ソーンダーズ3連発

「人生で大切なたったひとつのこと」
「短くて恐ろしいフィルの時代」
「十二月の十日」
と、3冊連続で読みました。

ジョージ・ソーンダーズという作家を実は知りませんでした。
きっかけは「短くて恐ろしいフィルの時代」が「理想の本棚」という番組で紹介されていた、
と翻訳者岸本さんがツイッター(Xとか言いたくない)で紹介しているのをみたこと、岸本さんの訳ならば読んでみようと思いました。
元々岸本さんのエッセイが大好きで、
その岸本さんが最初から噴き出したと書かれていたので、
コメディ的におもしろいのかも?と興味を持ったのです。

3連発の最初に読んだのは「人生で大切なたったひとつのこと」。卒業式で学生に送ったスピーチを元に書かれた短めのエッセイで、とても心温まる内容です。原文と翻訳が併記されているので行ったり来たりしながら読むと理解がより深まる感じ。
作者が実際に経験した奇天烈な経験をユーモアを交えて紹介しながら、「大切なたったひとつのこと」を実行するむずかしさと大切さがやさしい言葉で語られています。作者のやさしさや思いやりがふんだんに散りばめられていて、思わず2度繰り返して読んじゃいました。

と、作者の人生哲学をインプットしたところで、次に「短くて恐ろしいフィルの時代」を読みました。
これは、怖かった。
岸本さんが噴き出したといっていたのがこの本なのですが、ぬるま湯嗜好の私にはちょっと刺激的で途中から辛くなりました。それでも最後まで読めたのは、翻訳の言葉のチョイスがおもしろかったから。登場人物が段々壊れていって、言葉が覚束なくなるところとか、ほんと見事でした。

もしやソーンダーズさん、かなりブラックユーモア好きなのでは…とビビりながら最後に読んだのが「十二月の十日」。

これも、怖かった。
軽妙で読みやすい文体とは裏腹に内容やテーマがなかなかグロテスクで私には刺激が強く、短編集なのですがいくつかの話はサラサラと流し読みするほかありませんでした、怖くて。すごい想像力で創られた物語がすごい描写力で語られるので、読んでいると勝手に脳内で映像化がはじまってしまうんですよね。で、その脳内映像によって怖さが増して、本も正視できなくなってくるという。ぬるま湯系の私では太刀打ちできなかったけど、普通の人なら、きっとすごくおもしろく読めるんだろうなと思いました。

ネタバレになってないことを祈りつつ。
おしまい。


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