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新しい結婚指輪

9/1


夫が家出から帰ってきた。人口密度と部屋の温度があがる。

彼はセントレアから北海道に行き、その日のうちに名古屋行きのフェリーに乗った。北海道へ何かをしに行くのではない。フェリーに乗るために北海道に行った。
せっかく北海道に行くのに、いくらやらウニやらとうもろこしも食べないで、フェリーのバイキングの方が楽しみだという。変態だと思った。でも夫の気が済むのなら何でも良いとも思った。

楽しかったかと聞くと「楽しくはなかった」と言われた。「地面が揺れてる」とも言っていた。変な人と結婚したなあ。

9/2


電車に乗る。
向かいの座席の女の人が柚木麻子さんの「ナイルパーチの女子会」を読んでいる。空なのか海なのか、水色を背景に女二人が手を取り合っている。

柚木さんの作品はタイトルや表紙から受け取れるポップでふんわり、しなやか、な印象とは全く違う。
登場人物たちは泥臭くて必死に自分の幸せを追いかけていく。恥ずかしい思いや取り返しのつかない失敗、わかっているけど直せない欠点を抱えて生活していく。辛いことがあった、分かるよ、つらいね、だけで終わらせない。もがいて苦しんで、少しずつでも良くなろうとしている。
上手に生きられなくてもいいのかな、と思わせてくれる。

前髪を切りたくなった。
夫のハサミをかりた。夫は「美容院で切れば?」と言う。何もわかってない。前髪を切りたいと思ったらそれは今切るしかないのだ。前髪が切れないなら手首を切るしか無い。手首を切れなくなった私が切れるものは前髪しかないのだ。
慎重に切った。5ミリほど。今週一番真剣な眼差しをしていたと思う。
人から見たら全く違いがわからないだろう。しかし大満足の仕上がりとなった。
今夜はよく眠れそうだ。

9/3


やらなければいけないことがたくさんある。
それなのに知り合いの子供(6歳)とオンラインオセロをしていた。2時間やっていた。

初戦の様子。私は白。


初戦で負けて悔しかった。
二戦目はムキになってやった。薬指で打っていたが、人差し指に変えて打った。実力を発揮出来て無事に勝つことができた。

二戦目の様子。私は白。


これ以降の勝敗はぼちぼちといったところで、お互い同じくらいの腕加減なのだと思う。勝負は毎回白熱した。

新しい結婚指輪が欲しくなる。
我が家にはいわゆる結婚指輪がない。
結婚式の時に交わした指輪は、私がその当時気に入ってつけていた指輪だ。夫はステンレスの指輪をずっと付けている。内側には電話番号が彫ってある。落としても帰ってくるように。
一つのものを大切にするのも美しいが、この指輪好きだな、と思って買ったものを、その時の結婚指輪にすれば良いと思っている。
今までの指輪は細くて華奢なので、今度はごつい指輪が欲しいな。

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