見出し画像

和歌と狂歌二十首

和歌十首

〇 天覧の サヨナラホーマー 鉱石の
               ラジオで聴きし 少年の日よ
 
〇 おのこやも 名を残すべし よろず世に
               幼き壮語 悔みはせぬが

〇 烈日も 秋霜もなく 年を経て
               街の景色に 溶け込む身かな

〇 おのずから たのむ旅路は 空しくて
               怠る日々の 齢重ねつ

〇 じっと見る 我が両の手は なりわいの 
               憂いに由りて 節高し

〇 厭う世が 月澄む秋に なりぬれば
               うまき酒あり しばし慰む

〇 懐かしむ 海の響きを 辿り来て
               今こそ掘らめ 記憶の貝塚

〇 捨てたれど なおも捨てえぬ 心地して
               日々の煩い また断ち難し

〇 風になびく 煙の如き わが身かな
               来し方見れば 言うこともなし

〇 浮草の 身こそ水面に 揺るがるれ
               末は四大に 還る身なれど

狂歌十首

〇 飛鳥落ち 橘枯るる 末の世に 
               いかで戍らん 我らが山河

〇 バイロンよ 俺の戦場は 何処なのだ    
               教えてくれ 俺の戦場を

〇 波乗りの 男と女 跋扈する
               いつの時代も 世は軽薄

〇 人はみな 時の流れに 入りぬめり
               古き淵にぞ 我留まらん

〇 この国は 鏡のない国 自画像を
               何時まで経っても 描くこと能わず

〇 物差しは  世界が認めた  ただそれだけ
               判断基準 我らの手になし

〇 惜しまれぬ 身ばかり世には あるものを
               直き命の などて儚き

〇 たわむれに 夢を背負いて そのあまり 
               空しきに泣きて よろめき歩めり

〇 デン助と 老いたるハウゼ 間違えし
               タンゴの調べ 懐かしきかな

〇 冷や水と 笑わば笑え 創作の
               爆発が来た 老いらくの春

                         了

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?