私のサンクチュアリ-その1

 その時はある日突然訪れた。
 高校生3年生のころ、私の学校では気になる相手を誘って一緒に受験勉強をするというブームがあった。「勉強」というのは男子も女子も共に相手と時間を過ごしたいがための口実であり、部活を引退した初夏以降に、暇を持て余しはじめた男女の即席のカップルが何組か生まれていた。 

 私も部活を引退して暇だったので、その流れに乗りたいと思った。勉強しながらデートって小説に出てきそうでなんか良い。それまで話したこともないサッカー部のシャイなイケメンに声をかけたりして。卒業まであと半年、自分なりに憧れの時間を過ごしたかった。

 サッカー部のシャイなイケメンと放課後勉強する約束を取り付けた積極的な私だったのだが、その彼は本当にシャイすぎた。何も話さずに終わった。ただ、その彼と近くにいられたことと、シャイな彼と勉強の約束を取り付けられたことで、リア充の一員になった気がした。
「でも、もっと刺激が欲しい。」
私は受験勉強よりも、学校では教えてくれない、生き物として大切なことを知るべき時が来た気がした。(つづく)

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