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「Eastern Culture」ができるまで

G-Unit Chiba

僕は、G-Unit を名乗る前に実は1枚アルバムをリリースしていた。ユニット名は Frozen West 日本語に訳すと「凍てついた西部」とでも言うのか。その後、坂本龍一の B2 Unit がかっこいい!と思って81年に G-Unit という名称に変更するも、ずーっと後になってアメリカでヒップホップユニットが僕になんの挨拶もなく、1ドルも50セントすらも払わずに同じ G-Unit を名乗ったため、どう考えてもマイナーである自分が、G-Unit Chiba に変更することにした。Nirvana UK みたいなパターン。

エレキ自腹なんです。

中学2年の頃、ギターを親にねだった。フォークギター(今はアコギというけど)なら買ってくれると言ってたがエレキはだめだと。
こっちは KISS の洗礼を受けて、これから Deep Purple に進もうという時、当時はそのルートが一般的だった。
1978年でエレキ不良?とかいう時代でもないのに。実際は大きいアンプで鳴らすわけではないので、エレキギターのほうが静かなんだけど。

まあ仕方ないので、それまでおこづかいを貯めた貯金4万円で買える範囲で買ったのがフェルナンデスのストラトなんです。

フェルナンデス

一足先に友達のナオシ(仮名)が黒の(グレコ)レスポールカスタム(3PUなのでピーターフランプトンモデル?)を購入。
じゃあ、俺は黒のストラトだなと。

そのナオシに付き添ってもらって御茶の水へ。当時はエレキギターなんてめったに売ってない、関東地方でギターを買う民はとにかくお茶の水を目指したのだった。楽器屋さんは石橋、下倉、谷口等、メーカーはグレコとヤマハしか知らなかった。
1978年当時では、エレキギターは今(2021年執筆)より高くて40000円はぎりぎり買えるローエンドの価格帯だった。*その数年後トーカイが38000円でストラト出して驚いたのだった。

まずは、自分的に一番有名な石橋楽器に行ってみて、ドキドキしながら長髪のかっこいい店員さんに「黒いストラトを買いたいのですが。」と聞いてみたが、グレコの黒のストラトが無い、ヤマハも無い。落胆して店を出る。

お店を出るとき「よろしくどうぞ!」って店員さんが言う。楽器店のお兄さんみんな「よろしくどうぞ!」って言ってたよね?70年代後期。

次、下倉楽器(多分)に行ってみる、やはり、グレコもヤマハも無い。
店員さんがフェルナンデスを持ってきてくれた。知らないメーカーだけど。もういいやって。それにした。

FST-40、石ロゴと呼ばれるロゴがついたジャンボヘッドのメープル指板の黒のストラト。

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ハードケースと小さいアンプとポリッシュとクロスと調子笛(なぜ音叉じゃないのか?音叉はビギナーには敷居が高いのか?)も買った。

ギター上達せず

全く何も弾けない。どこから手を付ければいいのか。ナオシに直接教えてもらったのは、わずか Smoke On The Water のリフだけ。

家族にギターを弾く人いない。
近所にバンドをやる仲間もいない。
音は全然歪まない。
磨いてみたり。
アームをぎゅんぎゅんしてみたり。
入門の本を買ってきて挑戦してみる。

そう、この本「エレクトリック・ギター教室」だ。まだ実家にある。

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チョーキング、ハンマリングオン、プリングオフっていうのがあるらしい。
その一つ一つ単体では、できるようになった。

でも、当然、コードなんておさえられない。
タブ譜を見てなぞってみたりする程度。Deep PurpleのBurnのソロなんて弾けるわけない。まあ、音がペンペンしているとまずやる気が出ないものだ。ヘッドホンを繋いで最大音量にして歪ませるていうのはやっていたけど。当時はエフェクターも高くて買えなかった。そんなキッズに朗報が、石橋楽器が組み立てキットを出した。ディストーションが2500円だった。MXRと同じ回路らしい。早速買ってはんだ付けして、コテ握っちゃって、やけどして、洗面器に水入れて、手を洗面器に入れて冷やして、痛みが無くなるとはんだ付けして痛くなったら、また洗面器に手を入れて、はんだ付けして、洗面器、はんだ付け、洗面器、はんだ付け、、、、とりあえずギターの音が歪むようにはなった。

こんなロゴが何もないやつ。

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弾ける曲は一曲もないけど、ミッシェル・ポルナレフ→太陽にほえろ→オリビア・ニュートン=ジョン→クイーン→BCR→キッス→ポール・モーリア→ジャパン→ELP→ディープ・パープル→イエス→キング・クリムゾンと音楽にはまりまくっていた年頃。

俗世間では金八先生とか松田聖子だとか大都会とか異邦人とかダンシング・オールナイトとかルビーの指環とかそんな時代。

作品を作りたい欲

もう、まともに努力もしないのに弾けない自分に頭にきて宅録を始めたのが高校一年の頃。

どうしても作品として作ってみたくなって曲を録音した。アルバム1枚分できたのでカセットテープとして(限定1本で自分に)リリースした。

限定一本カセットリリース "Frozen West 1st / Unrest of Evil"

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ジャケットは朱色の折り紙を切り抜いた紙でマスキングしながら砂消し(白と灰色の今でも売ってるやつ)でこすった上にボールペンで文字と山(?)を書き。背の部分はインレタを使った。

石丸電機で1880円で売ってる風にステッカーを貼った。

手書きのインサートが入っている。※自分で入れたんだけど。

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メンバーは5人いるらしい。記憶になかったがそういう体で作ったんだ。グレン・サマーズとジョン・サマーズは、同じサマーズ姓ではあるが血縁関係は無いという設定だったかどうかはわからない。キーボードと特殊効果担当のシルベイン・ジョーンズ、名前かっこいいなあ。特筆すべきことはプロデュースを、あのロン・スミスが担当していることだ。誰だよ!ロン・スミス。

ところで、当時買ったPlayer誌上で八木康夫氏が持っていたPIPCO'Sという連載ページにて紹介されていた Henry Cow / Art Bears の特集は衝撃的だった。自分が見たこともないレコードジャケットや名前、楽しくてきれいなレイアウト、めちゃくちゃ気になった。ここに出てるレコードは最初はこの八木という人が作った架空のレコードなんじゃないかと疑ってしまったくらい完璧な2ページだった。

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その時点ではヘンリーカウの音楽は一切聴いたことなかったけど Unrest of Evil なんてタイトルをつけて(Unrest はヘンリーカウの2nd アルバムのタイトル。"unrest" という単語はこれで初めて知った)、曲名も Eastern Culture だって!ヘンリーカウの Western Culture のパクり。※後年ここにあるレコードはすべて揃えたのは言うまでもない。

音楽はたくさん聴いていたけどコードも知らなきゃペンタトニックスケールも知らない、インプロビゼーションという言葉すら知らなかった。
King Crimson の 「暗黒」のウェットンの歌が終わってからのフリップが単音でテンテテテンと弾く中間部すら実験的でビビってたくらいで、この当時まだ中3の時買った2枚組ベストの「新世代への啓示」(WEA WAY '80で3000円だったやつ。このシリーズお世話になった。)

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しか持ってなかったから「クリムゾンキングの宮殿」収録のインプロビゼーション部がある長いムーンチャイルドは聴いてなかったし。※でも、キング・クリムゾンからインプロビゼーションやアバンギャルドなものに興味を持ち、フールズメイトを買って勉強し、やがてフリージャズにも興味を持つわけで、方向性を確実に植え付けられたんだと思うわけで。

録音方法

この曲は、まずフェルナンデスのストラトモデルをがむしゃらに弾いてディストーションからライン録りした。親に買ってもらったソニーのカセットデッキ TC-K55、

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とラジカセ CFS-V1、※これ姉貴のなんだけど

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を使って録音したはず。

ミキサーは、なかったけどラジカセのマイク端子に突っ込んでミックスされた音がRCA出力で出せてたのか、今では思い出せない。

いったん録音したギターソロ(!)を、秋葉原で安売りしてて買ってみたスプリングリバーブ(AZDEN ECHO MASTER RM-009)

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を通してプレイバックして録音する。リバーブ本体をたたくと爆発音みたいになる。キース・エマーソンがオルガンゆすって出してたやつなんだと思う。

最初に録音したギターソロで自分的に納得できない箇所がいくつかあって、その気にいらない箇所をスプリングの爆音で打ち消すという荒業(爆音上書き法。特許出願中うそ)が発揮されている。この、ECHO MASTERでミキシングもできたのかもしれない。

さらに、ドラムの音が欲しいので昭和時代にどこのサラリーマン家庭にも1台はあった四角い灯油のストーブ、ヤカンを乗っけたり、お餅を焼いたりするやつをカホンみたいにいろんなところを叩いて、もちろん近所に聞こえないように小さな音で叩いてダビングしたりして完成させた。それを、メタルパーカッションとかっこよく呼ぶにはもう数年待たねばなるまい。あっ、演奏するときは火は消すよ。やけどしないように。

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40th Anniversary Edition

で今回は、このアルバムから組曲 Black Rain 邦題「黒い雨」の2曲目 Eastern Culture 邦題「東洋文明」をリマスタリングしてYouTubeに公開した。

40th Anniversary Edition 用にアートワークも一新。

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久しぶりに聴いてみたら、アーミング時にナットできゅいんきゅいんきしむ音がしてカッコいいと思った。読者諸氏もその意見には激しく賛同されると思う、と書かせていただくことを許してほしい。

そのうち全曲公開する予定です。リクエストが殺到する予定なので。

今は自分のバンド Barry Zogon Band のニューアルバムの制作で忙しい。。。はず?



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