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久しぶりの句会

30年ぶりくらいに、句会に、参加した。
その個人的な体験について、書いてみようと思う。

句会。自分の作った俳句を披露しあう会である。
一般の方々が想像する光景は、ある程度想像がつく。和室の上座にきちんと正座しているのは、偉い俳人の先生。当然、地味だが高そうな和服姿。左右には年配の直弟子たちが厳しい顔で居並んでいる。しわぶきさえもはばかられる雰囲気で……
ご安心ください。そういう句会も世の中にはあるのかもしれないが、今回参加したのはもっとずっとカジュアルな句会だった。

Twitterでフォローしている、ネットショップ「句具」さん主催の句会である。

投句料は無料。経験不問。初心者OK。一応兼題(俳句のお題ですね)はあるものの、当季雑詠(つまり、春か夏の季語が含まれていればテーマは自由ということ)2句まで……というゆるい句会である。

夏雲システムを利用。投句から被講まで、ネット上で完結する。
詳しくは、句具さんのnoteを見てください。


投句=自分の句を投稿

参加希望のメールを送ると、句会ページのURLが送られてきた。
このページに、投句する。つまり、自作の俳句を書きこむ。締め切りまでは、何度でも修正や削除ができる。

わたしが投句したのは、下記の2句。

しらさぎの歩める池や山のかげ

白鷺の句は、以前訪れた勧修寺(京都市山科区)で見た光景を句にしたものだった。
境内に大きな池がある。白鷺だの青鷺だのが、餌を求めて歩いている。
その光景が美しくて、あれこれ言葉を考えて、作った句だった。

柏餅おんなひとりの家なれど

柏餅の句は、あっという間にできた句だった。
スーパーで何気なく買い求めた柏餅。本来、端午の節句に男の子の健やかな成長を祝う食べものである、ということに、買ってから気づいたのだった。

選句

従来の紙ベースの句会であれば、投句者を隠すために別の紙に清記して、出席者の間で回覧する。
字にコンプレックスのある(つまり字が汚い)自分にとっては、苦痛な時間だった。

夏雲システムでは、清記する必要はない。投句の締め切りが来たら、画面が変わる。投句された俳句たちが、作者を伏せた状態で、ずらりと並ぶ。
その数、なんと181句!
数日の間に、181句に目を通して、特選1句・並選5句を選ぶのだ。できれば、簡単な評もつけて。

たいへんだが、楽しい作業だった。
作者がどんな人か、まったく分からない。どう読んでいいのか分からない句もある。でも、こんな季語もあるのか、こうきたか、という驚きが幾つもあった。

期間内に、何とか選んだ。
今回の句会では、特選・並選以外に予選(いくつでも)も選べる。初心者向け仕様なのだと思う。ありがたかった。選んだ句には、短い評(コメント)もつけた。こんな評でいいのかな、と思いつつ。
選ばなかった句にも評がつけられるのだが、今回は、その余裕がなかった。

被講=結果発表

従来の句会では、ここで「被講」という儀式がある。
参加者が自分が選んだ句を読み上げる。作者は名乗りを上げる。批評や感想もここで話し合われる。
点盛りのある句会では、点数の計算が入る。

夏雲システムの場合は、そんな儀式はない。
選句締め切りを過ぎると、あっという間に、結果が集計されて発表される。
俳句も、評も、名前(俳号)しか表示されない。

わたしの句は……
意外にも、柏餅の句の方が、評価が高いようだった。「特選」に選んでくださった方も何人もいらした。
逆に、白鷺の句は、受けがよくないようだった。
そういえば、大学時代の俳句ゼミでもそうだった。言葉を練って練って作り上げた句より、句会ぎりぎりになってあわてて作った句の方が評判がよかった。
締め切りに追い込まれると瞬発力を発揮するタイプなのだろうか。進歩がない。

句具の中の人も参加していた。
感心したのは、中の人が、181句全部に対して丁寧にコメントしていたことだった。しかも、ポジティヴなコメント。俳句と俳号しか知らない相手に対してなかなかできることではない、と思う。

句会を終えて

ひとこと。楽しかった。

リアル句会であれば、まず自分に合いそうな句会を探すところから始めなければならない。
人見知りなので、そういうのは、どうしても抵抗がある。
俳句雑誌をめくれば結社の案内広告はいくらでも見つかるが、今のところ、そこまで俳句に人生をかけるつもりはない。
それに、このご時世、大勢で集まるのに抵抗がある人も多いだろう。

その点、夏雲システムを使ったネット句会は、気楽に参加できる。
パソコンでもスマートフォンでも、ネットに繋がって日本語文字の入力ができて俳句が作れればOK。
テレビ会議システムを用いた句会と違って、顔出し、声出しの必要もない。

機会があれば、また参加してみたいと思う。

句具のみなさん、点を入れてくださったり評を寄せてくださったりしたみなさん、ありがとうございました。

最後にひとこと。
句会で点が入らない=よくない句というわけではないことは覚えておきたい。
もちろん、独りよがりになって訳の分からない句になってしまうことはある。でも、その句の価値は、作者であるあなたには分かっているはずだ。

所詮、ゲームなんです。気楽にいきましょう。

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