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Q&Aで学ぶ。お客様の「お断り言葉」の切り返し6パターン


 接客の悩み相談をたくさん受けます。「高い」「見ているだけ」など、私自身も何度お客様に言われたか分かりません。でも、言葉の裏にあるお客様の本音こそ対応のヒントがあるのです。Q&A方式で学んでみましょう。

Q:上からは高額品を売れと言われますが、お客様から「高いわ」と言われるのがつらいです。
A:
「高い」と「買わない」は違います。

 高額品を薦めにくい悩みの根底には、貨幣での買い物システムの特徴があります。物々交換と違い、貨幣が介入する買い物は心の痛みを伴います。貨幣は何とでも交換できる可能性と保存性があり、ためておけばいろいろなものとの交換が可能です。言い換えれば、「お客様があなたの店で買い物する」という現象は、他にも買えただろう可能性を捨てて決めてくれたわけです。そう考えると、自店で買物してくださるありがたみを強く感じられます。
 買物は喜びであると同時に、交換の可能性を失ったつらさも存在するのです。そのつらさを感じられない販売は押し売りになってしまいます。
 私はいつも思うのですが、接客販売はつらいくらいでちょうどいいのです。そのつらさはお客様の心の痛みと同じだからです。高額品は、売るのではなく薦めるものです。買うかどうか判断するのはお客様の仕事です。
「高いわ」の裏側には「どうして高いの」と疑問が隠れています。高いと言われたら「そうですね。高い理由を説明させていただいてよろしいですか」と前置きしてから、説明してみましょう、”高い”と”買わない”は違いますからね。

Q:「安くしてよ」と言われると困ります。赤字にして売ることは出来ませんし、かといって売れないのも困ります。
A:売れないのは高いからではなく、欲しくないからです。

 ある行動をとるべきか、迷ったときには逆に考えてみるのも一手です。「安くしたら100%売れるか」と考えます。どうですか? 安くしても売れる確証はありませんね。
 つまり、安易に安くするのは危険なのです。「安くしてよ」の裏側には「私が買わないと、あなた、売上げが困るでしょう。だから安くして」という依存が隠れています。一度安くすると、次はもっと割引してくれると期待します。これが繰り返されると、店側は「もうできません」と断る事態に行き着きます。
  すると、甘え依存の人は怒りをあらわに態度が豹変します。私が聞いた怒りの言葉には「今までこの店でどれだけ買ったと思っているのよ」といった、胸に突き刺さるほど辛辣なものもありました。
 店ができない割引をするのは親切ではなく、お客様をクレーマーにする行為です。「安くしてよ」と言われたら、困った表情で肩をすくめ、うつむき加減、神妙な口調で断りましょう。愛想笑いして断ると、表情と態度と言葉が一致せず、相手に不信感を与えてしまいます。
 売れないのは高いからではなく、欲しくないからです。値引する前に商品の利点を伝える方が、検討され売れる確率が上がります。

Q:「買えないわ。見ているだけ」と言われ、取り付く島もありません。途方に暮れてしまいます。A:見ているだけ=商品に興味あり、です。

 実は、人は言葉では嘘はつけても動作でウソをつくのは難しいのですよ。だから、「買えないわ。見ているだけ」を言い換えると「口では買えないと言いながら、行動では熱心に商品を見ている」となります。お客様は買わないと言ったわけではなく、興味があると言ったのです。言葉をうのみにせず、行動と照らし合わせたいですね。欲しくなければ熱心に見ることもしないはずです。
 全ての来店客は「気に入ったものが見つかり、タイミングが合えば買いたい」と本心では思っています。
 この場合は、お客様の行動に対する”あなたの感情”を伝えてみましょう。以下のような流れです。
①「ご覧いただきうれしいです。今日は商品特徴だけお伝えさせていただいてもよろしいですか」などと、買わない前提で話を進めてみます。
②お客様が「どうぞ」と許可してくれたら、
③「では、説明が終わったら感想を聞かせてくださいね」
 と前置きして本題に入ります。
 すると、自然とお客様と会話が始まります。「まず私が話して、次はあなた」と、話す順番を決めるだけで会話になるのです。本当です。だまされたと思ってやってみてください。

Q:「いつも百貨店で買っているの」と繰り返されると、「どうせ小さな店さ」と腹立たしくなります。
A:お客様は、
店の大小でなく販売員との信頼度を求めています。

 比べられたような気がしますね。百貨店でなくても有名店や競合店の店名が出るとドキッとするものです。
 でも大丈夫です。お客様はあなたの店と他店を比べているのではありません。「いつも百貨店で買ってる」には「だから私を大切に扱って」という願望が隠れています。同じ願望が隠れている態度としては、必要以上に大声で話す、大きく脚を開いてドカッと座るなどがあります。
 こうしたお客様が来店したら、少しだけうやうやしく接してみます。椅子を勧める際にも、レストランのように後ろに引いて、ブランドのカップでコーヒーを出してみましょう。
 そして、何より、対面でゆっくり話を伺いましょう。自慢話に聞こえても、感心して聞いてください。お客様は店が怖いのです。たとえ自分で選んで入店していようが緊張するものです。店の大きさではなく、あなたという人が信頼できるかを測ります。ここでお客様の態度を受け止めることができたら、相手に変化が起こります。今度は他店に行ったときに、あなたの店の自慢を始めるでしょう。
 買物以前に、「人と人としてどう付き合うか」を、店として明確にしておくといいですね。

Q:「年金暮らしなの」と言われると、クロージングができません。「大変ですね」とも言えず躊躇します。A:クロージングに感情は必要ありません。ただ「今日お求めになりますか」と聞くだけです。

 きっと、あなたは接客が上手ですね。お客様の立場で物事を考えられているからです。これを共感性といいます。
 接客には共感性が必要です。相手を観察して、「何を求めているのか」「どうしたら役にたてるか」と想像豊かに寄り添うことで喜んでもらえるからです。
 ところが、共感性が強いがゆえに想像し過ぎる面もあります。年金暮らしと聞くと、商品を薦められない。これは、その典型的なパターンです。接客で相手の身になって商品紹介をした以上、商品を薦めるクロージングまで必ずしなければいけません。なぜならば、あなたはお客様の、”欲しいスイッチ”を既に押しているからです。欲しいと思ったのに「今日ここで買ってください」とクロージングしないと、お客様は”欲しい”という感情の収まりがつかず、他店で購入してしまいます。しかも、他店はそのお客様を理解せず中途半端に売り、結果、ドンピシャな提案も助言もなく購入してしまうのです。
 これはお客様にとって不幸です。「年金暮らし」という事実と、「だから商品を薦められたら困るだろう」という想像は別物です。クロージングに想像は必要ありません。ただ「今日買われますか」と伝えましょう。

Q:声掛けしても無視されると、しない方がいいのかと悩みます。
A:お客様への
声掛けのセリフを変えてみましょう

 お客様は無視などしていませんよ。ただ、どう答えたらいいか分からず、言葉を持たないのです。「ひょっとしたら言葉に困る声掛けをしているかも」と考え直してみませんか。
 お客様に答えてほしいと思うのは、自分はそのままに相手に変化を求めることです。これはうまくいきません。他人より、自分が変わった方が物事は早く進展します。どうせ無言なら、いろんな声掛けを試してみるチャンスではありませんか。
 お客様を無言にさせてしまう声掛けのパターンには「何かお探しですか」「お出ししますよ」など商品がらみがほとんどです。答えると、都合よく売りつけられるかもしれない不安から無言になるお客様がほとんどです。
 まずは、商品以外で声掛けして、変化を観察しましょう。傘を持っていたら「外のお天気はどうですか」など事実を見つけ、それに関する質問を投げましょう。商品以外の問い、声掛けには意外と答えてもらえます。短いやりとりでも3回繰り返せば、小さいながらも人間関係ができます。その後、商品に関する声掛けをすればいいのです。トライしてください。



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