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展示会に刑事がわんさか来たお話その1

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本日のお題:展示会に刑事がわんさか来たお話その1
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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今日から5月ですがもうすっかり初夏のような気温になってますね。これから夏に備えて少し浴衣を入れようかと思ったのですが、コロナで全国のお祭りがなくなって生産調整されたのか、かなり相場が上がってて仕入れられませんでした。

今まだ当店の在庫で浴衣は多少ありますけれど、これが無くなって次に仕入れる時には爆上がりしていると思いますので浴衣を着る予定があるのであればちょっと早いけれど今のうちに見ておていくださいね。うちだけじゃなくて他店も上がると思うので、去年の売れ残りがまだ店頭に並んでいる今がチャンスですよっ!

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■展示会に刑事がわんさか来たお話その1

今週のお題は「展示会に刑事がわんさか来たお話」です。題名は「展示会に刑事がわんさか来たお話」ではありますが、その物々しいタイトルや刑事がやってきたという内容というよりも当時の呉服店を取り巻く時代背景や商売のやり方に注目していただきたく思います。

今回書く話は私が呉服業界に入って数年目あたりのことでまだまだ元気いっぱいの20代だった頃ですので30年近く前になります。私が初めて働き始めた呉服店での出来事でかなり以前のことですのが、念のためにかなりフェイクを入れておりますので実話を基にしたフィクションを思ってお読みください。

当時、私は展示会主体の呉服店に勤務しておりました。別会場を借りる大きな展示会が月1回、店内の催事が月1回、だいたい毎月2回の催事がありまして当時の私の仕事はお客様を展示会に勧誘する外回りの営業でしたので毎日追い立てられるように営業活動をしておりました。

そんな中、どういうきっかけかは忘れましたけれどAさんとお知り合いになりました。確か一番最初に購入して頂いたのは留袖で、このメルマガを読んでくださっているような着物沼にどっぷりはまっているという感じではなく、ごく一般的な「結婚式などの節目の時には着物を着る」というタイプの方でした。よく「呉服屋は金額の上がるフォーマルを無理やり売ろうとしてお客様のニーズをわかっていない」なんていう意見を目にしますが、現実問題として90%以上の方が「節目や行事の時に着物を着る」というユーザーですので自然と店頭はフォーマルを中心に販売することになってしまいます。

このAさん、なんだか私のことをよく可愛がってくださりました。ただ、先ほど書いたように普段から着物を着て楽しむというタイプではなく、先ほど書いた「節目や行事の時に着物を着る」というごく一般的な着物ユーザーでしたので初めに購入してくださった留袖以外で着物を購入することはあまりなかったように思います。

話は変わりますが、当時呉服業界で一番有名だった呉服業界専門の某経営コンサルタントは「十貨店構想」というのを提唱しておりました。バブルが弾け、生活様式の変化から節目や行事ごとが略礼になり、フォーマルな場が少なくなり、同時にそういった場で着物を着るということも少なくなるであろうということが十分予想された時代、呉服店はどういった手法で生き残るかを模索しており、その一つの答えが「十貨店構想」でした。

簡単に言いますと、百貨店は百種類どころか数千種類もの様々な商品を販売しておりある程度高い所得を得ている客層を掴んで販売、利益を得ております。呉服業界の小さな店の場合は百貨店のように多くの品物を置くのは難しいけれど呉服以外で十種類ほど色んなジャンルの商品を置いて販売していこう、という構想でした。具体的には着物、宝石、バッグ、洋服、健康器具(マッサージ機)など、高級品を扱うのに慣れている呉服店だからこそ高単価の多様な商品を扱っていこうとしていたのです。

呉服の売り上げが次第に落ちていく中でこの提案はそこそこウケまして、そのコンサルティング会社はかなり大々的に経営戦略セミナーのようなものを開き、おそらく呉服業界では一斉を風靡したのではないか、と思います。おそらく当時は業界人なら知らない人はいない有名コンサルタント会社だったはずです。余談ではありますが、このコンサルタント会社はバブルが弾けたあたりに倒産しました。

私の勤務していた店も御多分に洩れず十貨店構想…というのを真剣にやっていたわけではありませんが、呉服需要の低下に伴って取引先の京都の卸問屋もそういった呉服以外のもの(非呉服・ひごふくと呼ばれます)を扱っておりますので新しい商品を扱うにあたって新しい取引先を開拓する必要もないので手軽に呉服以外の高級品も扱うことができました。

先ほど出てきたAさんはごく一般的な「結婚式などの節目の時には着物を着る」というタイプの方でした」と書きました。この層が呉服屋の顧客としては一番多く、まことに失礼な言い方かもしれませんがこのメルマガを読んでくださっているような毎日でも普段着の着物を着るというような方はかなーり少ないのです。ですがAさんのような普段着物を着ない方に着物を勧めてもなかなか買わない。でもお客様とのパイプはしっかりと出来上がっている、そういうお客様を掴んでいるんだったら着物以外のものを販売すりゃいいやん、というわけで宝石や健康器具などを展示会の片隅に置く店が多かったのです。

まあそんなわけでAさんも3回に1回ぐらい展示会に来て着物以外のもの、例えば洋服や宝石などを購入していただいていたのですが、その後お友達を紹介してくださることになりました。この方がBさん。今回の話の主役(?)です。

このBさんはAさんとほぼ同じ歳ぐらい、おそらく60前後だったように思います。そのBさんも私のことを可愛がってくださりました。着物には全く興味がなかったようで着物は購入したことはなかったのですが、着物以外の宝石などを何度か購入してくださいました。ただ、残念なことにローンが通らなかったのです。まあでもローンが通らないなんてことはそれほど珍しいことではありませんので特に気にしていませんでした。

ローンが通らない場合はどうするか。呉服屋というのはかなり古くからある商売で、ローン(割賦販売)という便利なシステムがない時代から存在しています。その当時はどうしていたかというと「掛売り」で販売するんです。落語などでもよく大晦日に集金に行く話がありますよね。簡単に言えば30万のものを購入してもらったら毎月3万ずつ店に持ってきてもらうというやりかたです。信用のみで行われ、何の保証もないので怖い方法なんですが30年ほど前というと意外と踏み倒すような人もなく、もちろん掛売りをするお客様は選んでましたが私の知っている中では夜逃げされたという経験はありませんでした。

ある時Bさんが展示会に来られて30万円ほどのハンドバッグを購入しました。いつものように掛売りで毎月末に5万ずつ持ってきてもらったらいいですよ、といってバッグをお渡ししました。ところがその月末、Bさんは店に来られませんでした。

え?Bさんどうしたの?と思ってすぐに家に行ってみましたがいる様子はありません(電気メーターが止まってたかどうかは忘れました)。旅行?いや、まさか払わずに引っ越したとか?いやいや、そんなんやめてや、と思いながら何度も外から声をかけさせてもらったけれど一向に出てこない、朝に行っても夜に行っても出てこない、誰もいない。

あちゃー、これは逃げたかなぁ、でもお友達の紹介なのに逃げたりするかなぁ、今まで約束した期日にはちゃんと払ってくださってたし、そんな無責任なことをする人じゃない。Bさんに限ってそんなはずはない。あまりやりたくないけれどBさんを紹介してくださったAさんなら何か知っているかもしれない、と思ってAさんのところに行ってみたところ、衝撃的な事実が。

「Bさん、逮捕されてしもてん」

え?逮捕?
上で書いたようにフィクションですよ、フィクション。とにかく逮捕されてしまったんですよ。麻薬取締法の販売目的所持で。

おーまいが。そんな人には見えなかったんだけど…。Aさんもびっくりしてました。というか、売掛になってる30万円、1回も払ってもらえないままどうすんねん。この方法は当時勤めていた店も認めていたことだから、責任を取って私個人で弁済しなくてはならないということではないのですが、やはり自分が販売した金額が全く回収できなくなってしまったというのは避けたい。

ドキドキしながら来週に続く

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