見出し画像

"プロトタイプパートナー"との共創から生まれた巨大な黒いデスク

こんな巨大なデスクを作るなんて思ってませんでした。
そう、あの頃は…

・・・・・・

現在「DESK - METRO ワイドモデル」という特殊なモデルの受注製造販売を実施しています。PREDUCTSストアで7月6日まで受付中です

このnoteでは、PREDUCTSの「プロトタイプパートナー」との取り組みと、その共創によって生まれた「DESK - METRO ワイドモデル」についてご紹介したいと思います。

1. AUXOUTさんのプロフェッショナルな作業環境

AUXOUTさんと言えば、シネマチックなムービー制作で今や海外にも多くのファンがいらっしゃる動画クリエイターです。もちろん私もAUXOUTさんの作品のファンの一人です。

そんなAUXOUTさんと初めて言葉を交わしたのは、2019年のこんなあるシーン。作業環境をTwitterで公開していたAUXOUTさんに、noteで紹介して欲しいと懇願したのでした。あの数々の映像作品がどんな環境から生みだされているのか、興味津津だったのです。

動画の撮影・編集機材に囲まれた、無骨だけど静謐で何か素敵なものが生まれそうな空間。この時から、私はずっとAUXOUTさんのプロフェッショナルさを纏った作業環境に、得も言われぬ魅力を感じてずっとウォッチしてきました。

PREDUCTSの立ち上げをするようになってからは「PREDUCTS DESKがローンチされたら、いつか使ってもらいたい」。そんなことを思いながら、2021年12月のローンチを控えたある日、こんなツイートを目にしました。

何ということでしょう… あの素敵だった作業空間が… とてつもない量のケーブルが垂れ下がっている。。

しかし、これこそPREDUCTS DESKが価値を発揮できる作業環境。そう感じた私はDMでAUXOUTさんにコンタクトを取りました。


2. デスク、180cm 欲しいんですよね

私が敬愛するクリエイターの、AUXOUTさんの作業環境をPREDUCTS DESKで構築したい。AUXOUTさんが「今日はいい仕事したな」と思える瞬間を日々私のプロダクトがある環境で感じてもらえたら、どんなに嬉しいだろう。

そんな妄想を描きながら、ローンチ前のPREDUCTS DESKの全容を紹介しました。そして私の目論見は次の一言で敢え無く撃沈しました。

「デスク、180cm 欲しいんですよね」

確かに… これだけの機材を使いこなし、編集はもちろんスタジオとしての機能も有する環境ならば、当時のPREDUCTS DESKの幅140cmでは狭いはずです。

「デスクを2つ並べてL字にするのはどうでしょうか?」苦し紛れに2台構成を提案してみたりもしましたが、あまり肯定的な反応はいただけませんでした。しかし、まだこれからローンチも控えている段階で、新しいモデルについては考える余裕すらない…

そんな状況だったので、この時は「またお声がけさせてください」とお伝えして終了ましたが、この時は完全にフラれた心境でした。


3. ラックマウントで猛アピール

その後、12月21日に遂にPREDUCTSは運命のローンチの日を迎えます。するとその数日後、AUXOUTさんがこんなコメントをくださっているではありませんか。

なるほど、ラックマウント…
PREDUCTS DESKが誇るDESK MODULAR SYSTEM(特許取得済み)を持ってすれば、ラック機材をレールにマウントすることは実現できそう。

この拡張性を見せつけて、AUXOUTさんをもう一度振り向かせたい…

その一心で友人のGO motion氏の協力を取り付けて、12月30日という年の瀬にGO motion氏秘蔵の数十キロに及ぶDJ セットをPREDUCTSのスタジオに持ち込んでDESKにマウントしました。本当にありがとうございました。

たぶんDJ的にはとても操作しにくい位置にあるミキサー
これだけの機材セットでケーブルがほぼ露出してないのは驚異的

このセットアップをAUXOUTさんにも喜んでもらうことができ、もう一度PREDUCTS DESKを検討していただくことに。


4. デカいデスク、一緒に作ってください

しかし振り向いてもらえたと言っても、幅180cmのデスクは存在しないため、新たに設計する必要があります。

問題はレールの構造です。PREDUCTS DESKのレールは独自規格の専用設計の部品であるため、幅が180cmもあるとレールの長さが足りず広大な余白が出来てしまいます。

幅140cmの裏面

一方でAUXOUTさんとしては「可能な限り端から端までレールを使いたいので目一杯長くしてほしい」とのリクエスト。

レールの長さはどうするのか、もうレールの在庫が無い。これほどの大きさの天板の重量は一体どうなるのか。試作品の運搬方法は。ラックマウントはどうする。

これほどの未解決の課題もある上に、あらゆる映像・編集機材を使いこなすAUXOUTさんなので、恐らく仕様の検討が進んでいく中で今は気付いていない課題が見つかる可能性が高いでしょう。

しかし、映像のプロフェッショナルであるAUXOUTさんの眼を通して、このプロダクトの世界を広げることで、きっとPREDUCTSのメンバーだけでは気が付けない価値に出会えるだろう。そう直感し、PREDUCTSのプロトタイプパートナーとなってほしいとお願いし、一緒に試作を進めていくことになりました。


5. プロトタイプパートナーとは?

ところで、プロトタイプパートナーなのですが、これはPREDUCTS独自の呼称で、以下のように定義しています。

プロトタイプパートナーとは
高い専門性を持つプロフェッショナルと共同でプロトタイプを開発し、その制作の過程を通して得られたフィードバックから製品開発に発展させていく試み。

PREDUCTSは"「いい仕事」を生み出す道具のメーカー" を掲げており、様々な領域の方のお仕事を支える道具作りをしたいと思っています。

しかし、残念ながら私達の知見だけでは多岐にわたる高い専門領域のお仕事をサポートすることはとても難しい。そこで、外部のプロフェッショナルの協力を得ながら製品開発を進めていくために、プロトタイプパートナーの仕組みを設けました。


6. レールが足りないどうしよう

AUXOUTさん仕様デスクの最優先事項は以下の2点です。
・幅180cmの天板
・目一杯端まで広げたレール

前述しましたが、PREDUCTS DESKのレールは独自規格の専用パーツのため、アルミ押出形材を専用で製造しています。

製造したレールのストックは、デスクの初回のロットに既に組み込んでしまっていたため、今回のデスクに使えるものが1本も無い状態でした。

デスク組み込み前の加工中のレール

長さが足りない上に、ストックすらない…
最終的にどうしたかと言うと、2台の完成品を分解し、8本のレールを抜き取り2本で1本に加工し、計4本の長レールとして合体させAUXOUTさんデスクに組み込みました。

(分解した元の天板はその後、新たに量産したレールを組み込み、店舗での展示や耐久試験などの用途に活用しました。)


7. 映像クリエイターのための特別なデスク

そうやって幾つもの課題をクリアしながら、やっと完成したデスクがこちらです。DESK - METROをベースにしているため、天板の仕上げはブラック、小口はウォールナットになっています。

広大な天板は作業スペースと撮影スペースに分けている
他社のラックマウントを加工し、オーディオインターフェースを取付
殆どの機材を天板裏に収納しているため、ケーブルが露出していない

AUXOUTさんのYouTubeでもこちらのプロトタイプをご紹介いただきました。映像クリエイターの愛用のツールの数々も紹介されており、とても見応えがありますので是非ご覧ください。


8. あのデスクいつ出ますか

その後、こちらの動画によってとても大きな反響をいただき「幅180cmはいつ出ますか」「AUXOUTさんの、あのデスクいつ出ますか」などのお問い合わせを非常に多くの方からいただきました。

かなり特殊なサイズであり、今回はAUXOUTさんのための特別なプロトタイプと位置付けていたので、正直なところ量産は検討していませんでした。

予想を超えるリクエストが集まり、想定していなかったニーズが顕在化しました。これは今回のAUXOUTさんとの取り組みを経なければ気付くことが出来なかったでしょう。

なんとか幅180cmのデスクの提供が出来ないか。検討がはじまります。


9. 幅180cmのためのロジスティクス構築

現在、幅120cm、幅140cmは量産品として扱っていますが、幅180cmとなると数々の問題が出てきます。

  1. 資材の調達がたいへん
  2. レールが長すぎて加工できない
  3. 物流倉庫に置けない
  4. 対応する配送会社がない

「2. レール長すぎで加工できない」は、レールが長くなるとそれまでの加工機械では加工できない可能性が出てきます。また量産する長さが変われば、押出の長さや本数なども最適値を探るための再設計が必要になります。

中でも大変なのは「3. 物流倉庫に置けない」「4. 運んでくれる配送会社がない」で、これがまさに突き当たった最大の壁でした。現在契約している物流倉庫と配送会社ともに幅180cmサイズの天板は対象外なのです。

大型家具を扱える倉庫と配送は本当に限られており、また倉庫があったとしてもPREDUCTSストアとWMS(物流システム)の繋ぎ込みや、日々のオペレーションでのコミュニケーション方法の再設計など、クリアしていかなければならない課題が山積みです。

PREDUCTSの加工先の工場のひとつ

そんな制約だらけの条件の中、これらの課題を製造委託メーカー、加工工場、物流倉庫、PREDUCTSと総出で見直しを行い、何とか販売まで漕ぎ着けたのが今回の受注製造販売という方式でのご提供方法です。

7月6日までの期間限定の販売になりますので、ぜひこの機会にご検討ください。


10. 発想の限界を拡張してくれる、プロトタイプパートナーの「眼」

AUXOUTさんには天板のみならず、モジュールについても多くのフィードバックをいただきました。詳しくは割愛しますが、その中には頭を抱えてしまうような難題も数多くありました。

その中の幾つかは、これからPREDUCTSのモジュールの改良として採り入れられる予定です。

PREDUCTSはまだ、はじまって半年しか経っていない新参のメーカーですが、それでも既に多くの意思決定が「効率化」の前提に行われます。

調達のしやすさ、加工の難易度、配送コストなど、気づかぬ間にこれらの条件によって、自ら発想に制約をかけていることを感じました。

しかし、今回のようにプロトタイプパートナーの視点を借りることによって、私達は自らの思考のバイアスに気づき、製造における新たなチャレンジに挑むことが出来ます。

これからも、自らのブランドの狭い世界に閉じこもらずに、多くのプロフェッショナルと協力して、多くの方の課題を解決できるプロダクトを作っていきたいと思っています。


11. 余談 : ラックマウントも作ってます

AUXOUTさんもお使いの、オーディオインターフェースを天板に装着するためのラックマウントですが、現在PREDUCTSの正式なモジュールとしてプロトタイピングを進めています。

1Uサイズと2Uサイズの展開で、またPREDUCTSならではのギミックも検討中です。今後も続々とモジュールを作って参りますので、皆様のお仕事にお役立ていただければと思います。

ではまた!

いいなと思ったら応援しよう!

Go Ando / PREDUCTS / THE GUILD
もし参考になりましたら、「スキ」ボタンをよろしくお願いします。              👇