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生後間もない息子の日仏パスポート取得

今年の4月末に生まれた息子の日仏両方のパスポート取得物語。


パスポートは原則2つ必要

日本は多重国籍が認められていない(そこについては色々言いたいことはあるが今回は割愛)。しかし20歳までは重国籍が認められている。重国籍の人が海外旅行する際は、基本的に全てのパスポートを携帯して移動しなければいいけないらしい。

なので2歳半で日本からフランスに引っ越して来た娘はパスポートを2つ持っている。

4月末にフランスで息子を産んだ。6月後半に家族揃って一時帰国。ということで遅くとも6月の頭頃には2つのパスポートを取得していたい!というのが今回の話の始まり。

フランスパスポート発行に最低6週間はかかる

まずは、今住んでいるフランスのパスポート。
住んでいる国のパスポート発行なんてちょろいもん、と思う私は日本人。だって日本なら、書類さえそろっていれば旅券センターが開いている好きな時に行って申請し、1週間後には出来上がる。役所に戸籍を取りに行く日と申請の日を一緒にすれば、社会人であれば2日間仕事の都合をつければ余裕である。旅券センターが遠方にある人はもしかしてもう少しハードルが高いかもしれないけど(私は旅券センターのある名古屋市に住んでいた)。

しかし、在外邦人の頼れる味方、先人たちのブログとTwitterで情報収集してみると、どうやら最近(コロナ禍以降)はパスポート申請から入手まで2か月かかるとな。2か月!?!?

その噂を聞き、4月末が出産予定で本人不在では何もできないだろう、と思いつつ偵察のために市役所にふらっと行ってみた(フランスは市役所でパスポート発行する)。2月末のできごと。
そしたら案の定、申請から発行までは6-8週間かかりますよ、と。4月末に産んですぐ申請して6-8週間。6月22日の日本への出発まで一か八かみたいな感じ?と思ったらそうは問屋が卸さない。
「産まれてなくても申請日の予約は今からでも取れるから取ってく?最短で
5月31日の予約ができるよ」と。は?申請できるのが5月末?いやもう絶対無理じゃんフランスのパスポート手に入らないじゃん。

結局その後、日本のパスポートは間に合うことが分かり&産まれてすぐなど事情があれば1つの国のパスポートだけでも行き来できる、と経験者にtwitterで教えてもらったので、まあしゃーない、となった。

どちみちフランスパスポートは今後も必要なので今回の一時帰国に間に合わなくてもとりあえず予約。

申請には本人を連れてくるようにと言われ生後1ヶ月間もない息子を連れて予約した日に市役所で申請。フランスのパスポートなしで日本に行ってフランスに帰ってくるんですけど、ビザのレセピセみたいに「今申請中です」みたいな証明もらえないん?と聞いたらそんなものはないらしい。。
まあしゃーない。家族手帳(日本でいう戸籍みたいな役割を果たす。息子はフランス人だということが証明できる)を持ってフランスに入国すればいいかな、と。

日本から帰って来た8月頭にはもちろんパスポートは出来上がっていて取りに行った。受け取りは予約不要らしい。市役所方面に用事があった夫が、ちょっとついでに行ってみる、と。その日、息子は行けなかったので「は?!受け取りに本人いなきゃもらえないに決まってるじゃん(日本はそう)」と私は思ったのだけど、まあ他の用事もあるしとりあえず行ってみる、と。
そしたら本人なしでも受け取って来た。どうやら申請時に本人いたからいいらしい。

ちなみにフランスの名誉のために言っておくと、コロナ前はもっと早くパスポート発行してもらえたらしい。

あぁやっぱり日本は丁寧親切

住んでいない国のパスポートを発行するには時間がかかるのは当然。ということで調査開始当初は日本のパスポート発行の方が時間がかかるだろうと思い、こちらの方を心配していた。

パスポート申請から発行までは日本国内と同じ1週間。しかし!申請には戸籍謄本が必要。戸籍謄本は日本から取り寄せればいいので、親などにお願いして送ってもらえばいい。郵送の時間考えて+1週間。だが!息子は産まれてすぐ。海外に住んでいると大使館に出生届を出す→日本に共有されるという手順が基本の流れなのだが、戸籍に反映されるまで1-2ヶ月かかる。日本で本籍地に出生届をだした場合は2-3日で戸籍に反映される。

さらにさらに、在仏日本大使館に出生届を出すには、フランスに出生届を提出した際に受け取る出生証明書も一緒に提出しなければいけない。なので生まれた日にアクションが起こせるわけではない。

やばーい、ギリギリ?フランスのパスポートが絶望的な今、日本のパスポートがギリギリとなると帰国がギャンブルになるのでどうにかせねば。ということで大使館にメールで問い合わせた。なんとか早める方法はないですか?と。

そしたら(毎度感動するのだけど)翌日には返事が来た。すごい。
在仏日本大使館に出生届を出す以外に、本籍地に直接出生届を出す方法もある、と。そうすると出生届受理から2-3日で戸籍に反映される。
ちなみに名古屋市のどの区役所に行ってもいいのだけど、2-3日で戸籍に反映されるのは、自分の本籍地の区役所に行った場合のみ。違う区役所に提出すると1-2週間かかるらしい。

ということで、念のために本籍地の区役所にメールで問い合わせた。これまた翌日に理路整然とした分かりやすいメールが返ってきて感動した(フランス住むと日本の役所の仕事にいちいち感動する)。

出生届を提出できる場所

出生届を提出できるのは出生地、子の本籍地、届出人(私)の所在地または在外の大使、公使、もしくは領事のいずれか。日本に住んでいない私は、子の本籍地(つまり私の本籍地)であれば日本の役所に提出できる。便利なことに両親が私の本籍地に住んでいる。ので、出生届を両親に郵送し、両親に提出してもらうことに。

出生届はダウンロードしたものを利用可能

出生届は全国共通。ただし行政区によってイラストが入っていたりとオリジナルなものが各地で出回っている。私は名古屋市に提出するのだけど、別に他の県のものをダウンロードして使ってもいいらしい。
せっかくなので紹介された名古屋市のとある区のものを市のHPからダウンロードした(自分の住んでいた&両親の住んでいる区のものはHPになし)。要用紙は必ずA3、にじみの少ない「顔料インク」でなるべく印刷するようにと言われた。

出産前に書類準備

生まれる前に出生届を書き(出生時間や名前以外)、フランスの市役所でもらう出生証明書の日本語翻訳も出生日時など除いて記入。出生届はもしミスがあったときのことも考え、自分の署名だけした予備も作成。

事前に両親に段取りを伝え準備完了。

スケジュールはこんな感じだった

4月25日 息子誕生。日本の出生届を埋める
4月26日 市役所が病院に来て出生届を受理(便利なんですフランス。でも産んだ翌日に名前決まってないと提出できない。フランスは出生後4日以内に提出しなければいけない)。
4月27日 役所の人が病院に出生証明書を持ってくる。証明書の和訳フォーマットの残りの部分を埋める
4月28日 夫に頼んでEMS発送
5月8日 両親にEMSが届く(日本がGWだったから多分通常より届くの遅かった)
5月9日 両親が区役所に出生届提出
5月12日 戸籍謄本ゲット→EMS発送。戸籍のスキャンも送ってもらったので、そのスキャンを利用して日本パスポートオンライン申請開始。その後何度か追加書類の依頼があったので追加で提出(追加というより申請フォーマットにアップロードできなかった、全員必須ではない書類。元々必要な書類だとは知っていた)
5月17日 日本からのEMS到着
5月20日 戸籍謄本を在仏日本大使館に発送
5月23日 大使館に戸籍が到着。申請受理との連絡あり
5月24日 パスポート発行の連絡あり
6月6日 パリの大使館に出向きパスポート受け取り

つまり生まれてから1ヶ月で発行された。GW挟まなければ多分もっと早かったと思う。結果的に6月22日の出国に余裕で間に合った、ブラボー!

オンラインで申請できるなんてとても便利。戸籍謄本写しの原本が手元になくてもスキャンさえあればオンライン申請は開始できるのでそれも助かった(もちろん写しの原本が大使館に到着しないことには発行手続きは始まらないが)。

0歳のパスポート写真は意外と緩い?

皆さんご存知の通り、パスポートの写真は色々厳しい。0歳児、どうするか。写真館での撮影も考えたが、まずはスマホでチャレンジしてみることにした。日本の申請はオンラインなので、AIで自動的に写真の可否が判断される。何度トライしてもNGだったら写真館に行けばいいや、と。

息子をグレー無地のシーツを敷いたベッドに寝かせ真上を向かせる。これは意外と難しくなかった。私のスマホケースが赤ちゃんの目を引く赤、黒、白の模様だからだ。でも本当に正面で両耳が見える角度を向かせるのが難しかった。何枚か写真を撮り、パスポート用に顔の位置と画像サイズを調整するアプリを使って画像処理。

オンラインのパスポート申請でアップロードしたところNGが出た。顔が正面向いていない、と。

正面向いてないからNG

続いて、表情があまり気に入ってないけどちゃんと正面を向いてるものに変更。そしたらまたNG。背景がダメだ、と。

背景がダメ

ということで、背景を合成処理するアプリを使用。無料アプリなので輪郭部分の処理が雑でめっちゃめっちゃ合成感丸出し。しかし、それをアップロードしたところOKが出た。

OKが出た合成感モリモリの写真

後日フランスパスポート申請の時に窓口の人に、合成背景のもの(3番目の写真)とグレーシーツ背景(2番目の写真)のものを見せて、どっちが使えるか?と聞いたら、合成背景の方なら使える、シーツの方はNGだと言われた。日本と同じだ。やっぱり背景に影が入っているからだろうな。フランスの提出用は印刷したものが必要だったので近所の写真プリントマシンできれいに印刷した。担当者曰く、まだ生後半年も経っていないからこのクオリティでも今回は特別OK。普通ならNGだけどね、と言われた。

パスポート受け取りパリ弾丸日帰り旅

予定通り申請から1週間で日本のパスポートが完成。パリに行く段取りをする。
我が街からパリまでは電車2本を乗り継ぐ。約3時間半の旅。家から駅、乗り換えの待ち時間、モンパルナス駅(パリの電車の駅。東京駅的なところ)から大使館までの移動を考えると片道4時間半~5時間。
つらいのが生後2か月の本人を連れてかなければいけないところ。幸い夫が一緒に来れたので2人で世話をしながら電車旅。息子は特に泣き叫ぶこともなく「子連れ旅」という点では問題なくパリまで行ってこれたのだが、実は電車の問題がたくさんだった。

地元~ボルドーまでの電車が5分ほど遅れた。乗り換え時間は10分。電車の多少の遅れは想定内。フランスで乗り換え10分のスケジュールを組むのはギャンブル。しかし、この電車の次は1時間半後。どうしても日帰りしたい私たちはばくちを打つしかなかった。
乗り換え時間5分なら、日本だと走って間に合うケースが多い。アプリや車内放送で言われたプラットフォームにダッシュすればいい。しかしここはフランス。車内で言われたプラットフォームと駅に降り立って電光掲示盤に書かれているパリ行のプラットフォームが違った。もちろん戸惑う。そりゃ駅の掲示板信じるよね、現場だもん。で、そこに走ったら違う。車内アナウンスの方が正しかった。焦ってまたダッシュ。そしたら目の前で電車が出発してしまった。到着電車の遅れを理由に、乗り継ぎの人のために待っててくれるというシステムはきっとフランスにはないのだろう、よく知らないけど。

パリ行き電車は指定券。プラットフォームに立つ駅員さんに、どうすりゃいいのさーーー!と問いただしたら、チケット売ってる窓口で話しつけてきて、と。日本で言うみどりの窓口みたいなところ。

んで言ったら自動ドアが閉じている。そこには張り紙が。「ストのため今日の営業は12時から」。は?まあいい、ストはいい、慣れた、権利だものストは。しかし、同じ会社で働いていて同じ駅で働いているプラットフォームの係員が、駅の窓口が昼まで閉じている情報、共有されていないのなんで?

とりあえず1時間半後の電車までの時間をつぶすために駅の前のカフェへ。で、戻ってきたら窓口の扉の前に温厚で親切そうなニコニコした係員のおじさんが立っていた。事情を話し、どうしたらいいか聞いたら「中入れてあげるからこっちきて」と横の扉から窓口に入れてくれた。中は数組のお客さんがいた。どうやら午前中完全に閉めているとやばいということになったのか?おじさんが事情を聞いて中に通すに値する十分な理由がある人だけ入れてくれてるらしい。

逃した電車の1時間半後の電車に乗ればいいと思っていたけどどうやらそれは鈍行っぽいやつでそれよりもさらに1時間後に乗った方が早くパリに着く。とのことでまた駅で時間をつぶす……動きたい盛りの2-3歳児ではなく0歳児で逆によかったと思う。

このことにより、大使館の午前の部に滑り込んでパスポート受け取り、ちょっとパリのしゃれた店でランチでもという元々の計画は幻となった。ボルドーの駅でまた時間を潰す。

窓口の親切なお姉さんが取り直してくれた電車でパリへ。昼ご飯はボルドーにあるチェーン店パン屋で買った割高なサンドイッチを車内で。なんも楽しくない。

大使館付近の公園で30分ほど時間をつぶし、午後の部の開始少し前に列に並ぶ。スムーズに入館し、スムーズにパスポートを受け取りミッション完了。ここはフランスだが日本大使館の中は日本。予定した通りに物事が進み感動した。

元々予定していた16時ごろの電車に乗るべくモンパルナス駅に戻る。駅の近くにあるスーパーで夕食用のお惣菜を購入。さすがパリ。全国チェーンのスーパーで、同じお店がうちの近くにもあるのだけど置いている食べ物のバラエティが豊かでアジアンとかたくさんあった。感激。

総菜ぶら下げてプラットフォームに向かう。予定時刻に電車がプラットフォームに来ない。20分弱待ち電車に乗り込む。走行中に「遅れてはいたが、挽回した」とのアナウンス。ほっと胸をなでおろす。結局10分ほど遅れた。乗り換え時間は13分。まあ間に合わないな(でも走ろうかな)と思いながらも乗り換え列車の案内アナウンスを車内で聞く。そしたら私たちが乗る予定にしていた電車(予約不要・座席指定なしの在来線)のアナウンスがない。存在しないことになっていた。アプリで検索してみてももう出てこない(事前に検索した乗り換え案内にはあったのに。結果をスクショしているから間違いない)。

まあどちみち間に合わなかったししゃーないと思いながらも不思議で仕方ない。またまたボルドーで1時間ほど時間を潰し帰路へ……

ズッコケそうになったフランス帰国

国籍を複数持つ人は全ての国のパスポートを携帯して他国を行き来するのが基本というのは冒頭で言った通り。でも今回息子は日本のものしかない。日本人であることを証明して日本に入るのは簡単。問題はフランスに帰ってくるとき。

非フランス人というかシェンゲンの国籍保有者でなければ、普通は3ヶ月以内にフランスを脱出する飛行機または何かしらのチケットを見せる必要がある。それか長期滞在ビザ。しかし息子にビザなんてものはない。なぜならフランス人だから。
なのでパスポートはないけどフランス人であるということを証明するために家族手帳を使うことに。この家族手帳、前述のように立ち位置は日本の戸籍に似ている。

ところが、乗り換えのパリでの入国審査では航空券見せろとも、ビザ見せろとも帰りの航空券出せとも言われなかった。「娘さんは日仏両方のパスポート持ってるのに何で息子さんはフランスだけなの?」と聞かれ「フランスのパスポートは申請したけど間に合わなかった」といったら「あ、そうなんだ」で終わり。なので家族手帳の出番はなかった。いいの?そんなんで。

ちなみに私は配偶者という立場で長期滞在ビザを持っている。去年フランスに引っ越して来た時、在日フランス大使館で発行してもらったビザで入国。今年の5月が期限だったので3月にビザ更新の申請していて、次のビザの受け取り待ち中だった。申請期間中に滞在許可を証明できるレセピセというものを持っているので、有効ビザは持っていないが滞在許可の証明はできる。ちなみに期限の切れたビザはパスポートに印刷してある。

なので期限切れてるけどどうなってるの?と聞かれると思っていた。だからもちろんレセピセも一緒に持ち歩いていた。が!息子だけでなく私もなーんにも聞かれなかった……ビザ切れてるんだけど、帰りの航空券なしでフランスに入国できることを証明する適切な書類提示していないけど。いいの?ていうかビザの期限確認したんかな、あのおっさん……

国境緩すぎないか?!

2歳半でフランスに引っ越して来た娘のパスポート

娘は2歳半でフランスに引っ越して来た。
日本のパスポートは簡単。七五三撮影とかで子どもの撮影に慣れている近所のスタジオでパスポート用証明写真を撮ってもらい、区役所で戸籍をゲットし私が一人で旅券センターに申請に。1週間後に出来上がったものを娘を連れて取りに行った(日本は受け取りに本人立ち合いが必要)。パスポートのサインは「母代筆」とし私のサインを書く。

フランスのパスポートは、大使館の予約をオンラインで取り東京へ。申請は本人が立ち会わなければいけないので娘も連れて(ついでに同じ日に私のビザ申請もねじ込んだ)。

後日できあがりの連絡が来て夫が受け取りに出向いた。もちろんオンラインで受け取り面談の予約を入れてから。受け取りは本人不要だった、と今書いていて思い出した。そうかフランスは、申請は本人必要、受け取りは本人いなくてもいい、ということなんだなきっと。

ちなみに私のビザは、パスポートに印刷されてレターパックで手元に届いた。

以上出産直後のパスポート取得話でした。娘のフランスパスポートは4年後、息子は5年後。でもパリに子連れで行くのは一仕事だから、4年後に娘と一緒に息子も更新することにしよう。そしてその時は1-2泊してパリでお上りさん観光したいなぁ。


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