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一升瓶にさよならなんて云えないよ

東京の今日の日中の気温は23度。
爽やかな秋晴れで、ときおり吹く冷たい風が心地よい陽気です。
日本酒も美味しく感じる気候になってきました。

お酒のご紹介です。

風の森(かぜのもり)

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奈良県御所市にあります油長(ゆうちょう)酒造株式会社。
創業は1719年。昨年300周年を迎えた老舗蔵です。現在の蔵主である山本長兵衛氏は十三代目。昨年名前を継いだ、若き当主です。

飲んでみましょう。

上立ち香は甘いリンゴの香り。
口に含むとピリピリした炭酸ガスがまず舌を刺激します。
爽やかなブドウのような含み香とともに舌の中心線をなぞって甘みが台頭。苦みがサイドから感じられてきてラムネのようなテイストです。
後口は苦みで締めます。果実味のある残り香が印象的で、余韻は長めです。

ラベル情報を記載しておきます。

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507 Series
純米奈良酒
原材料名:米(国産)米麹(国産米)
奈良県御杖村産 露葉風 100%使用
精米歩合:50%
アルコール分:16度
製造年月:2020.09
仕込水:金剛葛城山系深層地下水 超硬水 硬度250mg/L前後

購入は東京都狛江市の籠屋 秋元商店。

価格は 720ml で1,600円(税抜)でした。

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割りと昔からある日本酒関連の論争に、一升瓶 vs 四合瓶論争というものがあります。
日本酒を詰めるなら一升瓶が良いのか、四合瓶が良いのかという議論です。

一升瓶にも四合瓶にもそれぞれメリット・デメリットがあるので、客観的にはどちらが最善ということはできません。
ただ、ここ10年くらいの日本酒の流通を見ていると、容量のバリエーションは以前より遥かに豊かになったなと実感します。

一升瓶・四合瓶のみならず、500ml や 300ml という小瓶が増えました。
ワンカップ(1合瓶含む)を扱う銘柄もかなり増えた気がします。
ただ、一升瓶を超えるマグナムサイズを販売した例は僅かに留まっています。

比較論で書けば、四合瓶のメリットは一升瓶に比べ非常に大きいと言えます。
持ち運びしやすく、家庭用冷蔵庫にも容易に収納でき、劣化する前に飲み切れるサイズ。
瓶蓋もスクリューキャップがほとんどで、開閉も楽。

これらのメリットは、逆さまにするとそのまま一升瓶のデメリットです。
一升瓶は持ち運びしにくく、冷蔵庫にも入らず、容量が大きいので長期保存されやすく家飲みではどうしても品質変化が起きる。
栓(樹脂キャップ)は慣れるまで開閉が難しい。中には非常に硬い栓もあり慣れていても開けられないことも。

一升瓶のメリットと言えばよく言われるのが価格の安さ。
だいたいの商品は、四合瓶の倍の値段で2.5倍の容量です。

ただし四合瓶は、価格は一升瓶に比べ割高ですが、日本酒に限らず一升瓶でも小容量でも売られているほかの調味料(醤油・味醂・酢・ソースなど)は小容量のほうがはるかに普及しており、これらを一升瓶で買っている人は稀です。
市場では、前述した四合瓶のメリットが価格のデメリットを上回っていると評価されているのだと思います。

ただし私は、小容量の日本酒が普及することに異論はないが、四合瓶に完全に切り替え、一升瓶の日本酒を廃止してしまうのは思いとどまってほしい派です。
この思いには感情的な部分も大きいです。
理屈はありません。

単純に一升瓶が好きなんだと思います。
・四合瓶に比べ大きいラベル。美しくダイナミックで字も読みやすい。
・すぐには飲み切れないので結果的に品質の変化と熟成を楽しんでしまえる容量。
・リユース可能であり、専用の通函箱も昔から流通しており我が家にもたくさんある。四合瓶のリユース瓶は正直あまり普及していない。

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時代の流れとともに、小容量化が進んでいることは間違いありません。

今回ご紹介の風の森は2018年に全商品を四合瓶詰めに切り替えました。
これは風の森が無濾過、無加水、生酒というスタイルを守って造られていることに起因しています。
品質が容易に変化・劣化してしまうので、小容量化してそれを防ごうということ。

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探したら1枚だけ持っていた風の森の一升瓶のラベル。
2007年2月出荷のもの。

四合瓶に代わってからも何度も購入していますが、以前に比べ明らかに酒質は向上しています。
今回もそう。
風の森、めちゃくちゃ美味しいんですよね。

客観的に見て四合瓶に切り替えたことは英断だと思うし、実際に飲んで品質の高さを識って凄いなと感心するんです。

そしてもはや二度と会えない風の森の一升瓶への寂寥感を、まだ少しだけ引きずっていきたいと思います。

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