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清張は、フェミニスト?:勝手な考察篇

【追悼、山本陽子さん】
エンドレスで松本清張作品を録画し続ける我が家のテレビなのであるが、ゆえに飽きもせずに同じタイトルを演者違いでまで何度も何度も観てきている。(ヲタクとはそういうものだ。たぶん)

ほら、ガックンもこう言っている。
「本気でハマれるものがあると人生は一気に豊かになる」と。

言い訳はさておき。

私にとって、山本陽子と言えば『黒革の手帖』。

『黒革の手帖』は、金儲けに走る経営者たちの裏金を逆手に取って横領し、銀座のクラブのママに転身した女性銀行員・原口元子を中心とし、魑魅魍魎が跋扈する世界を背景に描く、松本清張の代表的長編。 小説中に出てくる「クラブ・カルネ」があるのは銀座七丁目付近とされている。GINZA6のすぐ南のゾーンですな。

1982年にテレビ朝日系で放送されたドラマ化第1作では、山本陽子が元子役を演じたが、その2年後にはTBS系で大谷直子が元子役に起用されている。 以降もテレビ朝日系で浅野ゆう子(1996年)、米倉涼子(2004年)と続き、米倉は翌年に放送された同作のスペシャル版でも元子を演じている。

そして2017年、松本清張没後25周年で武井咲が主演。米倉涼子から武井咲へのバトンは、平成の松本清張シリーズの仕掛け人がオスカープロモーションの古賀誠氏だからこそ。

この1982年版の山本陽子主演作、2004年版の米倉涼子主演作、両方を観てはじめて、山本陽子の奥の深さがわかる。

米倉涼子版『黒革の手帖』は、元子役だった山本陽子が、米倉版清張三部作の一発目となった同作にて、クラブ『燭台』のママとして大事な筋を作るポジションに20年の時を経て返り咲いていることこそが見ものだった。

山本陽子なくして『黒革の手帖』なし、なのだ。

誰よりも元子の気持ちがわかるはずの山本陽子が、米倉演じる平成版元子に浴びせる冷徹なまなざし。
かつて銀座でいじめられながら立ち上がった女が、同じように自身の出生を呪いながら這い上がろうとする女の出鼻を品良く嗜める。

ゾワゾワする…20年後のキャスティングまでを踏まえて元子を演じていたわけではなかろうが、とにかく山本陽子が燭台のママとして現れた瞬間の威厳は、とにもかくにもbeyond description!

清張作品に見る「女の情念」と「不遇」

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