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展示会のお土産ご予約

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本日のお題:展示会のお土産ご予約
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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昨日は毎月28日の仕入れの日で、大雨の中行ってまいりました。当店は商店街のアーケードの中にあるんですが、仕入れ場所から車に運ぶのが少々厄介で濡れるのを防ぐのが大変でした。仕入れてきた商品はまた1ヶ月かけて商品登録していきますので楽しみにお待ちください!

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今月も多くのご応募ありがとうございました!今回見事当選されたのは

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と決定いたしました!商品は本日発送いたしますのでお手元に到着いたしますまでしばらくの間お待ちくださいませ。届きましたらX(旧Twitter)やFacebookなどSNSで是非おしらせくださいませ。

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■展示会のお土産ご予約

今週のお題はみんな大好き呉服屋の裏側シリーズ笑、「展示会のお土産ご予約」です。着物好きと言っても現代はネットの呉服店での購入やメルカリやヤフオクなど個人売買も盛んで新品の呉服店に足を踏み入れたことがない方も多いのではないでしょうか。

そうですよね、ネットで見ていると新品の呉服店ってこっちの欲しいものを出してくれずフォーマルものを無理やり着せつけて周りを囲まれて買え買えの大合唱と電卓をパチパチと叩くようなイメージがありますもんね。そういう私も出張で出かけた時にショッピングセンターで呉服店を見かけると入りたい衝動にかられるのですが、やっぱり売りつけられたらどうしよう、なんて思って外からなんとなく眺めるだけになってしまいます笑。

ネットでは嫌な体験談を目にすることが多いのですが、実際にはそういう店は多くはない…と言い切れないのが残念なところなんですよね…。かなり以前にこのメルマガでも書いたのですが、友人が和装小物を購入するのに付いていったのですが、ちょうどキャンペーン中だったようで(年中キャンペーンという疑惑も笑)小物を買うだけなのに「オリジナルの色無地を染めたので顔映りのテスト&モデルになって欲しい」と言われてなんだかんだで20-30分ぐらい時間を取られました。

まあ別に急いでいなかったし、私も呉服屋ですので(身バレはしていない)いつでも振り切って店を出ることはできます。「どうやって売りつけようとしてくるんだろう」と少しワクワクしながら見ていたのもあります。ただ、店側も商売なので商品をお勧めするのはごく当然の話なのもわかりますが、小物買いに行ったぐらいでいちいちそんなことお願いされたら断るのも面倒くさいし、色々気にしいの人(私もです)は「うまい断り文句」を考えなくちゃならないし、結構ストレスなんですよね…。

で、話は戻りますが私が体験したのは店内での年がら年中やってる疑惑のキャンペーンでしたが、本日は展示会のお土産のお話です。

展示会というと、普段の店頭の販売とは違い、大体の場合は取引している問屋などからたくさんの商品を借りることが多いです。普段と違った商品を見ることができるから「展示会」なのであって、普段店頭にある商品だけなら別にわざわざ「展示会」なんてする必要ありません。問屋から借りるということは、問屋側もその期間中にある程度の売り上げを見込まないと、汚れるリスクなどもあるのにわざわざ商品を貸すなんてことはしません。逆に言えば、店側はその展示会の期間中にある程度の売上を作って実績を積まないと商品を貸してもらえなくなるので店側もその期間中に売上を作るために必死です。

もちろん長いおつきあいをしていて1回売上が悪かったからと言って商品を貸してもらえなくなるなんてことはありません。でもあらかじめ決めておいた予算に遠く及ばないことが何度も続き、普段の取引でもあまり仕入れない状態が続くと、問屋の担当者も儲からない店を相手にするのではなく他の店を優先しますので展示会で商品の出品を要請しても他に展示会が入っていてその期間は御社に回せる商品がない、とやんわり断られることになるでしょう。やはりお互い利益を得るための商売ですのでこの辺りはシビアです。

いろんな店の考え方というかやり方があると思いますが、私が勤務していた店は店頭での販売ノルマ等はなかったのですが、完全に展示会中心の店だったため展示会にお客様を呼ぶことができないと社内での立場が次第に微妙になりますので営業としては必死でした。

展示会にお客様を呼ぶ際、一般的に使われるのが今回のお題の「お土産のご予約」です。

展示会の企画が決まって1ヶ月ぐらい前に案内状が出来上がってくると、各営業マンはその案内状を持ってお得意さんの家を訪問して勧誘しますが、ただお客様に「○月○日から○日まで展示会があるので来てください」と言ったところで勧誘期間の最初の方に勧誘したお客様は展示会の日まで1ヶ月ほど期間が空きますので当然忘れてしまいますよね。

このメルマガを読んでくださっているような着物ファンの方々でしたらもしかしたら楽しみにしてくださるかもしれませんが、呉服店の主なお客様は「何かの時に着物を着たらいいなぁ」という程度のどちらかというとライトなユーザーなので「今度はどんな着物を見せてもらえるのかな、わくわく」なんてのはどちらかというと少数派でしょう。いや、よほどの着物ファンでも毎月のように展示会が行われていたらたぶんお腹いっぱいになると思います。

というわけで、はっきり言ってしまうとお客様はワクワクするほどの興味はないので、単に口約束だけですとまず間違いなくお客様は忘れてしまうのである方法を使うのです。それが「お土産のご予約」です。各営業マンは、当日ご来場いただいたお客様にお渡しするお土産の事前予約を取るのが主な仕事となり、これが営業成績に直結します。

「お土産」というと一般的な認識では無料と思われるかもしれませんが、少しお金をいただくことが多いのです。めちゃくちゃ高いものをお渡しすれば来場率は上がるしお客様にも喜んでいただけるのですが、展示会でかけられる経費は限られているのでお客様に出すお土産にかけられる費用も限られています。かといって1000円や2000円程度で買えるようなものだとお客様は大体のものは持っておられるので、それならお客様に少し費用を足してもらって、少しいいもの、お客様が本当に欲しいものをお渡ししよう、という趣旨で1000円程度の費用をご負担いただくのです。

…というような説明を受けたことがある方はおられますでしょうか。まあ確かにそれもお客様から少し費用を頂戴する理由の一つではあるんですけれど、一番重要なところはいくらでもいいからとにかくお客様に財布を開いてもらってお金を出してもらう、というところなのです。

いくら「展示会来てください」「はいわかりました」なんて口約束をしていても1ヶ月前に営業マンから聞いた興味のない話なんてほぼみなさん忘れていますが、自分で財布を開いて1000円でも出してお土産の予約をしたらどうでしょうか。おそらく多くの方が覚えてると思うんですよ。その「お客様に覚えていただく」ということだけのためにお金をお預かりすることが多いのです。私が勤務していた店は3000円程度で仕入れられる便利グッズのようなものをお土産として使っておりましたが、そこに経費をかける店ですと自分ではなかなか買えないような高級牛肉や年末になるとおせち料理とか、そんなのもあったと聞いています。これはその展示会で見込める客単価や買い上げ率によって様々でしょう。

牛肉など食べ物は好評でした。食べ物は絶対コケない鉄板のお土産なんですよ。店側としては賞味期限がある食べ物はリスクもあるのですが、その一方で「展示会当日にどのくらいお土産を用意しておいたらいいか確定させたいのでご来場の予定日と時間を教えて欲しい」なんて言えるんですよ。そうすると、その日時に合わせて販売員を配置することができますし、お客様が重ならないように調整もできます。もしお約束の時間にお客様が来られなかった時には展示会場から「食べ物だから賞味期限もあるし、来られなかったら捨てなくちゃならないので必ず来てください」なんて電話をかけてさらに勧誘することもできます。これがお客様に足を運んでいただく殺し文句として結構効くんです。

この1000円をお預かりするという企画はどの店が始めたものかわかりません。私が呉服業界に入った30年前にはもうすでにそういったやり方が当たり前のように行われておりました。そして展示会形式の店がどんどん破綻して、やはり店売りをしっかりやっていこうという風潮が強いこの現代でも展示会をやっているところはこのお土産のご予約をいただくために営業マンは走り回っていると聞きます。

こうやって文章にすると商魂たくましいように見えてしまうのですが、呉服店も営利企業である以上こういったやり方も仕方がないんだろうな、と思います。私個人としては好きじゃないですし、呉服屋をやっていても全く楽しくなかったし、プレッシャーに押しつぶされそうでした。

おそらくこのメルマガを読んでおられる方も多くの方がこういったやり方は好きではないとおっしゃると思います。でも多くの人が関わり、その展示会の売上を期待し、その売上から給料が出て、会社としても経費が数百万単位でかかり、一ヶ月ほどの準備期間を経て(注)展示会を開催する以上、失敗しましたでは済まされないのでお客様に足を運んでいただけるように、万に一つも失敗しないように、二重三重に仕掛けを用意して展示会に臨みます。

注:つまり1ヶ月のほとんどの営業コストを展示会の数日の売り上げのために突っ込むことに他ならないのです。

「そんな商魂たくましい店とはあまり付き合いたくない」と思う気持ちもよくわかります。そう思う方は展示会のお土産の予約をとる店には近寄らない方がいいと思います。でも一方で月に1回の展示会でもてなしてもらうのを楽しみにしていて、展示会に来られたら半日ぐらい着物を見たり馴染みの営業マンとうだうだ話したり、そして3回に1回ぐらい着物を買って毎月2件3件のローンを払っている方がおられるのも事実でして…。そういうお客様に呉服業界は支えられてるといっても過言ではないかもしれません。

その後、生活様式の変化に伴い、二重三重の仕掛けを作っても次第に予想してた売上を下回ることが多くなって、大手チェーン店が破綻したりということが相次ぎましたが、それはまた次の機会に…。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
https://www.kikuya.shop/

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