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絹の紳士物着物の裏地は木綿か絹かポリエステルか

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本日のお題:絹の紳士物着物の裏地は木綿か絹かポリエステルか
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■絹の紳士物着物の裏地は木綿か絹かポリエステルか

今週のお題は「絹の紳士物着物の裏地は木綿か絹かポリエステルか」です。着物で袷仕立ての場合、表地と裏地の素材を合わせるのがセオリーですが、紳士物に関しては少し違うんですよ。今日はそんなお話をさせていただきます。

リサイクル着物を扱っておりますと、たまに表地が絹なのに裏地は木綿がついているようなものもありますが、これは着物が生活に密着していたため、和服というものがそれほど特別なものではなかったため「まあとりあえずこんな生地があるからこれつけときゃいいや」ということもあったのでしょう。

先ほど書いたように袷着物を仕立てる場合には特別な場合を除き素材を合わせるのがセオリーです。絹には絹の胴裏、ポリエステルにはポリエステルの胴裏です。素材の違うものを使用してしまうと静電気の原因となったり、ポリエステルの着物に絹の胴裏をつけてしまうと洗えなくなったり、長年着ている間に絹の表地が少し縮んでポリエステルの胴裏が全く縮まず袋になってしまったり、素材を変えることによってトラブルが起こる可能性が高くなってしまいます。

というわけで通常は表地と裏地は素材を合わせるのですが、一つだけ素材を変えて仕立てる着物があるのです。それが紳士物の長着です。

婦人物と同じく紳士物も紋付着物や紬着物など、様々な役割の着物がありますがほとんどの場合、金巾という生地をつけます。ちょっと読みにくい漢字ですが「かねきん」と読みまして、なんだか絹よりも良さそうな生地のように見えるかもしれませんが実は木綿なんですよ。紳士物の裏地は、胴裏と八掛で分かれている婦人物と違って1枚の生地を使う通し裏で仕立てますが、この裏地全て木綿の金巾が使われるのです。

金巾は木綿といってもぺらぺらの安物の生地ではないですよ。ちゃんとした金巾でしたらその辺の下手な正絹よりもよほど厚みがあってぽってり、しっとりとした生地で、あまり着物のことをご存じない方が触ると木綿とは気づかないかもしれません。高級木綿着物として知られている東郷織物さんの綿薩摩のようなしっとりとした高級感のある風合いです。もちろん価格もそれなりでして、絹と同じかそれ以上の価格になることも多いです。

先ほどから何度も書いておりますように、表地と裏地の生地は合わせるのがセオリーですがなぜ紳士物だけ表は絹であっても裏地は木綿を使うのでしょうか。

これはもういきなり答えを書いてしまいますが、一番まことしやかに言われているのは男性は身のこなしが荒っぽくて生地が傷みやすいため、絹をつけているとすぐに裾が擦り切れるなどトラブルになりやすいので丈夫な木綿をつけるのが慣例になったようです。

裾が擦り切れるのを防ぐのであれば一番丈夫な生地はポリエステルだと思いますが、昔のポリエステルはまだまだ品質が悪く、風合いも悪かったため敬遠されたのか、それともポリエステル自体がなかった時代に成立した風習なのか、とにかくポリエステルが使われることはありませんでした。

そして現代でも「男物には金巾をつける」という慣例はそのまま残っており、男物の着物には多くの場合金巾がつけられるようですが、ちょっと私はこの慣例に違和感を感じるんですよ。

当初は男性は動きが荒っぽく、生地が擦り切れたり破れたりということが多いので丈夫な金巾をつけるということだったのですが、洋服主体の現代では一部の方を除き擦り切れるほど頻繁に着物を着る男性はほとんどおられません。また、頻繁に着物を着る一部の男性も着物の扱いに慣れていると思われるので、破れてしまうような荒っぽい動きをする方はごく少数ではないでしょうか。

こうなってくると「男性は動きが荒っぽく、破れたり擦り切れたりということが多いので丈夫な生地である金巾をつける」ということ自体、あまり意味をなさなくなってきます。そろそろ元々の「絹の着物には絹の裏地をつける」というセオリー通りに戻してもいいのではないか、と思うのですが、呉服市場は「男性ものの裏地=金巾」になってしまっており、色物の通し裏の胴裏(注)はちょっと手に入りにくいんですよね…。

注:先ほども書いたように、男性ものの裏地は女性もののように八掛と胴裏と分かれておらず、一枚ものの裏地となります。また、胴裏自体紺色や焦げ茶などに染められた色物を使うことが多く、金巾もそういった色に染められております。

紳士物自体、昔に比べると生産量が極端に減っているだろうし、今さら「紳士物の裏地は金巾じゃなくて絹にしよう」といったところで本当に小さな市場のさらに小さなつぶやきではありますが、元々の「擦り切れないように丈夫な金巾を使う」というのを忘れて擦り切れるほど着るわけでもないのに思考停止状態で金巾を選ぶというのもなんとなく引っかかるんですよ。

金巾も生地としては優れた風合いで決して悪いものではないし、素材が違ってもそれほどトラブルになるわけでもありませんのでまあいいかといえばいいんですけど、こんなことでちまちま引っかかるのって人間が小さいですか、そうですか(汗)。

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