【詩】窓
窓
川面に明かりが揺れて
もう眠りにつくのだろう
オレンジ色のカーテンがひかれ
安らかな夜を眺める
夜の窓辺に立つ人は
遠くからやってくるものを
知っている
言わなかった言葉の破片がこぼれ
どうして
窓という窓は
さびしい夜を映しているのだろう
夕焼けに後ろ姿ばかり映して
閉じられていく
窓という窓は
どうして
何も言わなかったのだろう
その窓に
手をかけなかった
どうして
開こうとしなかったのだろう
川の向こうの窓の
ひとつひとつに安らかな眠り
そこにない
さびしい窓は
夜を映して
『イリプス』(たぶん33号あたり?)掲載