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【小説】デスゲーム保険

殺風景な部屋の中には年齢層がバラバラな9名の人間がいる。横たわっている者もいれば、出口を求めてウロウロとしている者もいる。そんな中、ヴヴン……という音とともに、巨大なモニターにテディベアの人形が映し出された。

「みなさまお目覚めでしょうか。わたくしはこのゲームの支配人でございます。みなさまには今から命をかけたゲームに挑戦していただきます。」

テディベアの人形から、ボイスチェンジャーを通したであろう声がした。参加者がざわめき、怒号が飛び交う。「ゲーム?どういうことだ!」

テディベアは表情一つ変えずに淡々と説明を続ける。

「今からみなさまに遊んでいただくゲームは人狼ゲームです。ルールはみなさまご存知と思いますが、そうでない方向けに少しばかりご説明を。9名のうち7名が市民、2名が人狼です。みなさまで昼と夜を繰り返します。昼は市民の時間。誰が人狼なのかを話し合い、人狼と思われる者を処刑します。そして夜は人狼の時間。市民一人を殺害します。これを繰り返し、人狼を全員殺害することができれば市民の勝ち、市民と人狼が同数になればその時点で人狼の勝ちとなります。」
「処刑されたり、人狼に殺されたらどうなるんだ?」
「みなさまの腕についているリングから毒物が注射されることで死に至ります。安心してください。苦痛は長くは続きません。」

参加者は互いに顔を見合わせた。参加者のうちの一人が挙手をする。
「つまり、これって、デスゲームって、ことですか?」
仮面の者は当然というトーンで「その通りでございます」と回答した。

「やった!!!!デスゲームだ!!!まさか参加できる日が来るなんて!!!」

その刹那、参加者たちはみな一様に立ち上がって大いに喜び始めたのだ。まるで応援していたスポーツチームが勝利した時のような光景である。参加者の一人であるニイヌマという男だけが、この状況を理解できていなかった。もしかして殺人狂たちの中に巻き込まれてしまったのか?ニイヌマは震える声で参加者たちに問うた。
「ちょっと落ち着いてください!どうしてデスゲームで喜んでいるんですか?」
すると参加者の一人が振り返って言った。
「えっ?……ああー、あなた入ってないんですか。デスゲーム保険に。」
「デスゲーム保険?」

デスゲーム保険とは、とある保険会社が出している保険商品である。望まぬ意思でデスゲームに参加させられて、死亡してしまった場合なんと2億円が支給されるというものだ。生還した場合の支給額は1000万円となる。

「えっ、じゃあここにいるみなさんは、その保険に入ってるってことですか?」
「ぼくを含めて喜んでる人はそうでしょうね。かわいそうだな〜今からだと流石に入れないかな。資料請求……さすがに電波届かないか〜」

異様に冷静な参加者たちを尻目に、ニイヌマの身体中からは汗が吹き出し、手が大きく震えていた。参加者たちの喜びムードを切り裂くように、震える声でニイヌマは大声を出した。

「ま、待ってください!」

参加者の残りの8人が一斉にニイヌマの方を見る。ニイヌマは声を震わせながら、参加者に語りかけた。

「デスゲームってことは、死ぬかもしれないんですよ。命がかかっているときに、こんなの、おかしいですよ」
きょとんとした顔で、参加者がニイヌマに問いかける。
「おかしいって何がですか?」
「死ぬかもしれないってときにこんなに大喜びするのがおかしいってことですよ」
「うーん?でも、2億円もらえるかもしれないってときに大喜びするのは当然じゃないですか?」
「死んだら2億円は使えませんよ!生き残らないと、何の意味もないじゃないですか。」
「ああーまあそういう人もいるでしょうけど……」

参加者たちが顔を見合わせる。全員の表情から死への恐怖というものがまるで感じられなかった。
「んーじゃあとりあえずみんなの意思を聞いて、生き残りたい人は生き残る感じで、やっていきましょうか。」
参加者の一人が飄々としたトーンで言う。ほぼ全員がそれに同調し、ゲームが開始されることになった。

「それでは役割を発表します。」とテディベアが宣言すると、手元の腕輪にそれぞれ役割が表示された。ニイヌマは人狼であった。

「それではデスゲームを始めます。昼になりました。誰を処刑するのか話し合いで決めてください。」
テディベアの言葉を皮切りに、一人の男が全員の顔を見て問うた。
「えーと、状況を整理しましょうか。ぼくはクラハシって言います。まず保険に入ってる方は手をあげてもらえますか?」
ニイヌマを除く全員が手をあげた。
「なるほど、じゃあみなさんの中で、死んででも2億円がほしいという人は?」
こちらもニイヌマを除く全員が手を挙げた。躊躇いがちに小さく手を挙げるものすらいない。全員の手がまっすぐ上を向いている。
「そうですか。保険に入ってない1人以外、みんな死んでもいいってことですね。」
クラハシは思った通りの状況になったことで、安堵の表情を浮かべる。他の参加者たちもこの状況に安心したのか、口々に話し始めた。
「死んでもいいというか、2億円がどうしても欲しいですね。せっかくこんなことになったんですから、2億円もらわないとやってられないなというか。」
「ああーそれわかります。デスゲームなんてみんながみんな参加できるものじゃないですし、今日のためにこれまでデスゲーム保険の保険料払ってきたんですからね。」
参加者たちは奇妙なほど和やかに話していた。ニイヌマがこれに割って入る。
「みなさん落ち着きましょう。このゲームの目的がわからない以上、迂闊に命を無駄にしてはダメです。生き残って、1000万円を得るべきではないでしょうか?」
ニイヌマはまっすぐな目で参加者たちを見つめる。しかし、参加者たちはニイヌマの目をまったく見ていない。
「うーん、生き残ったら2億で、死んだら1000万ならまだ頑張って生き残らなきゃって思いますけど、この保険って死んだほうが貰えるお金高いですからね。ぼくは2億を選びたいですね。」
「1000万円を元手に2億円にできるかもしれないじゃないですか」
「1000万円が0円になる可能性もありますからねえ。わたしは投資とかそういうのできないんで……」
ニイヌマの意見は空回りして全く参加者たちに響かない。場はより具体的な話をする方向に進んでいく。
「デスゲームって生き残りが必ず出ちゃうじゃないですか。今回の状況だと、無保険者が一人いるっていうのは都合がよくないですか?無保険者が生き残ってくれたら、ぼくら全員が2億ずつ得ることができるじゃないですか。」
「そっか〜じゃあ無保険者さんが人狼だったら全員2億円ゲットできるんですね。でも市民だったら……うーん、どうやっても誰かが生き残っちゃいますね。無保険者さん、どうなんですか?」
ニイヌマは沈黙した。正直に人狼と答えても彼らの得になるだけであり、嘘をついて市民と答えたとしても、何のメリットにもならないからだった。
「んー?何で教えてくれないんですかね。まあいいか、そろそろ時間もないので誰を吊るか決めましょうか。」
「じゃあわたしでいいですか?サカグチといいます。」
「いいですよ。サカグチさんは2億円もらったらどうするんですか?」
「わたしは数ヶ月前に会社をクビになって、今は家族に苦しい思いをさせているんです。清掃の仕事を始めたのですが家族を養うには不十分で……でも、2億円もあれば、女房にいい暮らしをさせられるし、息子たちを大学にもやれると思うんです。1000万円じゃとても足りないんです」
「なるほど……じゃあ、今回はサカグチさんということでいいですかね?」
ニイヌマを除く全員が頷いた。


サカグチ様・・・8票
ニイヌマ様・・・1票
今回の処刑者はサカグチ様となります。
おめでとうございます。サカグチ様は人狼でした。残る人狼はあと1名です。


夜になる。ニイヌマは人狼で、先ほど処刑されたサカグチが人狼だったから、ニイヌマが誰かを喰わなければならない。ニイヌマは誰も殺したくなかったのに、こんな役回りを追うことになった運命を呪った。誰を殺すかはタブレット端末で選ぶ。自分の名前を何度も選んだが、人狼が自分を殺すことはルール上できなかった。仕方がないのでニイヌマは震える手で、昼間に場を支配していたクラハシという男を選んだ。


クラハシ様が無惨な姿で発見されました。投票で誰を処刑するか決めてください。


「困りましたね……人狼があと一人になっちゃいました。サカグチさんは困ったものですね……」
「人狼だと最後まで吊ってもらえないかもしれないから、早めに言ったんですかね〜それにしてももうちょっとよく確認しておけばよかったですよ。」
よくしゃべるクラハシがいなくなったことで話し合いの進みが少し遅くなっていた。
「そういえば夜にも一人殺されるんでしたよね。クラハシさんが2億円もらったら何するのか聞けばよかったですね」
「さっきトイレで会ったとき、参加しているベンチャー企業の資金にするって言ってましたよ。うまく活躍できなくて悩んでたみたいです。」
ニイヌマの手が震えた。その程度の理由なら、話せば生存への道を説得できたのではないか?と思うからだった。頭の切れるクラハシをこちらの味方につければ、生存者が多くなったかもしれない。ニイヌマは大した理由もなくクラハシを殺害したことを悔やんだ。そして、この地獄は早く終わらせなければならないと決意した。
「次はわたしを吊ってもらえますか」
ニイヌマは自ら挙手した。
「えっなんでですか?あなた無保険ですよね?死んでも無駄死にじゃないですか。」
「それにあなたが死んだら、生き残らなきゃいけない人が出るから俺たち損なんですよ。何であなたを吊らなきゃいけないんですか?合理的な理由を教えてください。」
戸惑う参加者たちに、ニイヌマはまっすぐな目で言った。
「それはわたしが人狼だからです」
参加者たちは一様に首を傾げた。ニイヌマは続ける。
「わたしが人狼だから、わたしを吊ればこのゲームは終わります。サカグチさんとクラハシさんが亡くなって、みなさんも正直動揺してるんじゃないですか?生き残りたいって思うのなら、わたしを殺してさっさとこのゲームを終わりにしましょう。わたしはこのゲームの緊急脱出装置です。だから……」
「あーあー、わかりましたわかりました。じゃあ毎日二人ずつ、2億円もらったらどうするか話しましょう。」

ニイヌマは一晩考えて、自分が人狼であると告白することにした。その目的は、この告白を皮切りに、このデスゲームの様相を変えることだった。みんなで協調して死を選び、2億円を得る流れを止めて、誰かが裏切って生き残ることを選ぶと全員が2億円を失う、という構図にしたのだ。残り6人の中には、1人くらい生への執着を示すものがいるはずだ。そこから結束を乱し、多くの人が生き残る方策を見出そうとしたのだ。1人でもニイヌマに投票する人が出てきたら、そこから内輪揉めになって、場合によっては生存者が増えるかもしれない。ニイヌマはそう考えたのだ。

やがて、二人が死を選ぶ理由の演説を行い、昼が終わった。


ヤノ様・・・7票
ニイヌマ様・・・1票
今回の処刑者はヤノ様となります。
残る人狼はあと1名です。


ニイヌマは愕然とした。誰一人として生への執着を見せず、裏切らなかったのだ。参加者の1人がいう。「ニイヌマさんが人狼だって自白してくれて良かったですよ。誰も名乗り出ないから、保険者の中に裏切り者がいるのかと思いました。」

殺戮は粛々と進んでいった。娘の手術費用に1億円が必要だったヤノ、科研費の不足を理由に断念した研究を後輩に続けてほしいと語るジョウシマ、パパ活を続けていくうちに42歳になりこれまでのパパたちへの復讐の気持ちで2億持って死にたいというムラカミ、トー横界隈でお世話になった人や仲間たちに2億円を分けてあげたいというタナカが続々と処刑され、あるいは捕食された。

残り3人となった。ニイヌマにとってこれが最後のチャンスであった。

「本当に、いいんですか?死ぬのは怖くないですか?」
ニイヌマは残り2人の目を見て問いかける。
「あなたこそ。あなたこそ、怖くないんですか?」

オオツキという女がニイヌマに問いかける。

「どうしてそこまでするんですか?自分は無保険で死んでも得るものがないのに、自分が死んででもわたしたちを守ろうとする意味が、わからないです。」
「それは……」
「みんな自分が死にたい理由だけ喋って死んでいきましたけど、わたしはあなたに興味が出てきました。ただの偽善者なのか、あるいは何かわたしたちが生き残ることであなたに意味があるのか。時間はたっぷりあるので、教えてもらえませんか?あなたの物語に少しでも意味があると思ったら、わたしは生き残ろうと思います。あなたは?」
オオツキはもう一人の参加者であるタムラに問いかけた。タムラも、「わたしは生きて帰るつもりがあんまないですけど、それはそれとしてニイヌマさんの話は気になるんで、聞いときたいですね。」と言った。

しばしの時間をおいて、ニイヌマは話し始めた。
「わたしは……ただの偽善者なのかもしれません。でも、わたしは、保険のために人が死ぬのが許せないのです。」

「わたしが幼いときに父が亡くなりました。やさしい人でした。どんなに仕事が忙しくても、息子であるわたしのことを第一に考えてくれる人でした。そんな父が病死したんです。父の死後、残された家族は、保険金で裕福に暮らす……はずでした。母は父の保険金を持って、わたしを置いて家を出てしまいました。わたしは誰もいない部屋に取り残され、給食とカビの生えたパンで何とか生き延びました。その後、母が逮捕されました。保険金殺人だったんです。わたしの父は保険金のために殺されたんです。」

オオツキは表情を変えず、ニイヌマの方をじっと見つめている。タムラは髪の毛の先をいじりながら黙っている。

「わたしの人生は保険金殺人で狂いました。だからもう起きてほしくないんです。今回のこれも、保険金殺人と何も変わらないと思うんです。自分の命を使った保険金殺人です。もちろん、これを止めるために自分の命を差し出そうとしている以上、『命とは尊いものだ』なんてきれいごとをいうつもりはありません。ですが、わたしはこれ以上保険金殺人が起こってほしくない、そのためには命をかけてもいいと思っているんです。だから、だからこうして命がけであなたたちの命を守ろうとしている。わかって、もらえますか?」

オオツキは表情を変えず、「心が決まりました。」と呟いた。タムラも頷いた。

「それでは投票の時間です。人狼と思う人に投票をお願いします」

ニイヌマは手を合わせて祈った。二人の生きたいという気持ちに火が灯ってほしい。祈るような気持ちで最後の投票を行った。


タムラ様・・・2票
ニイヌマ様・・・1票
今回の処刑者はタムラ様となりました。
残りの人狼は1名、よって人狼チームの勝利となります。


「どうして……こんな……」
崩れ落ちるニイヌマに、オオツキが語りかける。
「あなたの自己満足に、2億の価値はなかったわ。タムラさんもそう思ったんでしょうね。あなた、随分とトラウマを負ったみたいだけど、1000万円も得られずに帰るのね。かわいそうに。」

オオツキは笑いながらニイヌマに言う。
「あなたみたいな人の理想が壊れる瞬間を見るのってとっても気持ちいいわ。最期にこれが見られるなら2億がなくたっていいくらい。どん底から這い上がったのかしらないけど、どん底から這い上がれた人に、這い上がれなかった人の気持ちなんてわかりっこないのよ。さあ、早くわたしを喰い殺すボタンを押しなさいよ。このゲームのあなたの最後の仕事でしょう?」

ニイヌマは震える手でオオツキを殺すボタンを押した。言葉も発さず、オオツキはバタリと倒れた。憎まれ口を利いたのは、ボタンを押しやすくするニイヌマへの配慮だったのかもしれない。

ニイヌマは泣き崩れた。結局何もできず、自分の手で何人もの人を殺してしまった。地面に這いつくばり、ボロボロになるまで泣いて、泣いて、泣き叫んだ。

……そして、その叫びはいつしか笑いに変わっていったのである。狂ったように笑いながら、ニイヌマはテディベアのいるディスプレイに抱きつき、叫んだ。

「おい!テディベア女!これで満足か?8人殺して、合計16億も弊社からせしめてさァ!」
「はい。とても満足しました。まさか新沼部長があんなに嘘を滔々と喋れる人だとは思っていませんでした。わたしのことを覚えていますか?」

スクリーン越しに映る仮面の人間が仮面を外す。新沼のかつての部下であったハガという女であった。新沼はハガにセクハラとパワハラを行い、うつ病になったハガを退職に追い込んでいた。

「おかしいと思ったんだよ。デスゲーム保険なんて極端に加入者の少ない保険に入っているやつらが、こんなにたくさん集まるわけがない。それに、デスゲームの要件も、すべて保険適用の条件を満たしていた。途中で気づいたよ。これは全部知ってる奴の犯行だってな。俺への復讐ってわけか?」
「それはありますが、半分です。わたしは保険というものに復讐したかったんです。今回死んだのは全員わたしのかつての顧客です。こんなバカげた保険を契約しているなんて愚かじゃないですか。それを言葉巧みに引き込んで、保険料をせしめて生きてきました。契約しなければ、こんな保険成立しないのに、よくも成立させたな、って、仕事中ずっと思っていました。だからこんなクソみたいな保険を成立させた、彼らを殺そうと思った。そして実際に給付を発生させることで、わたしの罪滅ぼしをしようと思ったんです。さらに、わたしの人生を破壊したあなたに引き金を引かせることで、あなたにも復讐ができると思ったんです。」
ボイスチェンジャーを切ったハガの声はうわずっている。目的を全て達したことへの達成感が隠しきれていないようだった。
「それにしても、部長がこんなにも生存者を増やそうとするなんて思ってませんでした。他の人を蹴落とすためなら手段を惜しまない部長が、どうして嘘の偽善を並べて、命を賭けてまで生存者を増やそうと思ったんですか?」
「決まってるだろ。給付を抑えるためだよ。会社への忠誠心もなくはないが、それ以上に、こんなに給付が出たとなっちゃあ、保険料が上がるだろう?そうすると今後の俺の部署の実績に響く。それは避けたかった。それに……」
「それに?」
「俺は金には対して興味がない。俺は会社で英雄になりたかった。給付を抑えるために自らの命をかける保険営業パーソンなんて、英雄じみた話だろう?生きて営業実績が悪化するよりも、英雄として死んだ方が俺にとってはいいことだったってわけだ。
「今後の営業に響くから、自分が保険会社の人間だってことも言わなくて、デスゲーム保険のことも知らないふりをしたと……つくづく、気持ち悪いほどの忠誠心ですね。あなたも参加者の人たちと何も変わらない、愚かな人ですね。」

「しかしデスゲーム保険が適用されるには、主催者が保険のことを知らないこと、主催者が逮捕されていることが必要だ。その条件は満たせないだろう。」
「満たせないなら満たせなくても構いません。保険という概念への復讐ですから。ですが、満たす算段はあります。わたしはこのあともう一仕事終えたら自首します。逮捕の要件はクリアです。」
「……もう一仕事って何だ?」
「わたしがこの保険のことを知っている、と証言できるのは部長だけです。だから、わたしは部長をこのあとご自宅までお送りします。新沼部長は、火災保険には入ってましたよね?」

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