見出し画像

起業したら必要な社会保険の手続き~社会保険・労働保険の成立手続きをわかりやすく解説~

ここではいよいよ実際の手続きの詳細についてご紹介していきます。
今回は社会保険と労働保険(労災保険、雇用保険)の加入手続きを分かりやすく解説します。


社会保険に加入しなければならない会社


社会保険(健康保険・厚生年金保険)には強制適用といって、加入が義務付けられている会社があります。
以下の項目に当てはまる会社は社会保険に加入しなければなりません。

法人の場合

  • 役員一人だが、役員報酬が発生している

  • 正社員が 1人以上いる

  • 就業時間が正社員の3/4以上のパートタイマー・アルバイトが一人以上いる


個人事業の場合

常時5人以上社員を雇っている

ただし、サービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)や農業、漁業等は義務ではありませんが、任意で加入することはできます。



健康保険・厚生年金保険 新規適用届


社会保険(健康保険・厚生年金保険)に会社が加入するための手続きです。
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届もあわせて届出をします。

提出期限
社会保険への加入義務の事実発生から5日以内

提出先
会社の管轄の年金事務所、または管轄の事務センター
登記上の住所と、実際に事業を行っている住所が違う場合は、実際に事業を行っている住所の管轄の年金事務所、または事務センターに提出します。

添付書類

  • 法人の場合:登記簿謄本

登記簿謄本の住所と、実際に事業を行っている住所が違う場合は賃貸借契約書のコピー等、所在地の分かるものを追加で添付します。

  • 個人事業の場合:事業主の世帯全員の住民票



労働保険に加入しなければならない会社


労働保険のうち労災保険は、法人、個人事業共に社員を一人でも雇ったら加入が義務になります。
これはパート、アルバイト、日雇い等の雇用形態や勤務時間は問いませんが、原則役員やその家族、個人事業主は加入ができません。

雇用保険は、以下のすべて項目に当てはまる社員を一人でも雇ったら加入が義務になります。

  • 週に20時間以上働くこと

  • 31日以上働くことが決まっていること

  • 契約期間がない

  • 契約期間が31日以上

  • 契約期間に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない

  • 契約に更新規定はないが、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある


労働保険には事業の種類によって一元適用事業と二元適用事業に分かれます。
一元適用事業、二元適用事業によって手続き方法も異なります。

労働保険 一元適用事業とは


農林漁業、建設業以外の多くの会社が一元適用事業にあたります。
労災保険料と雇用保険料の計算方法が同じで、賃金の総額にそれぞれ労災保険料率、雇用保険料率をかけます。計算した労災保険料、雇用保険料の申告や納付はまとめて行うことができます。

労働保険 二元適用事業とは


農林漁業、建設業は二元適用事業にあたります。
労災保険と雇用保険の適用を区別しなければならないので、労災保険料、雇用保険料の申告や納付はそれぞれ別に行います。

例えば建設業の場合、元請の事業所がまとめて労災保険料を支払うので、下請の事業所は事務所の分の労災保険料と全体の雇用保険料のみを支払ったり、労災保険料自体の支払いがなく、雇用保険料のみ支払ったり、様々なパターンがあります。

労働保険料を申告するとき原則的には、下請け事業者も含めた賃金総額を元に労働保険料を算出しますが、賃金総額を把握することが難しい場合には、工事請負金額に労務比率を乗じて計算する方法も認められています

雇用保険料は一元適用事業と同様に、賃金の総額に雇用保険料率をかけて計算します。

このように二元適用事業所は労災保険料と雇用保険料の計算方法が違うため、それぞれ別に申告、納付をします。



労働保険 保険関係成立届


労働保険保険関係成立届とは、労働保険に会社が加入するための手続きです。

労働保険の継続事業とは、終了の予定がない事業のことを指します。建設業等、事業の期間が決まっている事業は有期事業になります。事業の規模により、一括で届出を行う一括有期事業と、それぞれの事業ごとに届出を行う単独有期事業に分かれます。

提出期限
保険関係が成立した日(社員を雇った日等)の翌日から起算して10日以内。
尚、「社員を雇った日」とは最初の出勤日などではなく、あくまで雇用契約を結んだ日です。

提出先
会社の管轄の労働基準監督署
この管轄は実際に社員を雇う事業所の住所によります。

添付書類

  • 法人の場合:登記簿謄本

  • 個人事業の場合:事業主の住民票



労働保険 概算保険料申告書


労働保険料(労災保険料、雇用保険料)を申告し、納付する手続きです。
労働保険が成立した日から次の年度末(3月)までの労働保険料を概算で支払います。
翌年度の6月頃に労働保険の年度更新手続きで、実際にかかった労働保険料との清算を行います。

一元適用事業所は労災保険料と雇用保険料を一つの申告書にまとめて申告します。
二元適用事業所は労災保険料と雇用保険料をそれぞれ別に申告します。

提出期限
保険関係が成立した日の翌日から50日以内

提出先

  • 一元適用事業所

管轄の労働基準監督署、労働局、銀行等のいずれか

  • 二元適用事業所

労災保険料:管轄の労働基準監督署、労働局、銀行等のいずれか
雇用保険料:管轄の労働局か銀行等

労働保険の概算保険料の計算方法


労災保険料の計算方法

一元適用事業の労災保険料の概算保険料は、労災保険に加入する社員の、次の3月までに支払う概算の賃金の合計額に、労災保険料率をかけて算出します。

労災保険料率は業種により異なります。

厚生労働省:令和4年度の労災保険率について

労災保険料の計算例

  • 「その他各種事業(保険料率3/1000)」の会社が

  • 4月1日に

  • 月額20万円支給する社員を

  • 3人雇った場合

保険料算定基礎額 20万円×3人×12か月=720万円
労災保険料 720万円×3/1000=21,600円

雇用保険料の計算方法

雇用保険料の概算保険料は、雇用保険に加入する社員の、次の3月までに支払う概算の賃金の合計額に、雇用保険料率をかけて算出します。
社員負担分と、会社負担分では料率が異なります。
また、一般の事業、建設の事業、農林水産・清酒製造の事業の3つに分けられ料率が設定されています。

厚生労働省:雇用保険料率について


雇用保険料の計算例

  • 「一般の事業(保険料率15.5/1000)」の会社が

  • 4月1日に

  • 月額20万円支給する社員を

  • 3人雇った場合

保険料算定基礎額 20万円×3人×12か月=720万円
雇用保険料 720万円×15.5/1000=111,600円


労災保険料21,600円と、雇用保険料111,600円を合わせた133,200円を、労働保険の概算保険料として納付します。



雇用保険適用事業所設置届


雇用保険適用事業所設置届は、雇用保険に会社が加入するための手続きです。
雇用保険被保険者資格取得届とあわせて届出をします。

提出期限
雇用保険を設置する日(社員を雇った日等)の翌日から起算して10日以内。
尚、「社員を雇った日」とは最初の出勤日などではなく、あくまで雇用契約を結んだ日です。

提出先
管轄のハローワーク
この管轄は実際に社員を雇う事業所の住所によります。

添付書類
登記簿謄本(個人事業の場合は賃貸借契約書や事業許可書)、労働保険 保険関係成立届の通知書



まとめ


以上が社会保険、労働保険(労災保険、雇用保険)の会社への加入手続きについてでした。
次回は社員を雇った時の手続きについて紹介します。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?