ウイルス性急性胃腸炎

 昨日、同居している末孫娘1歳11ヶ月が午前中、日赤に入院した。その前の晩までいつものように夕食を済ませて就寝したのだが、あまりにも急な脱水状態となった。

 実は、その姉である3歳4ヶ月の孫が先週、吐いたり下痢したりで町医者にかかったところ、検査もしなかったようだが「インフルエンザ予防接種の副反応」と診断された。体から一切の食べ物が出てしまえば急速に回復に向かうものの、水分補給を怠ると一気に脱水症状となる。伝染性ではないと知ると私の気も緩み、おせんべいを一緒にかじったり、飲み残しの牛乳を飲んだりした。それがイケなかったとも言い切れないが、同じ症状が、今度は私に起こった。それは昨日の深夜だった。

 とにかく嘔吐が激しく、ベッドに戻れない。治まるまでに2時間近くかかっただろうか、そうこうしている間に注文のパンの仕込みと焼き菓子を作る時間になった。悪寒が走り、気怠く、眼を開けているのが辛い。だが、そうも言っていられず、十分消毒をしてから作業にかかった。

 下痢や嘔吐には体力を使うのだということが痛いほど身に沁みた。なんとか作業を終えてベッドに戻った時は、辛さを堪えてやり遂げたという達成感と、待ちに待った休養の瞬間への感謝の気持ちが手伝ったのか、それから深い眠りについた。

 朝の8時過ぎ頃だったか、階下で人の動きがざわざわしている。しっかり目を開けてその様子に聞き耳を立ててみた。それと同時くらいに娘が部屋にやってきた。末の孫娘が、私が爆睡している早朝に、上の子と同じような症状で何度も吐いたらしい。つまり、インフルエンザの副反応ではなく、私達三人がかかったのは、同じタイプの菌かウイルスによる胃腸炎を疑った。私以外は熱もない。私は8度近くまで上がったが、一過的なものだったため。ノロウイルスは疑わなかった。さて、末の孫娘の診断を待つのが良いなということで、付き添った娘からの連絡を待った。

 ウイルス性の急性胃腸炎であった。しかも、経口で水分補給が一切できない状態のため、即刻、入院するというのである。赤ん坊なのでこうなるのはわかっていたが、病院に行く前、吐いてもケロッとしていたのが、入院準備で連れ戻った時にはぐったりして寝てしまっていた。赤ん坊の脱水は進むのが速いとは、知識で知っていることと現実はかなずしも重ならないのを思い知った。

 で、私はというと、立ち上がるとふらついた程、倦怠感と脱力が酷かった。嗚呼、こんな体験は初めて。水をスプーンに一杯口に含むのでさえ、あの苦しい嘔吐がまた襲ってくるのではないかと恐怖した。

 夕方、なんとか食事付を用意したが、私はもちろん食べる気はない。が、病院で出される重湯を飛ばして、素麺を柔らかく茹でて味噌汁の上澄みでお椀一杯、なんとか食べた。

 もう嘔吐は戻ってはこないが、丸一日、辛い思いをしたのを思い出した。

 体の異常反応といえば色いろある。今回のような急性に菌やウイルスが体に入って起こるものや、難病と言われる病気に伴う症状。この辛さがいつとはなく、突然自分を襲う時、このままどうなるのかがみえなくなり、不安になる。自分の判断できる範疇ではなくなることへの恐怖というものだろうか。これと戦わずに、共生するという精神力は、「死」への覚悟がそれに安楽を与えるのではないだろうか。

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