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ミキシングエンジニアに最善の仕事をしてもらうための考え方

この記事は作編曲家の方がエンジニアにミキシングを依頼する際に抑えておくべきポイントを列挙し、より良いファイナルミックスをより短時間で生み出せる現場を増やすことを目的とした記事です。

素材を渡す段階でミックスは始まっている

エンジニアに渡すパラデータの時点でミックスは始まっています。ツーカーの関係のエンジニアであれば特に心配はありませんが、初めて依頼するエンジニアであればデータを渡す前に色々確認するべきでしょう。「あのエンジニアがOKだったからこのエンジニアもOKだろう」は、当てはまる場合もあれば違うこともあります。下記は一例です。

・サンプルレート、ビット深度、チャンネル数
・エフェクトの掛け録りの有無
・同じ楽器を複数のマイクで録っている場合どこまで分けるか
・MIDI、セッションデータ、譜面の要不要
・エディットの責任範囲

また、ラフミックスは極力作って渡すようにして下さい。ラフミックスは作家の意図を色濃く反映した最も大きな手がかりです。参考曲については楽曲制作のディレクションと同じで、あった方が良い仕事が出来るエンジニアと無い方が本領を発揮するエンジニアがいる気がします。

音作りは自分でやった方が良いことが多い

音色作りはミキシングと全く別のタスクなので、音色を変えたい場合はその音色に加工してからエンジニアに送る方がスムーズだと思います。どこまでを音作りとみなすかはエンジニアと相談して下さい。直接聞けない場合は音作り前後のデータを両方送れば安全です。僕は音作り済のデータだけでミックスする方が好きです。

エンジニアは楽曲のことを何も知らないという前提

作曲家、編曲家は曲のことをすみずみまで把握していますがエンジニアはレコーディング/ミックスを始めるまで曲のことを知りません。マーカー入りのMIDIやコード譜、リズム譜、オーケストラであればフルスコアがあると楽曲の構造を把握するのが格段に速いです。また、波形のネーミングについても

・ファイル名の頭に楽器名を入れる
・2バイト文字を使わない
・ファイルが多い場合はいっそDAWセッションに並べて
 色分け、整列しておく

みたいなことをするとかなりミックスの時間が短縮出来ます。

エディットとミックスは別の作業

ピッチやリズムの補正、テイク選びなどはミキシングとは全く別のタスクなので、特に下手うま感を狙いたい時などはエディットを済ませてからエンジニアに渡すのがオススメです。エンジニアに言えば勿論やってくれますが、ミキシングの料金だけでお願いするのは無理でしょう。

全部揃ってから素材を渡す

録れた素材から順番に五月雨で送るとエンジニアが着手出来て楽かもと思うかもしれませんが、基本的にエンジニアは全てのトラックが揃うまで作業を始めることが出来ません。全てのトラックがお互いに影響を与え合うからです。先に一部のトラックだけでミキシングを始めた場合、必ずどこかに不整合や綻びが生じて最終形のクオリティに影響します。ミキシングの時間を十分に確保するためにも、全ての素材をスケジュール通りに揃えられるよう努めて下さい。

何を変えたいかだけではなくいつ変えたいかも伝える

ある楽器の音量を上げたい/下げたいとだけ伝えると、曲全体なのか局所的なものなのかエンジニアには判断がつかないので、具体的な小節数で伝えると意図が伝わりやすいでしょう。

例)
・ボーカルを大きく、ではなく何小節目のボーカルが聴こえて欲しい

数値よりは印象値

作家の方からのフィードバックでよく「◯◯を◯dB上げて」と言った指示を頂くことがあって、これはこれで分かりやすくて凄く助かるのですが、その変化をつけることでその楽器の印象がどうなってほしい(主役になって欲しい、聞き取れなくても感じ取れればそれでいい、手前に来て欲しい、奥にいって欲しいetc)かを添えてもらえると考えやすいです。単にボリュームを変えるとバランスが崩れる場面が結構あります。ラフミックスを渡していればより伝えやすいでしょう。

ステムの書き出しは別料金

ステムやオケトラックの書き出しは人によって予算内でやってくれたりもしますが基本的には別料金のものなので、着手前に要不要をきちんと伝えることをオススメします。

スタイルに適したエンジニアを選ぶ

至極当たり前のことですが、どんなジャンルの楽曲でも作れる作曲家が居ないのと同様にどんなスタイルの楽曲でも得意というエンジニアもいません。EDM専門のプロデューサーに弦楽カルテットをミックスしてもらってもきっとうまくいきませんし、雅楽の録音の専門家にプログレッシヴヘヴィメタルをミックスしてもらってもこれまたうまくいかないでしょう。

作った楽曲のスタイルを得意としているエンジニアを探してコンタクトをとって下さい。

世の中には色んなエンジニアがいる

この記事を読んで「んだんだ」と思うエンジニアもいれば「お前は何を言っているんだ」と感じるエンジニアもいると思います。また、既に同じようなトピックで違う意見を書いているエンジニアの方もいらっしゃいます。ここで重要なのは色んな意見が音楽制作のコミュニティに発信されて皆が考える切っ掛けが増えることだと感じています。

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