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ナッジで伝わるプレゼンに#11:審査員は何を考える?

私はプレゼンの審査員をする機会も増えてきました。他人を評価するということは、明確な基準と説明責任が求められます。
低い評価をする場合でも、「最初の問と結論にズレがあり、伝わりづらいことから減点しました。この改善のためには、問と結論を書き出して、きちんと対応しているのか確認し、さらには予行演習でチェックしてもらうことをお勧めします」といった風に、具体的コメントをします。後日、その人のプレゼンが高い評価を受けるようになった、という話を聞くと、心から嬉しくなります。

一方、評価が低いままの人もいます。ひょっとして本人も気づかない根深い癖によって、実力よりも低く見られている可能性があります。行動経済学の観点から見た、プレゼン大会での減点ポイントと改善策をお話しします。

第3位 「自信はありませんが」から始める

プレゼン大会なのに「自信がありませんが」という言葉から始める人、実に多いのです。聞いている側はこれを「練習不足」「魅力不足」というネガティブワードとして受け止めます。審査員は、「自信がないと認めているものに、高い評価を付けるわけにはいかない」という感情がどうしても浮かんできます。その結果、審査員が厳しそうな表情をするので、発表者は本当に自信がなくなるーーこれは「予言の自己実現」という心理現象です。
もしもあなたが「自信ありません」と言いたくなったら、「緊張していますが、練習の全てを出せるように頑張ります」とポジティブワードに置き換えてみてはいかがでしょうか?

第2位 正論だが役に立たないメッセージ

「肉体と精神のバランスが必要」という類の「正論」は、相手も当然知っています。いわゆる「正論だが役に立たないメッセージ」です。
プレゼンは、相手にメッセージを前向きに受け取ってもらう舞台です。「どうしてその考えに至ったのか」「それをどう役立てるのか」というストーリー展開がないまま、当たり前の正論が出てくると、聞く側はいろんな不安が浮かびます。
「何か重要なキーワードを聞き漏らしたのかな?」「話し手は、”聞いている人は、肉体は100で精神は0、と極端に考えている”という前提で話しているのかな?」と。
思考の迷路にハマっていくうちに、聞き手は疲れます。疲れた時は、ネガティブで低い評価になりやすいのです。
プレゼンの鉄則として、「聞き手を疲れさせてはいけない」があります。そのために、結論は具体的にし、結論に向けて一本の矢印を引くようなストーリー展開がオススメです。「肉体と精神のバランスが大切」よりは「思っている以上に、心は軽視されている。メンタルが疲れていると、労働生産性は〇%落ちる。だから、体を休める以上に、意識的に心を休める時間を確保するべき」と具体的にした方が、ずっと聞く人の感情に訴えるでしょう。

第1位 美しくない終わり方

人は最後の出来事が最も記憶に残る心理傾向(ピークエンドの法則)があります。終了時間が来ても、話が終わらないと、聞く人には「時間を守らない、ルーズな人」という記憶が残ります。その意味で、1秒たりともオーバーしてはいけないのです。ピークエンドの法則の特徴は、最後の印象が全体の記憶を上書きしてしまうことです。それゆえに、最後は美しく終える必要があります。
仮に終了1分前になって、「全部話し終えることが難しい」と分かった時点で、やることはただ1つ。途中を飛ばして、フィナーレの準備に入ることです。そして、時間ピッタリに最高の形で着地することで、プレゼンの評価は高まる可能性が高まります。

この3つから示唆されるように、プレゼンは最初と最後が大切です。「最初と最後が見事だと、相手は途中経過をほとんど気にしない」という心理傾向を活用しない手はありません。
今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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