新しい音楽を聞かない理由:脳内補完篇
チノアソビの収録は、だいたい後藤が運転する車で林田先生とす~さんをピックアップしてTAOに向かうことが多いのだが、そのせいであらう、
「お前、もうちょっと若い音楽も聴いてやれ」
とたまに林田先生に言われる。
まぁ、カーステ(ってもう言わないよな、こういうところから昭和のままなんだろうが)から流れてくる音楽は、およそ2000年をまたがないものばかりなので致し方ない。
(しかしそれも、まもなく四半世紀を超えると考えるとゾッとするな…)
別に毛嫌いしているわけではないのだが、後藤の中で、「生」がないものはどうもピンとこないという傾向があると最近気づいた。
先日のす~さん回の「デジタルとアナログにまつわる『音』談義」でも、
「その場にいる人がいて初めて成立するものがある」という話にもなったりしたが、たぶんこのあたりのことを音楽用語で表現するとしたら「グルーヴ」が近いのではないかと思う。
しかし、100%デジタル音源だけの空間で生まれるそれには限界がある気もしている。
ということで、「生」が一番だと思うに至ったエピソードを今週はご紹介したい。
ミリオンセラーがバンバン出ていた時期が多感な年齢だった後藤は、当時の音楽番組と音楽雑誌はほとんどチェックしていたし、大学生の砌なんて、アルバイト代をほぼCDとLIVEに使っていた…CDショップと中古レコード店に何十万貢いだかわからない。
当時の音楽の聴き方は、気になるアーティストの全アルバムを遡り、アルバムのブックレットに入っているライナーノーツを穴があくほど読みつぶし、スタジオミュージシャンに誰がアサインされているかをチェックし、そのアーティストの記事を読み倒してその人のルーツミュージックまで調べ上げて追いかける、という作法だった。
もうずいぶんと処分はしたものの、そんなわけで音楽関係の雑誌や書籍、アルバムの多さは家に人が来るたびにちょっと呆れられていた。
通称「別カド(別冊カドカワ)」だけで本棚の一角が埋まっていたり、ブラックミュージックの原点から書いている本が複数冊転がっていたりと、とにかくカオスな本棚と脳内だった。まぁいまもあんまり変わらないか。
そして社会人になり、自由にLIVEに行けるようになってくるのと反比例して、行きたいアーティストのLIVEが減り始める。20歳くらい上のアーティストばかり追っかけていたので仕方ない気もするのだけれど。
そんな中でも、いまだに独りでコツコツ通っているのが、布袋寅泰のLIVE。
残念ながらBO∅WY全盛期はまだ小学校低学年だったのでリアルタイムでは追えていなかったのだが、大学生のときに布袋ソロに衝撃を受け、そこから布袋全アル、BO∅WYにいたっては幻の「LAST GIGS」のノーカット収録版のブートにまで手を出した。現在、BO∅WYのDVDはすべて車に積んでいる。病気である。
そしてそうなるとグラムロックはマストとなり、マーク・ボランとTレックスやデヴィッド・ボウイ、ロキシー・ミュージック、モット・ザ・フープルとどんどんCDが増えていった。
当然のことながら、周りに布袋ファンの友達などいない。
それ以外のアーティストは一緒にLIVEに行く友人がいたものの、布袋LIVEは人生初のソロ参戦となる。
これが…恐ろしく楽しかったのだ。
まず、女性ファンの多いアーティストのLIVEはトイレが渋滞するが、布袋LIVEは男性陣が8割から9割。女子トイレは当然混まない。これは地味に魅力的。
そして、独りで来ている私を見て、お兄ちゃんたちが声をかけてくれるのだ。
「ねーちゃん、どこから来たん?独りで来るとかよほど好きなんやね」
開演までの間に、お菓子をくれたり過去のLIVEのエピソードを教えてくれたり。なんだろう、街中ですれ違ってもきっと会話にはならなそうなお兄ちゃんたちと、会場だときゃっきゃできる。素敵な出会い系である。
そして、開演。盗んだバイクで走り出しそうなお兄ちゃんたちの衝動は、布袋マインドで昇華しながらやりくりしてきた1年分のマグマの沸点を大幅に突破させ、このLIVEの日に爆発する。
会場の電光掲示板(時計と非常口のマーク)のネオンが「ふっ」と消えた瞬間、それは起きる。
まだバンドメンバーも入ってきてないのに、会場は総立ち。そして「ほ・て・い!」コール。
え?え?え?何なんこれ?
初めて行ったときの戸惑いの記憶は棺桶行きが確定しているのだが、それはもう、いい大人が子どもみたいな顔をして絶叫しながら布袋さんのオンステを待つそのエネルギー。地割れしそうな怒号(ほんとにこの表現が一番しっくりくる)のなか、颯爽と現れる長身の布袋寅泰。短足な日本人にこそ似合う「フライングV」が小さく見える。
最新のアルバムと、過去の名曲をとりまぜたセトリでの2時間半はあっという間だったのだが、「ヤバい、これはハマるわ」と、それ以来、よほど予定が合わないとき以外はせっせと通って20数年になる。
そして、今年もツアーの頭のほうで福岡に来てくれたので参戦してきたのだが、
今回のアルバムは「GUITARYTHM Ⅶ」。GUITARとRHYTHMをくっつけた布袋さんの造語なのだけれど、BO∅WY解散後、ソロ活動のなかで何をテーマにするかという苦悩から彼が生み出したコンセプチュアルワールドのひとつ。
もちろんCDを購入し、かつサブスクもお気に入り登録し、カーステで予習の日々を経ての当日だったのだが、この日、布袋さんがとても印象深いことを話してくれた。
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