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【免疫チェックポイント阻害薬】irAEとその対応💊

こんにちは、やぎざいしです。

免疫チェックポイント阻害薬が使われるようになってから8年。
がん免疫療法に関わる様々なことが分かってきました。

今回は「irAE(免疫関連有害事象)とその対応」についてです。

やぎと抗がん剤の勉強💊


免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とその副作用についての記載で、一般的に正しいとされているものはどれか?


①irAEが出る人の方が、出ない人よりも治療効果が低い傾向にある
②甲状腺機能低下と副腎不全併発の場合、副腎皮質ホルモン補充を優先する
③免疫チェックポイント阻害薬の2剤併用、単剤を比較してもirAE頻度は同等
④ペムブロリズマブは濾胞性リンパ腫が適応癌腫である


8年間で、ICIとirAEの関係も少しずつ明らかになってきたことがあります。回答・解説は以下からどうぞー!






答え:甲状腺機能低下と副腎不全併発の場合、副腎皮質ホルモン補充を優先する

1型糖尿病、甲状腺機能低下症/亢進症、皮膚障害、肝障害、腎障害、心筋炎、副腎不全etc…

irAEは本当に何でも起こり得ます。

その中で甲状腺機能低下症が分かった場合には、必ず「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」も測定して、「副腎不全」の有無を確認する必要があります💊

内分泌器官にはフィードバック機構があるため
✅甲状腺原発なのか?
✅視床下部/下垂体機能異常による続発性なのか?
を確認する必要があるためです。

(下記リンク先に下垂体・副腎・甲状腺の関係図があります)


もし万が一、
✅副腎不全
✅甲状腺機能低下症の併発(もしくは続発)
となっている場合に、甲状腺ホルモンを先に補充してしまうと……

下垂体へのネガティブフィードバックが加速
→副腎不全の増悪(重篤な副腎クリーゼ)
→疲労感の増加、意識障害
を、起こしてしまうことがあります⚠️

そのため、
✅副腎不全
✅甲状腺機能低下症
を併発している場合には必ず「副腎皮質ホルモン(ヒドロコルチゾン)」を先に補充する必要があります。



ICIは固形癌だけでなく、一部の造血器腫瘍にも使います。
実は「古典的ホジキンリンパ腫」では腫瘍細胞にPD-L1が高発現であることが分かっています。

https://cancer.qlife.jp/news/article12215.html


そのため、抗PD-1抗体薬のニボルマブペムブロリズマブが「古典的ホジキンリンパ腫」に有効性が認められて適応を取得し使用される一因になっているのだと思います💊
(濾胞性リンパ腫ではありません)

(オプジーボ:添付文書)

(キイトルーダ:添付文書)


また、一部の癌腫では「Ipi+Nivo(イピリムマブ+ニボルマブ)」のようにICI自体を2剤併用して使用されるレジメンが承認されています。

このようなICI2剤併用レジメンは、ICI単剤レジメンよりも“irAEの発現率が上がる傾向にある“ため注意が必要とされています。
(イメージ的にも何となく増えそうだな、と想像できますよね。)


勿論、irAEのような副作用はできるだけ起きてほしくはありませんが、様々な癌腫でICIとirAEの関係を検討した結果…
✅irAEが発現した人
✅irAEが発現しない人
を比べると、irAEが発現した人の方がICIの奏功率が良い(無増悪生存期間と全生存期間がより長い)とされています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjurol/112/4/112_179/_pdf

すごくざっくりした言い方をすると「副作用が出てしまうくらいに、薬が効いている」という言い方ができるかもしれません。

一概にirAEが起きてしまったことが悪いことばかりではない、ということですね。
(※全ての癌腫の全てのICIレジメンで分かっている訳ではないことに注意)

また、ICIは投与中止後(終了後)も効果が持続することがあるとの報告があります。ただし同様に、ICI投与中止後暫くしてからirAEが発現することもあるため注意が必要です⚠

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