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ギターの構造の基礎 ~定義編~

こんにちは!GOです!
今回はギターデザイナーかつ製作者かつ演奏者である僕から見た「ギターの構造」についてのお話となります。

ギターの構造を考えていく上で、この記事では「ギターがギターとして存在できる定義」を考えていこうと思います。

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定義編
そもそもギターとは?
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ギターは弦楽器の一種で、フレットのついた指板、6本の(あるいは12本の)弦をそなえ、指やピックで(弦を)弾(はじ)いたり掻き降ろすことで演奏するものである。
学問的には弦楽器の中の「リュート属」に分類される。
(Wikipediaより)
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では、リュート属 とは?
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リュートはアラブ文化圏のウード(アラビア語: العود‎ al-ʿūd)および中国や日本の琵琶と近縁の楽器であり、いずれも中央アジアの「バルバット」(ペルシア語: بربات‎ barbat)を祖先とする楽器であると考えられている。
リュートやウードの名前は「木」を意味するアラビア語の"al‘ud"(アル・ウード)に由来するとされてきた。
(Wikipediaより)
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これらの情報を踏まえ、「ギター」と分類できる(認識できる)最小構成の楽器は、

・フレットの付いた指板を持つ
・弦が6本
・指やピックで弾(はじ)いたり掻き降ろせる

という要素を持つ楽器であると言える。
この要素は、身の回りある一般的に「ギター」と認識している楽器全てに当てはまる。

上の3点を満たせばギターになるので、構造としてはかなり遊び放題なのだ。

※「木製である」という要素も定義となりそうだが、あくまで「ギター」そのものの要素ではなく、「リュート」の名称の由来のため除外している。

※ 一般的に弦が4本の「テナーギター」というものも存在するが、「ベースギター」のように音域により別楽器としての認識となっているので除外している。

定義を疑う

「いやちょっと!僕のギターは弦が7本あるけどこれはどうなの!?」
「僕のはフレットレスなんだけどコレはギターじゃないって言うのかい???」
もしかすると、こう感じた方もいると思う。このことについても考えていきたい。

1つ目の「フレットの付いた指板を持つ」

これはつまり「ギターにはフレットが必須」
と言っているのだが、フレットの無いフレットレスギターだって今日には存在している。
しかし、ギターのルーツである「リュート」という楽器はギターに派生する段階では既にフレットを有しているため、フレットレスギターはギターではなく「ギターにヴァイオリン属の  " フレットを有しない指板 " という要素を組み合わせた別楽器」という解釈になる。

2つ目の「弦が6本」

これはつまり「弦が5本以下もしくは7本以上の楽器はギターではない」
と言っている。非常に炎上しそうである。

まずは「弦が5本以下」について考えていこう。
これは、1500年〜1600年頃の現在のギターのルーツである4コース(複弦を含む開放弦が4音階)の「ルネサンスギター」、1600年~1750年頃の5コースの「バロックギター」などが考え方としては当てはまる。前者は、元々6~8コースあったルネサンスリュートを"より簡単に"演奏できるように4コースの楽器として枝分かれしたのではないか と考えられている。(コレは現在のウクレレの起源でもある)
しかし、これらは現在のギターの要素が確立(1800年~1850年頃)される前の古楽器であるため、「現在のギターの定義」としては適切でない。

そして、「弦が7本以上」について。
これも歴史的観点で考えていくと「6本の単弦を有する楽器」として現在のギターの原形が確立された後、「低音域への音域の拡張」を目的として発現したものなので、「ギターを"含んでいる"楽器」という解釈になる。
ルーツであるリュートも同じく「6~8コースのルネサンスリュート」から音域拡張の方向に進化をして「8~13コースのバロックリュート」となり、現在でもそれぞれ「ルネサンスリュート」「バロックリュート」と 別の楽器として認識されているため、「6弦ギター」と「7弦ギター」も同様に切り分けて認識するのが一般的ではないかと考える。
また、ここで3つ目に定義づけた「掻き降ろす」という表現に注目したいのだが、単に掻き下ろすと当然全ての弦を掻いてしまう。弦が7本以上存在してしまうと、含まれている6弦部分 と 6弦のギター では、全く同一の演奏は困難なのは明らか。
このように、6弦のギター と 7(~)弦ギターの1~6弦部分 は同等ではない為、7本以上の弦を有するものは元来の「ギター」ではなく、「(6弦の)ギターと親戚関係にある「多弦ギター」という " 別の " 楽器」という解釈になる。

3つ目の「指やピックで弾(はじ)いたり掻き降ろせる」

この定義は、疑う前に「つまりどういう楽器がこれを満たすのか」について補足をしていく。
「指やピックで弾(はじ)いたり掻き降ろせる」つまり、
「指やピックで弾(はじ)いたり掻き降ろすことを前提として形作られている楽器。」ということになる。
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具体的に「弦の配置」を例に考えていく。
この定義の前半部分、" 指やピックで弾(はじ)く " には、弦に対して容易に指とピックでアクセスできる配置に存在しなければならない。
また、それぞれの弦の距離が近すぎると(単音の発音の際)この奏法は困難になる為、定義に満たない。
後半部分、" 掻き下ろす " という奏法を行うには、弦が水平方向に配置され、同方向かつ垂直方向に連続して6本の弦を配置することが必要。
また、それぞれの弦の距離が離れすぎていると「掻き降ろす」という表現とはならない為、定義に満たない。

といった感じである。
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この定義に満たない楽器、となると
「指やピックで弾(はじ)いたり掻き降ろすことが困難」
というモノになるのだが、果たしてその楽器は「ギター」と認識できる構造だろうか?
おそらく、(本質的な)ギターとしてはかなり違和感を覚える構造となってしまうことが容易に想像できるので、この辺りで割愛させて頂く。

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以上、僕の考える ギターの構造の基礎 ~定義編~ でした。
「そこまで考える?」と思われそうな内容でしたが、コレはギターのデザインを起こす上でもかなり重要な要素となります。
今後のギターの構造やデザイン系の記事においては、この記事の内容が前提となる面もあるので、興味のある方は是非押さえておいて頂ければなと思います。
今日における「ギター」という楽器は(とてつもない量の)様々な要素で構成されているので、今後の記事にて一つ一つ皆さんと一緒に見て行けたらなと思います!

ではでは〜

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