続・本の散歩 25/69@中央区 佃

画像1 『開店休業』吉本隆明、ハルノ宵子。高2の時に旅をした広島の宮島で、たまたま出会った大学生におごってもらった道端の焼き牡蠣の味は忘れ難いが、社会人になって上役にご馳走になった上海蟹の味は思い出せない。食は味そのものより記憶に依る。わたしは思想界の巨人の哲学を解り得てはいないが、食の説には首肯する。晩年朧ろな食の記憶を手繰る吉本に、長女のハルノがツッコミを入れる親子漫才みたいなエッセイ集。吉本の好物「味の素」をハルノと妹のばななは“命の粉”と呼ぶ。身内が明かす異才の素顔に頬が緩む。吉本が幼年期を過ごした町で。

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