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鬼殺し奇譚

”お前をなまはげの国に、連れて行く”

いつものように友人と話しながら、遊びながら帰宅した。12月の寒さが心地よい。
帰宅すると、居間で、母親が泣いていた。
母が泣くのを見るのは、初めてだ。

「これ、読みなさい」
母から渡されたのは、ざらついた紙の、手紙だった。

”お前を必ず、男鹿に連れて行く”

最後の一行だけが、目に焼き付く。
手紙の文面には、家族でしかわからない自分の悪癖が書き連ねてある。
それ以上に、この手紙に押されている、真っ赤な掌が、考えを止めさせる。

「わかる、これなにかあんたわかる」
母の悲痛な声、目には涙が溜まっている。

手紙をひったくり、部屋に行く。
手紙を読み返す。連れて行かれる日は、31日。

この日までに、この日までに、僕は、なまはげを殺す準備をしなければいけない。
母を、妹を守る為、必ずなまはげを、神を、殺す。

【続く】

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