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目隠しで紬の絣の細かさを当てるその2

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本日のお題:目隠しで紬の絣の細かさを当てるその2
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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8月15日に大阪に上陸した台風でベランダに置いてあった倉庫が吹っ飛んで壊れたという話はここでしましたっけ。紐で括っていたんですけれど、その紐が切れてズリズリとベランダを移動して隣の家とのパーティションにぶつかって壊れました。

3万円ちょっとで購入したので写真撮って書類揃えて保険申請してしばらく経って「全額30680円、申請通り認められました!」という返事をいただきまして「おっしゃー!保険会社ありがとう!3万円ありがとう!」と思ったら「免責30000円だから680円振り込みます」と連絡が来ました。うーむ、やよい軒にチキン南蛮定食でも食べに行くか…。

9月プレゼントご応募受付中です!今月は店長の石垣島研修旅行で購入してきたお土産、八重山ミンサーの生地で作ったポーチです。「ミン=(木)綿」「サー=細い」で沖縄の木綿の細帯のことなんです。、店長の個人的なポリシー「持つものから地味になってどうすんねん」で赤くてちょっと派手めなものを選びました。ぜひご応募ください。

八重山ミンサーポーチご応募ページ

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■目隠しで紬の絣の細かさを当てるその2

先週に続き、今週のお題は「目隠しで紬の絣の細かさを当てるその2」です。

私が若い頃勤務していた店は毎月のように展示会を開催しておりました。営業マンは展示会にお客様を勧誘することが主な仕事でしたので、意外と思われるかもしれませんが着物に触れる機会は意外と少ないのです。営業マンは展示会の1ヶ月近く前から展示会の勧誘に走り回り、お客様に企画の説明、どんな商品が出品されるのかを説明し、お客様から「じゃあ展示会に行きますよ」という約束を取り付けるのが主な仕事でした。

そこそこ大きな呉服店ですと、営業担当、販売担当、加工担当、仕入れ担当など役割が決められておりますので自分の担当している分野のことしかわからなくなってしまうのは当たり前ですよね。営業担当はお客様を展示会に呼ぶ仕事に特化し、販売担当はコーディネートや着物の格など実際に着用するにあたって気をつけるべきこと、そしてローンの申込書の書き方(笑)が上手くなり、加工担当は寸法や染み抜きについて詳しくなります。

しかし当時の私はそれじゃダメだ、と思ってたんですよ。いずれ家業の呉服店を継がなくちゃならない身ですから全てのことを満遍なく知っておかなくてはならないと思っておりました。特に着物の加工や製造工程、どんな加工に手間がかかるかなど、様々なことを先輩に教えてもらえる若い間に把握する必要がありました。しかし普段はお客様を展示会に勧誘しなければなりませんし、展示会が売れると展示会の回数が増え、そうなると店売りがどんどん少なくなり(注)、店売りが少なくなると店頭の在庫商品も少なくなり、また実際の商品を触っての勉強する機会も失われていきます。

注:展示会は卸問屋の商品の応援(展示会期間中だけ貸してくれる)がありますので普段の店売りとは比べ物にならないほどの商品量が出品されます。そしてお客様は当然、より多くの中から選べる方に見に行くことになり、店売りは次第に少なくなっていきます。店側も「店に買いに来られないならもう仕入れなくていいか」と店の在庫はどんどん減っていき、それをカバーするかのように展示会が増えていきます。このようにせっかく店があるのに経費をかけて開催する展示会が主力の販売ステージとなってしまう店が多々あり、私がいた店も御多分に洩れずそのような悪循環に陥ってました。

で、若い私はこう思ったんですよ。「普段展示会の勧誘ばかりで着物の勉強ができないから、せめて展示会期間中だけでもいろんな反物を見て勉強しよう。ちょうど作家さんや卸問屋さんもたくさん来られてるからわからないことは聞けば教えてくれる」

当時の展示会では必ず作家さんが1人来られて実演するのが定番でした。作家さんは自分の作品を出品し、その加工方法を実演しながら作品を販売していく、よくあるアレです。こういう作家さんが必ず来られてましたのでまだ何もわかっていないような若造の私が色々質問すると丁寧に答えてくれるんですよ。作家さんって作品の加工などを聞かれるのはすごく嬉しいことのようでよほど忙しくない限りほとんどの方が饒舌に話してくれたのを覚えています。

で、今週のお題「目隠しで紬の絣の細かさを当てるその2」です。先週は業界の大先輩が呉服業界に入社した丁稚時代、先輩に湯通し済みの結城紬を手渡されて「これをずっと触っていなさい」といわれて通勤時にも休みの日にもずっと触っていたら「目をつぶって触るだけで結城の亀甲数がわかるようになった」というのです。

結城紬の亀甲は点字のようにデコボコしているわけではありませんから普通に表面を触っただけでは全くわからず、結城紬の真綿のザラザラとした風合いを感じ取ることができるぐらいのはずです。でもその人、つまんない嘘を言うような方じゃ無いんですよ。日本の織物を心から愛しておられて、卸問屋で織物の仕入れ一本で頑張ってこられた方で「もう貴重な織物はどんどんなくなっていくから」と日本中の織物を1反ずつ買い揃えておられたような、織物を心から愛しておられた方でした。

その時にはちょうどお客様が来られたのか、なんらかの理由でそれ以上の話ができず、その当時私自身も若くてその方と対等に話せるほどの知識量すらなかったのでなんとなく聞き過ごしてしまいましたが、たまに思い出して「あれは一体どうやって亀甲数がわかったんだろう」って思い出すんですよ。

時は何年か経ち、某卸問屋の担当者(先ほどの方とは別人)と話している時あるときその話題が出ました。「○○株式会社のあの人、結城紬を持っただけで亀甲数がわかるって言ってたけどどんなタネですかね?」と聞いたら「それはきっと生地の薄さやないか?」といわれました。

そうか!と思いましたね。

結城紬は80亀甲、100亀甲、160亀甲、200亀甲などいろいろな亀甲の細かさがあります。大島紬でいう5マルキ、7マルキ、9マルキみたいなものでこの数が増えていくに従って細かい絣で織り上げられた高級品となります。つまり80亀甲は比較的絣の大きな柄、200亀甲は非常に細かい絣となり、80亀甲は比較的太めの糸、200亀甲は細い糸で織り上げられます。つまり80亀甲の生地は太めの糸を使って厚めの生地、200亀甲は薄く軽い生地となります。そのため触ると厚さにより亀甲数がわかるということなんですね。

先週から引っ張ってきましたが納得いただけましたでしょうか?

結城紬とよく対比される大島紬は先ほど書いたように5マルキ、7マルキ、9マルキ、12マルキとありますが、私が聞いた話では糸の絣の割合が違うだけで糸自体は細くなっているわけでは無いようですから厚さは変わらないようです。もう少し詳しく書きますと、大島紬はすべての糸が絣糸で染め分けられているわけではなく、全く絣のない地糸と絣模様をつけた絣糸を組み合わせており、地糸と絣糸の割合でマルキ数が決まっていると記憶しております。ただ、私が今まで触ってきた限りでは、5マルキに比べて9マルキはなんとなく薄いような気がするんですが気のせいなんですかね?

最後に、200亀甲というと結城紬の中でも最高級品で1000万円オーバーというのもあるような、なかなか庶民には手ので無い雲の上のような織物ですよね。一方一番亀甲の大きめの80亀甲は、どうしても欲しいのであれば、頑張れば普通の庶民でも十分手の届く価格です。もちろん重要無形文化財のものですと決して安くは無いですが…。

では、200亀甲と80亀甲、どちらかをあげると言われたらどっちを取りますか?まあ、上の話を聞くとなかなか自分では買えない1000万オーバーの200亀甲が欲しいという方が多そうですけど(笑)、実は80亀甲も非常に人気があるんですよ。なぜかと申しますと先ほどから書いておりますように200亀甲は柄が細かく手の込んだ織物ではありますが、生地が薄い=寒いという方がおられます。逆に80亀甲はふんわりとした結城紬独特の空気をまとったような暖かさがあり、あえて80亀甲を選ぶ着物ファンも多くおられるとか。

高ければ高いほどいいもののように思ってしまうのですが、それはあくまでもどれだけ伝統工芸品として手間がかかったかというだけのことであり、ファッション性であったり暖かさであったり、本当にお客様が望んでいることなのかとはまた別ですよね。え?200亀甲をもらえたら500万ぐらいでフリマサイトで売って80亀甲を100万円で購入してフリマサイトの手数料引いた350万円をお小遣いにする、なんて言ってる人は誰ですか。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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