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裄や身丈が短い着物、短い反物の利用方法その2

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本日のお題:裄や身丈が短い着物、短い反物の利用方法その2
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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先週のメルマガで思いっきり書き間違えていた部分があります。裄を出してヤケていた場合の対処のところですが

「具体的には濃い部分を薄くすることはできないのでくっきりとした色の変化がわからないように少しずつぼかしながら色の薄い方に合わせていくという作業になります。」

なんて書いておりましたが正しくは

「具体的には濃い部分を薄くすることはできないのでくっきりとした色の変化がわからないように少しずつぼかしながら薄い部分に少しずつ色を乗せて濃い部分に合わせていくという作業になります。

です。お盆明けすぐに配信できるようにお盆前に慌てて書いていた…なんてのは言い訳になりませんね。すいません(汗)。バックナンバーのnoteの方は修正して公開しております。

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今回も多数のご応募誠にありがとうございました。今回厳正な抽選の結果、見事当選されましたのは

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■裄や身丈が短い着物、短い反物の利用方法その2

先週はすでに仕立て上がっているリサイクル品で裄や身丈が短い場合の対処方法を書きましたが今週は反物の状態でどうしても短くて身丈が出ない、幅が狭くて裄が出ない場合にどうしたらいいかをお話しいたします。先週分はnoteに掲載しておりますのでまだお読みで無い方は「note 呉服のきくやてんちょ」で検索していただければヒットいたします(楽天などネットショッピングモールは外部リンクが貼れないため検索してくださいますようお願いいたします)。

前回も書きましたが、戦後の日本の栄養状態が良くなって体格が良くなってきたことに加えて、衿をきっちりと合わせて着用するなど着物の着方自体も変化し、従来の反物の長さや幅では足りないことも多くなっております。一部のメーカーは幅の広い反物、長い反物を作っているのですがそれでもまだまだ従来の幅、長さのものが多いのが現状です。また、昔の反物は面白い柄のものが多いのですが、昔のものになればなるほど特に短く幅の狭いものがほとんどで背の高い方、腕の長い方は諦めざるを得ないのが現状ですよね。

…なーんていってますが、それには色々解決方法があるので今週は反物状態から大きめサイズを仕立てる方法を配信しますので是非参考にしてください。

・反物の幅が狭い場合

反物は一般的には1尺=約38cmとされておりますが、実際のところ、ちょっと古い反物だと36cm程度のものが多いです。この幅を使って裄を作るのですが、着物の裄は下のような計算式で算出することができます。

(反物幅-2cm)×2

裄は背縫いから肩口まで、肩口から袖口まで反物をつなげて作りますが、その際2cm程度の縫い代が必要です。つまり反物幅36cmの反物ですと

(36cm-2cm)×2=68cm

和裁士さんによって多少の違いはあるかもしれませんが、だいたいは2cm縫い代を取っておけば大丈夫だと思います。

68cmあれば普通に着ようとすれば十分なのですが、背が高く、なおかつ腕が長い方や衿を詰め気味に着る方、長めが好きな方ですと少し心もとないです。古い反物ですと35cm程度のものも珍しくありませんし(最大裄66cm程度になる)そういう場合は今回の方法を知っておけばお役に立つこともあるかもしれません。

ではどのようにするのかと申しますと、着物の生地の「どこか」から生地を取ってきて肩口のあたりに継ぐという方法をとります。袖丈が49cmとして前後で100cm以上の細長い生地が左右2つの袖の分だけ必要になりますがそんな生地がどこに隠れているか、和裁にある程度理解のある方でしたらもうお分かりですよね。そう、前幅の縫い代部分です。

前幅は一般的に22cm程度から広くても26cm程度でお仕立てする方が多いです。つまり幅36cmの反物ですと幅10cm程度の縫い代があるということになります。この縫い代部分を細く裁断して肩口の部分に継ぐとあと数センチ裄を伸ばすことができます。

ただしこの方法は細かい柄の小紋や紬にしか対応できないというのが難点です。あまり大きな柄ですと継いでいるのがはっきりとわかってしまいますので基本的にはあまり使わない方法です。継いだことがはっきりわかっても構わないというのであればもちろん対応可能ではありますが、あまり見栄えが良くないため呉服店や和裁士さんは二の足を踏むかもしれません。細かい柄の着物、縦縞の着物などですと私の経験上よほど目を近づけて注意してみないとわからない程度に綺麗に仕立ててもらえます。

訪問着などの絵羽柄ですと残念ながら対応不可能です。縫い代部分の共色の生地を取ることは、当然どの反物でも前幅に縫い代自体は存在するので可能といえば可能なんですが、胸から袖にかけての柄が切れてしまったりなどでパッとみて不自然ではない仕上がりは不可能ですのであくまでも紬と小紋でのみ対応可能な方法とお考えください。

・反物の長さが短い場合

次に反物の長さが短い場合の対応方法です。着物は3丈(約11.4m)あれば仕立てができるはずなのですが、最近は背の高い方が多くなり、またお端折りを多く取るようになったため、昔の反物、特にウール系などですと十分お端折りが取れないことも多くなっております。

よくお端折りの部分に生地を継いで長くすればいいんじゃない?と言われるのですが、先週書きましたようにその方の着方によってお端折り部分はズレてしまうので、仕立て時に正確にその方のお端折り部分に別生地を入れて着用時に見えないように仕立てるのはかなり難易度が高いです。

お端折りに生地を入れると仕立て上がった後も別生地が見えてしまいますが、今回紹介する方法ですと別生地は見えませんし、身丈も多く出すことができますので是非覚えてくださいね。オークションなどで落札したちょっと古めの反物で長さが足りずに仕立てを諦めていた方もこれを覚えていただければ短い反物を活用できるかもしれません。

まずはゴチャゴチャと説明するよりも図をご覧いただいた方がわかりやすいと思います。

丈の短い反物の裁ち方図解

通常は袖や身頃をとって、衽は縦に2つとって、もう片側の半分から掛衿と衿を取るのですが、長さが足りない場合は衽を二つ並べて取り、掛衿と衿も並べて取ります。衿部分は真ん中で裁断し、掛衿の下に継ぎます。継いだ部分は掛衿で隠れますのでどんな色柄の生地でも構いません。ただし、夏物の場合は透けて見えてしまいますので最低限同色の生地にしたほうがいいでしょう。

あくまでも掛衿の下の見えない部分ですので解かない限りはこういった特殊な裁ち方をしていることは誰もわかりません。短い反物を持っている方にはお勧めですので是非試してくださいね。ただし店によっては多少追加料金がかかる場合もあるかもしれません。

いかがでしたでしょうか。先ほど書いたように昔の反物は面白い柄のものがたくさんありますし、意外と安価に取引されておりますので、こういう方法を知っておけば多少短くても対応できると思います。せっかく気に入った反物があっても諦めるのは悔しいので、こういう方法をぜひ頭の片隅に置いといてくださいね。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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