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EPIC MUSICを海外で録ってみた

コンセプト

ロック、メタル畑の人というイメージを払拭するというか、もうちょっとオーケストラをやる人というイメージをつけたいなと思っていたところにAudio OllieのLA Modern Percussionがリリースされて「これは凄いのが出たな!」と思ったのでどんなことが出来るか試すために作り始めたのがこの『LOUDER THAN EPIC』という楽曲です。レコーディングの最中にコメントを求められて思わず「louder than epic!」と返したのがそのままタイトルになっています。

ストリングス、木管レコーディングについて

曲を作り始めてから収録まで一週間ちょっとしかなかったのですが、いつものようにsoundtecのShota Nakamaさんにブッキングやオーケストレーション、指揮、コミュニケーションをまるっとお願いしたので何もストレス無く収録を迎えることが出来ました。

ストリングスはShotaさんの厚意で6/4/4/3/1をなんとトリプル(!)で重ねています。同じ座席で重ねても音量が増えるだけでデメリットの方が大きいので、重ねる際は座席を後ろに大移動させて録ってもらったんですが、2回目の移動ではもう下がれるスペースが無かったため3テイク目はちょっと変わった使い方をしています。狭いスタジオで椅子そのものを動かす余裕の無い状況でのダブル、トリプルは時間もかかるので個人的にあまりやらないほうが良いと思います。オーバーダブはどんどんやったら良いと思います。

最初のテイクよりもダブルの時の方が奏者の楽曲理解度が高まっていて良い演奏をしてもらえたので、始めからダブルで録ると決まっているのであればダブル時の座席配置で録り始めるのもアリなのでは?と思ったりするんですがそこのところどうなんでしょう。

ちなみにレコーディング時はSource Connect Nowを使っていました。Source Liveと比べて圧倒的に遅延が少なくブラウザ上でトークバックも出来るので、一度行ったことのあるスタジオであれば大きなストレス無く収録出来るのを実感しました。時差の問題だけは気合で解決する必要があります。(ボストンで収録すると日本時間朝2〜8時くらいになりがち)

木管レコーディングはなんと全部宅録とのことです。宅録なんですがオンマイクとオフマイクを録ってくれてあって感動しました。S/Nも悪くなく、上手いこと混ぜられたんじゃないかと思います。ピッコロやフルートのランは生だと迫力が全く違いますね…最高でした。

ギターレコーディングについて

これまでの僕の作品ではオーケストラが入った曲でも必ずギターが主役として存在していたのですが、Astral Chainの劇伴を沢山書いていく中でムード作りとしてのギターの使い方を意識するようになったので、この曲ではあくまでシネマティックな演出という文脈でのギターの入れ方を意識しています。

使用機材は

T's Guitars DSTC (オーダーモデル)
Bogner HELIOS 100
Universal Audio OX (Greenback)
UAD Ocean Way Studios

だったと記憶しています。オンマイクを普通のポップスのように録ってもオーケストラには絶対になじまないので、適切なリバーブ選びとEQ処理が必要になります。

その他使用サンプルについて

金管は全てSpitfire Studio Brassです。最初はSpitfire Symphonic Brassで作っていたのですが、Fraser Performance Studioの響きとのマッチングが良いのはStudioだなと思って作り変えました。パーカッションは先述の通りLA Modern Percussionを中心に、Spitfire PercussionやHans Zimmer Percussion Professionalを混ぜています。ちなみに弦、木管へのサンプルのレイヤーはコントラバス以外していません。

ミキシングについて

先に5.1chを作ってからステレオにダウンミックスするやり方で作っています。最初からステレオで作り始めるのと比べて完成形がだいぶ変わる気がします。ダウンミックス係数は曲によっても変わりますねこれ。

弦は前述の通り2テイク目と3テイク目の違いが大きくつかなかったので、3テイク目のLRを逆転させて遅延を入れて使っています。これはバイオリンの居る左サイドが強くなりすぎたことへの対処にもなっています。

サラウンドチャンネルについてはサラウンドマイクとラベルが付いたテイクは無かったもののWideが2種類あったので、そのうち音が遠そうな方を使っています。サンプルのサラウンドチャンネルと質感がミスマッチしやすい部分なので、そこは念入りにチェックしています。

木管は宅録なのでそもそもステレオの音が存在せず、空間系を駆使して広げる必要がありましたが頑張りました。

打楽器は…Alan Meyersonのプリセットを真に受けるととんでもないコンプレッションがかかるので人道的な音にとどめ、不要なレゾナンスのカットにだけ注意しました。

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