任せてるばかりである貸主であれば、今回の改正を機に入居者対応でつまづかない為にも管理会社と積極的に協力していくスタンスを取るべきでしょう。

また、今回の民法改正では
以下、修繕による賃料減額についての記載もあります。

民法611条
(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等 )
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される

賃貸物件の室内設備として設置されていたエアコンや給湯器が急に壊れてしまった場合、
借主は、使用出来なくなった分の家賃を当然に減額できるということになります。

では、どれくらい減額されるのか?については
日本賃貸住宅管理協会が以下のガイドラインを出しています。

例えば家賃10万の物件でトイレが3日使えなかったら、免責日数1日分引いて、家賃2日分の30%だから

10万×30%÷1ヶ月30日間×2日分=2,000円

2,000円分の減額となります。
(あくまでも、これは一時的な減額です)

貸主側としては、このガイドラインを
消極的に捉えるのでは無く、寧ろ活用していくべきだと思います。

民法改正により一部滅失すると当然に減額できると「はっきり明記」されることになりましたので、借主から精神的苦痛等理由をつけて、割高な迷惑料を請求されてしまう場合を考えると、契約書にこのガイドラインを明記する等行えば、際限無い金額を請求されるリスクを減らせるというものです。

たとえ契約書に記載が無くとも、こうしたガイドラインがあることを頭の隅に入れておくことはいざという時に借主、貸主相互にとっても重要ですね。

お読み頂きありがとうございました😊

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