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女と男

               執筆者;Asano
 1917年4月ニューヨークで開催された「ニューヨーク・アンデパンダン」展に、匿名で出品された作品が問題になりました。『泉』とタイトルが付けられたその作品は、セラミック製の男性用小便器に「R.Mutt」という署名と年号が書かれただけのものだったのです。
出品したのはマルセル・デュシャン。ニューヨークの著名な芸術家で、この展覧会の委員でもありました。この展覧会では、手数料さえ払えば誰でも作品を出品できましたが、他の委員たちの猛反発にあい、結局展示されることはなく、叩き壊されたとも言われています。
2004年12月、デュシャンの『泉』は、英国の美術界の専門家500人が選んだ20世紀で最も影響力のある作品に選ばれます。(第2位はピカソの《アヴィニョンの娘たち》(1907年)) 
私たちにとっては便器ですが、鳥や虫たちには、水が湧き出る泉。『泉』というタイトルひとつで、囚われたものの見方を打ち破ります。私たちは、それぞれの価値基準の上に生活しているのですが、こうした見方を「とらわれた限定的なもの」と、教えてくれるのも仏教です。(デュシャンの墓碑には「されど、死ぬのはいつも他人」と記されているのも、一休さんの逸話につながるものを感じます)
『泉』は、近代美術から現代美術、視覚的な芸術から観念的な芸術へと価値観が移行するターニングポイントとなる作品。100年後の今日、様々な価値基準が実生活の中で具体的に変わりつつあることを感じます。


同時配信 御坊さんの四コマは、こちらから↓

https://twitter.com/gobousun/status/1380068158933852162?s=21

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