ポスターの悲劇
そろそろ多感な時期、小学6年生の春のことだった。
毎年5月10日~16日、野鳥保護の大切さを広く全国に発信する目的で開催される愛鳥週間。
小中学生のころ応募された方もいるのではと思うが、ポスターコンクールもある。
母校では、全員強制ではなく希望者を募る形だった。
わたしはきっと面倒だったとかの理由で応募しなかったが、クラス3分の2は応募していたのではないかと思う。
‐‐‐‐‐
提出日の朝、机の上には各々の自信作が並ぶ。
愛鳥週間の4文字がゴシック体や明朝体で器用に書かれているものや、カラフルな鳥が描かれている作品など。
すると担任が
作品の裏には、こんな具合に必要事項を記入してくださいと、例とともに白いチョークで板書していた。
黒板を見て、すこし嫌な予感がした。でも6年生だしとも思った。
みんな書き終えたころ「では後の席の人から順番に前に渡してください」の声で、ポスターが回収されはじめた。
絵を見られるのは恥ずかしいのだろう、裏面を表にして回収されている。
その最中、わたしの隣の席の女子が「○○さんが近藤真彦って書いてる!」と叫んだ。
次の瞬間、クラス中がどよめいた。
近藤真彦と書いてしまった女子が明るい性格の持ち主で、冗談だったとか逆ギレできるくらい気が強ければ救いはあったのかもしれない。
しかし、それとは反対の大人しくあまり目立たないタイプだったので目も当てられない。
(女同士の友情とかないものなのか)
恐る恐る降り向くと、彼女は顔を赤くして静かに涙を流していた。
‐‐‐‐‐
記憶はそこまでで、その後のことは、実はあまり覚えていない。
たぶん、正義感の強い誰かが「そんなこと言うなよ」とか担任が何らかの言葉で制したのだろう。
‐‐‐‐‐
以来、近藤真彦と言えば、ハイティーン・ブギとかカーレーサーとか金屏風など、さまざまな連想をされると思うのだが、わたしは愛鳥週間のポスターのイメージなのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?