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バンドマンが初めて曲の中にオーケストラ要素を入れる時のための記事

壮大な雰囲気を出したくてオーケストラの楽器を使ってみたいけど正直何から始めていいか分からないというバンド畑の音楽家は結構いるのではないかと思います。この記事では、DAWプロジェクトの中で初めてオーケストラ楽器を使う時に途方に暮れずに済むように最初に意識すべきポイントを最小限の情報で纏めていきます。

先に結論を見る

  • 楽器の種類を知る

  • まずは臆せずやってみる

  • 困ったらユニゾン/オクターブ

  • 和音は密集させていい

  • 奏法の名前を覚える

  • 何となく制約を知る

    • 高音楽器ほど敏捷に動ける

    • 弦楽器>木管楽器>金管楽器の順に敏捷度が下がっていく

    • 金管楽器はうるさい

    • 金管楽器は吹くのがしんどい

楽器を知る

オーケストラは大まかに次の4つの楽器に分かれます。

  • 弦楽器、ストリングス

  • 金管楽器、ブラス

  • 木管楽器、ウッドウィンズ

  • 打楽器、パーカッション

実際には様々な楽器があるので、余裕があればどの楽器がどんな音なのか覚えていってみて下さい。

多くの人にとって、曲の中に初めてオーケストラ要素を入れる時に試すのはストリングスでしょう。音色の汎用性が高いこともありますが、アレンジをする上での制約が比較的少ないのも弦楽器が手を出しやすい理由の一つです。

結局のところ、オーケストラをアレンジに取り入れるということはどこまでいってもこの「アレンジをする上での制約」との戦いになります。特に、バンド畑の人間にとってはバンド楽器との制約の違いを知ることが非常に重要になります。

とはいえ、この記事はあくまでオーケストラ新入生向けの記事なので大雑把な部分にしか触れないようにします。

まずはやってみる

いきなりですが曲の中にストリングスを入れてみましょう。バイオリンだとかビオラだとか言われても困るぜという時はFull Stringsみたいなパッチを使ってしまいましょう。最初は奏法やベロシティのことも気にしなくてOKです。シンセパッドを打ち込むくらいの気持ちでやってみましょう。

すると、以下のような問題が生じると思います。

  • 音の立ち上がりが遅い

  • メロディが繋がっているように聞こえない

  • 和音を打ち込んでも1音しか発音されない。

  • 和音の響きが薄い

  • フレーズがちゃんとオーケストラらしいものになっているか不安

音の立ち上がりが遅いことについてはこれが非常に大事なことなので肝に銘じておいて欲しいのですが弦楽器セクションというのは本来それくらい立ち上がりが遅い楽器です。少なくともフレーズの入りの1音はそういうアタック感になります。

また、LongやSustainと書いてあるパッチでなんとなくメロディを打ち込むと一音ごとにアタックの弱い音が再生されて不自然に感じることもあるかもしれません。

これを解決するために適切な奏法を選ぶというステップに進むことになりますが、具体的な話は後述します。

和音の響きが薄いと感じる場合は和声を学ぶべしという回答になってしまいがちですが、何故バンド畑の人がオーケストラを充実して響かせることが出来ないかは楽器が違うからという理由でシンプルに説明出来ると思っています。

楽器の違いは密集させた時の汚さに大きく影響します。ディストーションギターのように複雑な倍音構造を持つ楽器は和音を重ねると一瞬で響きが濁るので低音弦ではなるべく単音で、最低でも5度離して3rdはなるべく使わないというのをギタリストであれば感覚的に理解していると思います。その一方で、ピアノのように極端に密集させても不快にならない楽器もあります。

つまり最適な響きを得る方法は楽器によって異なるのです。これに気づくとオーケストラに限らず色んな楽器をアレンジする時に迷いが減ります。

慣れないうちはとにかく困ったらどの楽器もユニゾンさせてしまいがちですが、とりあえずストリングスに関しては全パートユニゾン/オクターブで良いんじゃないかと思います。

まずは形にすることが出来たという経験を積むことが自信を形成する上で重要ですし、そのために最初から「正しい」手法をとる必要も無いと思います。よく分からないから使わないというのが一番勿体ないです。慣れてきたら積極的にコードで鳴らしてみたり楽器ごとに異なる役割を持たせることを意識してみて下さい。

フレーズのオーケストラらしさについては、これから始めるぞという人であれば気にせず何でもやってみるで大丈夫だと思います。それで行き詰まったと感じた時に初めて色々調べればいいんじゃないでしょうか。幸いなことに、アイデア、ボキャブラリの宝庫であるクラシックの交響曲は譜面を簡単に買うことが出来ます。

バンド楽器との違いを知る

音色の違いに伴い和音の作り方の違いが生まれることを説明しましたが、多くの人が関心を持っているのは寧ろ単音でのフレージングだと思います。繰り返しになりますがまずは恐れずに思ったフレーズを打ち込んでしまってOKです。

とはいえ意識して欲しいこともあります。それは「音が出るまでにかかる時間」と「音を出す大変さ」です。

いずれもバンド楽器の経験が長ければ長いほど直感的に理解するのが難しいのですが、オーケストラの楽器は音を出すぞ!と思っても直ぐに音が出るように作られていません。

このことでリズムが合わないという大問題が起こります。言い換えると、細かいフレーズはリズムが合わないことを前提にアレンジする必要があります。

このリズムの合わなさはバッファサイズが1024や2048の状態で演奏する気持ち悪さを想像してみてもらえると分かりやすいのではないかと思います。それくらいの制約を常に受けている楽器だと考えれば、オーケストラのフレージングをイメージしやすくなるのではないでしょうか。例えば速い駆け上がりのようなフレーズであれば弦楽器や木管楽器は得意ですが、細かく裏打ちが混ざるシンコペーションだらけのフレーズはオーケストラには演奏出来ません。

また音を出す大変さについてですが、管楽器は特に大変なので楽曲の中にずっと登場するようなアレンジは普通は施しません。ギタリストの方はトーキングモジュレーターをライブで1曲ずっと使い続けることを想像してみて下さい。恐らく想像するだけで酸欠になったのではないかと思います。

またギターよりベースの方が細かい動きさせるのが難しいのと同じように、オーケストラも高音楽器の方が低音楽器より敏捷に動くことが出来ます。

打ち込みで困ったときは

オーケストラの打ち込みの最もベーシックなやり方はLong系奏法とShort系奏法を組み合わせることと言っても過言ではありません。最近は1パッチで何でもできるような作りになっているものも多いですが、そういうものでも内部でやっていることは同じです。

ストリングスをはじめとするオーケストラの楽器には、普段バンド畑の人間が聞き慣れない名前の奏法が大量にありますが、最初に直面するのはメロディが自然に鳴らないということだと思います。メロディが繋がって聞こえない場合はレガート(legato)のパッチを使うと音の繋ぎ目に「その音程を移動する時の音」が追加で発音され自然に繋がるようになります。

その他、短い音や特にメロディアスな繋がりのない単音のアタックの弱さを解決するには以下のような奏法を選ぶ必要があります。

  • スタッカート、staccato

  • スピッカート、spiccato

  • マルカート、marcato

これらは音価や音色が異なりますが、速いアタックを持っている点では共通しています。

和音を打ち込んでも1音しか再生されないのは上記のレガートパッチが基本的にはモノフォニックなパッチだからです。和音を打ち込みたい場合はlongやsustainと書かれたパッチを使うか、使いたい和音の分だけ別々にレガートパッチを読み込んで下さい。

そもそもどの音源を買えばいいのか分からない

オーケストラを曲の中で使うぞ! と思っても、ここ10年ほどで無数のデベロッパーがオーケストラ音源マーケットに参入しているためどれを買えばいいのか分からなくなっていると思います。

初めて使う音源は専門性よりも汎用性の高さと機能の少なさ、価格の低さが重要だと思うのでいくつか例を挙げておきます。

  • BBCSO CORE / Spitfire Audio

  • Spitfire Studio Orchestra / Spitfire Audio

  • Berlin Orchestra / Orchestral Tools

  • CineSymphony LITE / Cinesamples

  • Hollywood Orchestra Opus Edition / Eastwest

  • Symphony Essentials - Collection / Native Instruments

DAWによってはある程度オーケストラ音源が付属しているものもあるのでまずはそれを使ってみても良いと思います。慣れてきて音源選びをちゃんとやろうと思った際は下記の記事をご確認下さい。

ある程度慣れてきたら

オーケストラ打ち込みをやっていて陥りがちな落とし穴をまとめた記事がありますのでご覧下さい。

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