![YMS14B花嫁](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/8245187/rectangle_large_type_2_015e817396c8c19a7977d0d88331b31d.jpg?width=1200)
YMS14B花嫁
酒が飲めない、飲み会も苦手だ。
しかし今一人で、居酒屋のカウンターで焼き鳥と地酒を楽しんでいる。
金曜の終わらない残業を切り上げ、帰り道を歩く。
途中、新装開店の居酒屋が目に入った。
上りには沖縄料理、ハワイ、蕎麦。
明らかに迷子の店だ。
似たものは惹かれ合う。迷子らしくその店に入って、もう1時間経つ。
物言わぬ店主と静かな環境は、心地よかった。
文庫本を読みながら三本目のタバコに火をつけた時、引き戸は勢いよく開けられた。
返り血を浴びた、ウエディングドレス姿の女性が一人。
屹然とした足取り。
俺の隣の席に座る。
「よう兄弟!生おごってくれよ」
初対面で、血染めの女に奢る酒など無い。
目で訴えるが、店主は黙ってビールを出す。
一気に飲み終えると、女は顔を近づけて言った。
「お前さ、明日休み?あたしとハネムーン行くぞ」
【続く】
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