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私の愛するアウトドアメーカー 「山と道」

私はYAMAPという登山を楽しむ人々のためのサービスのスタートアップに携わっており、プライベートでも普段から山登りを楽しんでいます。

山登りの楽しみの一つに「道具選び」があります。アウトドアで自然を楽しみ、安全に快適に過ごして無事に家に帰るには、適切な道具を持ち運ぶ必要があります。

今回は、私が数年来のファンである「山と道」というアウトドア用品のメーカーについて紹介します。

1. 日本発のアウトドアブランド「山と道」

「山と道」
それってブランド名なの?と思われそうですが、「山と道」は2011年に神奈川県・鎌倉を拠点に創業した国産のガレージブランドのアウトドア・メーカーです。

「山と道」はバックパックなどの道具と、山で着るウェアの大きく2つのプロダクトを中心に展開しています。

数ある「山と道」のプロダクトの中でも、私が特に愛用しているのはバックパックです。山登りをするには自然の中で活動するために必要な道具を背負うためのバックパックが最も重要なギアの一つです。

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どれくらいの距離を移動するか。どのくらい長さの時間を山の中で過ごすかによって必要な容量が変わってくるため、気付けば「山と道」の全てのサイズのバックパックを所有していました。

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では、「山と道」が他のアウトドアブランドと比較してどういう点に特徴があるのかを語る上で外せないのが「ウルトラライト」というコンセプトです。

2. ウルトラライトというスタイル

よく「UL系」とも称されるウルトラライトについて紹介します。

アウトドアでは、自然の中で長い時間を過ごす為の水と食料や、何かが起きたときに緊急避難するための道具を持ち運ぶため、安全マージンをかければかける程、どうしても荷物は重くなります。当然荷物が重くなるほど、持ち運ぶための体力を消耗するので行動量に制限がかかる事になります。

アウトドア大国のアメリカでは数百キロから数千キロにも及ぶ行程の「ロングトレイル」と呼ばれるルートが幾つも存在するのですが、可能な限り荷物を軽量化して、この長大な距離を踏破するために生まれた文化がウルトラライトと言われています。

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ひとつ注意したいのが、例えリスクを増やしてでも荷物を軽くするのがウルトラライトの本筋ではありません。安全を期すためについ冗長になってしまう装備を見直したり、一つの道具を複数の用途に活用する事で荷物を減らす。

経験を通じて山で過ごす事の理解を深め、創意工夫によって持ち物をシンプルにしていく事こそがウルトラライトの本質なのだと思っており、私がウルトラライトというスタイルに惹かれている理由です。

ウルトラライトについてもっと知りたい方は、こちらの書籍がお勧めです。


3. 日本という風土に合った道具づくり

さて、私達が普段生活をしていて街中で目にするアウトドアのブランドと言えば、ほとんどが海外のメーカーではないでしょうか。国産で全国に店舗を展開しているようなアウトドアメーカーはほぼ存在しないのが現状です。

「山と道」を創業した夏目 彰さんは、創業前にアメリカを代表するロングトレイル「ジョン・ミューア・トレイル」を旅する事で、海外のトレイルと日本の山々がいかに異なる環境であるかに気付いたそうです。例えばなだらかな勾配のアメリカのトレイルに比べて、日本の山は岩場や鎖場など手を使って登る急勾配などが多い。

この旅をきっかけに日本の山に合った道具を作ろうと思い立ち「山と道」というガレージブランドが生まれました。

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また「山と道」のギアはウェアも含め、デザインが如何にもスポーツなアウトドア然としておらず、どこか「旅」を感じさせるテイストも好きな点です。

4. はじめての山と道バックパック

さて、この「山と道」のバックパックなんですが、悩ましいのがなかなか入手困難な所です。

ガレージブランドであるために生産量が限られており、常に流通している訳ではありません。年に数回予約販売をするのですが、情報公開後ものの数時間であっという間に売り切れ、また届くのも数ヶ月後です。

「山と道」は定期的に日本全国でポップアップストアを開催しており、そこで一定数の商品を販売しています。そこで、当初あまりに「山と道 MINI」が欲しかった私は、山梨は八ヶ岳で開催されていたポップアップストアに東京から突撃しました。

もちろん事前に電話をして、どれくらい在庫があるかを確認した上で「今から2〜3時間後くらいに行きますが在庫ありますよね?」と念を押し「たぶん大丈夫じゃない?」と言質を取った上で車を飛ばして、はるばる八ヶ岳まで行きました。

そして到着するとバツの悪そうな夏目さん。「ごめん無くなっちゃった。」

何という事でしょう。このままでは帰れない。そう思った私はお目当ての「MINI」よりも一つ上のサイズの「THREE」を買って帰るのでした。これが私の初めての「山と道」です。

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こんなハプニングはありましたが、創業者の夏目さんと色々とプロダクトの思想や背景のお話を伺う事が出来、とても有意義な遠出でした。こうして開発者の方に直接お話が聞けたりするのもガレージブランドの面白さだと思っています。


5. ガレージブランドとは

ここで「ガレージブランド」というアウトドアでよく使われるジャンルについて説明します。

ガレージブランドには明確な定義はありませんが、概ね小規模であったり個人事業としてプロダクトの製造・販売をしているメーカーを指しています。アウトドアにはガレージブランド・メーカーが数多く存在し、それぞれとても個性的な製品開発を行っています。

私は「山と道」以外にもファンのガレージブランドが幾つもあるのですが、グローバルに展開している巨大メーカーの量産製品にはない、ユニークな特徴を備えているのがガレージブランドの面白さです。

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またガレージブランドの特徴として、経営者が登山を愛し自ら山に頻繁に行く方が殆どなのも特徴だと思っています。

6. Patagoniaも元はガレージブランド

アウトドア・ブランドのPatagoniaやThe North Faceは今でこそグローバルのブランドですが、Patagoniaの創業者イヴォン・シュイナードは元々クライマーで、自分のためのクライミング用具を自作したのがPatagoniaの始まりです。

The North Faceの創業者ダグラス・トンプキンズも12歳からのクライマーでイヴォン・シュイナードと共に6ヶ月間に渡るカリフォルニア→パタゴニアへの冒険をしたストーリーは有名です。

「山と道」も今年で創業から10年が経ち、とても質の高いメディアの運営やプロダクト開発のための「山と道研究所」を昨年オープンしたりと、既にガレージブランドというカテゴリからは外れているかもしれません。それはファンとしてはとても嬉しい事です。


7. プロダクトはコミュニティであり文化

今年の9月の終わりに「山と道」が岩手山の麓で開催した「山道祭」に参加してきました。日本全国から「山と道」のファンが集まり、キャンプをしながら盆踊りや屋外サウナを楽しみつつ夜通し飲み食いするというイベントです。

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普段山に登っているだけでは出会わなかったであろう、四国や東北など全国の登山を愛する方々と語る事が出来ました。

「どこの山が良い」「次はどの山に登りたい」「どんな道具を使ってる」などと言った他愛の無い会話ばかりですが、「山と道」を中心としたコミュニティの熱さを感じたイベントでした。

「山と道」はこのようなステートメントを掲げています。

私たちはハイカーです。

道具を通して、より深くハイキングを知りたい。
私たちがハイキングを通じて感じた、
本当に必要な道具を形にしていく。

私たちはハイキング文化の発展と共に
成長していく山道具のメイカーです。

私たち消費者はプロダクトに対して利便性を求め、それに対して対価を支払う関係です。しかしプロダクトが生まれる背景には作り手の思いや、目指している未来やビジョンがあります。

単にプロダクトやサービスを消費するだけでなく、その背後の文脈を理解し企業活動を支える事で、私たちはそのブランドのコミュニティの一部になる事が出来ます。

日本からより多くの文化を生み出し、世界に発信していきたい。私が日本のプロダクトやサービスを応援するのはそういう理由です。


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このnoteは、LINE証券と開催する「 #わたしが応援する会社 」コンテストの参考作品として、主催者の依頼により書いたものです。
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