起業したら必要な社会保険の手続き~社員を雇ったら:入社手続きの解説編~
今回は会社側が社員を雇ったら、やらなければならない社会保険、労働保険の手続きについてのご紹介です。必要書類や、いつまでに手続きをしなければならないかなどを分かりやすく解説します。
雇用形態別 入社したら必要な手続き
正社員、パートタイマー、アルバイトなど、雇用形態によって以下のように必要な手続きが変わります。
社会保険の加入人数が100人以下の会社の場合です。
正社員(70歳未満)
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
健康保険 被扶養者(異動)届
(扶養家族がいる場合のみ)雇用保険被保険者資格取得届
パートタイマー・アルバイトで、週の労働時間が正社員の3/4以上の人(70歳未満)
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
健康保険 被扶養者(異動)届
(扶養家族がいる場合のみ)雇用保険被保険者資格取得届
パートタイマー・アルバイトで、週の労働時間が正社員の3/4未満、20時間以上の人
雇用保険被保険者資格取得届
パートタイマー・アルバイトで、週に20時間未満の勤務時間の人
手続きなし
社会保険に入っている社員が101人以上いる会社では、以下の要件全てに当てはまる人は社会保険の加入の対象となるので、健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届を届け出ます。
一週間の所定労働時間が20時間以上
2箇月以上継続して雇用する見込みである
毎月の給与が8.8万円以上
学生でない
正社員、パートタイマー、アルバイトは問いません。家族の扶養に入っている被扶養者、ダブルワークの人も対象になります。
2024年10月1日以降は、社会保険に入っている社員が51人以上いる会社は上記と同様に短時間労働者でも社会保険の加入対象になります。
社会保険の適用拡大についてはこちらで詳しくご紹介しています。
手続きのために会社が社員に提出してもらうもの
各手続きのために、次の情報を社員に提出してもらいましょう。
雇用保険に加入する人
マイナンバー
雇用保険 被保険者番号
雇用保険被保険者番号が分からない場合は、前職の会社名を資格取得届に記載することで手続きができます。
社会保険に加入する人
基礎年金番号
家族を扶養に入れる人
家族の住所、生年月日などの基本情報
家族のマイナンバー
続柄の確認できるもの(戸籍謄本や住民票)
家族の収入額が確認できる書類
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
社員が社会保険に加入するための手続きです。この手続きによって保険証が発行されます。
健康保険・厚生年金保険の加入対象者
法人の役員の場合
常勤であること
報酬が発生していること
社員の場合
正社員
正社員以外のパートタイマー、アルバイト
社会保険の加入人数が100人以下の会社のパートタイマー、アルバイト
次の2つの条件の両方を満たす人が社会保険への加入対象です。
1日または1週間の所定労働時間が正社員の3/4以上
1ヶ月の所定労働日数が正社員の3/4以上
例えば、正社員の所定労働時間が
【1日8時間×週5日勤務=週40時間】
の場合
【1日6時間以上、週30時間以上】働くパートタイマー、アルバイトは社会保険に加入しなければなりません。
社会保険の加入人数が101人以上の会社のパートタイマー、アルバイト
次のすべての条件を満たす人が社会保険への加入対象です
一週間の所定労働時間が20時間以上
2箇月以上継続して雇用する見込みである
毎月の給与が8.8万円以上
学生でない
提出先
管轄の年金事務所もしくは年金事務センター
提出期限
入社から5日以内
添付書類
原則なし
標準報酬月額
社会保険の手続きでは社員の給与(報酬月額)を届け出て、その額によって標準報酬月額というものが決定します。
報酬月額の対象になる報酬は次の表の通りです
対象となる報酬をすべて合算した金額を、報酬月額として届け出ます。
保険料額は都道府県によって変わります。
協会けんぽ:都道府県毎の保険料額表
標準報酬月額の等級により毎月支払う健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料が決まります。
例えば東京都内の会社で、
基本給 200,000円
資格手当 30,000円
通勤費 20,000円
計 250,000円
の社員の場合、保険料額表に当てはめると
健康保険の等級 20
厚生年金の等級 17
標準報酬月額 260,000円
となります。
等級260,000円の欄の健康保険料、厚生年金保険料額を毎月の給与から徴収します。
健康保険 被扶養者(異動)届
家族を社員の扶養に入れる手続きです。家族の分の保険証が発行されます。
健康保険 被扶養者になる条件
社員の家族を扶養に入れる場合は、その家族が以下のすべてに当てはまることが条件です。
日本国内に住んでいること
被保険者(社員)により生計を維持されていること
次の収入要件に当てはまること
年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)
同居の場合 収入が扶養者(社員)の収入の半分未満
別居の場合 収入が扶養者(社員)からの仕送り額未満
同居の条件について
同居している必要がない人
配偶者
子、孫および兄弟姉妹
父母、祖父母などの直系尊属
同居していることが必須な人
上記以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
内縁関係の配偶者の父母およびその子供
提出先
管轄の年金事務所もしくは年金事務センター
提出期限
入社から5日以内
添付書類
マイナンバーの提出がない場合
家族の戸籍謄本か、社員が世帯主となっている住民票
パートやアルバイトで家族に給与収入がある場合
直近の給与明細など、給与の額が分かるもののコピー
家族が年金受給者の場合
現在の受給額の分かるもののコピー
家族が失業手当や出産手当金など、非課税の収入があった場合
受取額の分かるもののコピー
自営による収入や不動産収入がある場合
直近の確定申告のコピー
扶養に入れる別居家族に仕送りをしている場合
通帳のコピーなど、送金の事実と額が分かるもの
内縁関係の家族の場合
両人の戸籍謄(抄)本と、家族の世帯全員の住民票
雇用保険被保険者資格取得届
社員が雇用保険に加入するための手続きです。
雇用保険の加入対象者
以下の条件全てに当てはまる人は雇用保険に加入しなければなりません。
週に20時間以上働く
31日以上働くことが決まっている
契約期間の定めがない
契約期間が31日以上
契約期間に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない
契約に更新規定はないが、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある
提出先
管轄のハローワーク
提出期限
加入する日の属する月の翌月10日
添付書類
原則なし
まとめ
社員を雇ったら以上のような手続きが発生します。
それぞれの手続きにおいて必要な情報や提出先を確認し、手続漏れのないようにしましょう。
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