続・本の散歩 51/69@藤沢市 江の島

画像1 『海辺へ行く道 そしてまた、夏』三好 銀。タイトルと扉の絵に郷愁を誘われて購入したが、中身はまるで想像と違った。安易な解釈を寄せ付けぬ奇妙でヘンな世界。人物の顔はどれものっぺりしていて表情が見えない。現実と非現実が交錯したような覚束なさ、寄る辺のなさ。しかし世界とはもともとそんな場所だった。わたしたちはどこから来てどこへ行くのか不明確なままこの世を生きている。ゆえに翻って湧き起こる郷愁に近いエモーション。鑑賞者を揺さぶるのがアートの効力ならば本書はそれだ。うららかな日に、江の島を遠足する中学生に混じって。

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