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昔はもらえた八掛の見本帳が…

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本日のお題:昔はもらえた八掛の見本帳が…
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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冬本番ですね。店内のBGMを「季節の音楽」というものにしたら朝から晩までクリスマスソングになってしまいワクワクするかと思いきや、同じような曲ばっかりずっとかかっているのでだんだんと聞き飽きて「またこの曲がかかってるよ…」なんて思うようになってしまいました。あと20日ほど、頑張って聴き続けます笑

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■昔はもらえた八掛の見本帳が…

今週はどうしても書けなかったので2年ほど前の再放送です。うーん最近ネタが枯渇してます。来週は頑張って新しく描くのでご容赦くださいませ。

【八掛】(はっかけ)着物の裾周りについている色のついた裏生地。女性物の場合、上半身の裏地は白い胴裏、裾まわりは八掛と呼ばれる色のついた生地をつけます。重ね着をした当時の名残とも言われ、八掛と表地の色の組み合わせも着物の楽しみ方の一つです。このように裏地を和えて見せるというのは世界の民族衣装でもかなり珍しいことらしいですね。

ところでユーザーの方はあまり目にする機会というのはないと思いますが、八掛の見本帳というのがあります。

どんなのかと申しますと、まあそのまんまの八掛の色見本帳なんですが、印刷物ではなく現物が貼り付けられているのが特徴です。印刷物にすると生地の風合いや微妙な色加減が変わってしまうので、実際に同じ生地で染めたものを小窓のついた二重の厚紙に貼り付けられているのです。

こんな感じのもの→八掛の見本帳

で、この八掛の見本帳なんですが昔は各商社が競い合うように無料で取引先の呉服店に配布したものでした。八掛は染め方の種類でぼかしと無地、生地の種類は精華と紬などがあり、それらを組み合わせるとかなりの種類になるため全て在庫に置くとものすごい在庫量になってしまいます。そのため小売店はよく出る色や生地を仕入れる以外は見本帳に表地を置いてイメージをお客様に見ていただき、商社に注文して取り寄せるのが多かったと思います。

当店のような小さな店でも昔は2-3日に1反程度は反物が売れていたので毎月10枚ぐらいは注文していたかもしれません。また、当店は昔は展示会等も主催しておりましたし、その時に小紋の特価企画などがあると1回の展示会で40枚、50枚の八掛が必要になります。たかが八掛と言うなかれ。1枚数千円が40枚、50枚ともなると商社は20万-30万ぐらいの売り上げになったものです。

当店のような小さい店でもそのぐらいの売り上げになるんですから、もっと大きな店だとこれどころじゃなかったんですね。

だいたい展示会は、小売店の持っている在庫品だけでは商品が足らないので取引の商社に商品を出品してもらいます。バブルの最盛期では大きな店だとその商社の商品が何百反も売れることもあったでしょうから、商社は何百万円、何千万円もの売上があったことと思います(うちはそんなに儲かってないですよ笑)。

小売店の展示会に商品を出品し、そこにまだプラスして後日に八掛の注文が入ってくるので商社としてはオマケのような売り上げで、なおかつ意外と金額も張るものなので「美味しかった」んです。先ほど書いたようなバブル最盛期の何百反もの反物が売れてたら自動的に何百枚の八掛の注文も入るのでオマケと言いながらかなりの金額になります。

当然「美味しい」商材なので各商社はこぞって小売店に自分の会社の八掛の見本帳を置いてもらおうとして、小売店はおつきあいのある商社からだいたい八掛の見本帳を1冊ずつもらってストックしていました。先ほど書きましたように、どこの商社も無料で持ってきましたので、あの当時八掛の見本帳でお金を取るなんていったら「は?何言ってんの?それならあんたのところの八掛なんか使わないよ」と言われるだけだったと容易に想像できます。

しかし時代は平成になり、令和になり、着物の市場が急速に縮小していきました。

今から思えば、八掛の見本帳ってものすごくコストのかかるものだったんですよ。百枚以上染めた八掛を縦3cm×横5cmぐらいに切り取って、窓の空いた厚紙のなかにひとつひとつ並べて装丁して手間のかかるものですし、呉服店しか必要のないものなので作る量も限られているものですのでコストも下がりません。全くの当てずっぽうですが1冊の制作費は最低でも2-3万は行くんじゃないかな、と思います。

で、先日八掛が必要になったので見本帳から選んで商社に注文しようとすると「あー、その見本帳ちょっと古いんですよ。同じような色が新しい見本帳にあるかどうか見てみますね」といってきました。見本帳が新しくなるのはそれほど珍しくはないので同じような色があるなら、と思いながらそのまま注文。

次回また同じような注文があった時にこちらの見本帳の番号と商社が持っている見本帳の番号に相違があると思わぬ間違いが起こらないとも限りませんので、新しい見本帳も一緒に送ってもらおうとしたところ「有料になります」とのこと。うーん、そうか、最近商社も昔ほど余力がなくなってきたし、うちも最近はリサイクル屋さんになってるから八掛の注文もそれほどないので仕方ないよね、と思いましたがお値段を聞いてびっくり、ちょっと目ん玉飛び出ました(笑)。

まあ確かに当店みたいな形態の店だと見本帳をタダで渡すだけでもう赤字になのはわかります。商社側としても見本帳に利益を載せていないばかりか、多分最低限の実費請求であろうこともわかります。なので文句は言いませんがやっぱり高い(笑)。商社の担当者も「ちょっと高すぎるんで、以前の見本帳使いましょうよ」といってくれてとりあえず今回は見送りとなりました。

バブルの頃には1兆円産業と言われていた呉服業界の現在の市場は2600億とか2800億程度と言われておりますが、何も販促活動をせず自然にお客様が購入した場合の市場は600億程度になるという試算を見たことがあります。この試算がどういった方法で計測されたものか定かではありませんのでそれほど信憑性があるとは思いませんが、もし本当に600億程度の市場になった場合は市場として成立せずほぼ全てのアイテムが別染め、別仕立てになるということが書かれておりました。

そうなると絶滅が危惧されるアイテムはいろいろありますが、八掛などは見本帳もなくなり全てオーダーメイドの別染めになるのではないか、という話も聞きました。今回のような事例を体験すると、なんだかその試算もあながち間違った考察ではなかったのでは、なんて思ってますがどうなんでしょうね。

来週は八掛の選び方について色々書いてみたいと思います。

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