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勝手にアナリストレポート Vol.1015:チェンジホールディングス(3962 TSE-P 時価総額1,099億円)

今回の勝手にアナリストレポートではチェンジホールディングス(3962)を取り上げます。どんな会社かご存じですか?まだまだ知っている方が少ないかもしれませんが、グループ企業がふるさと納税プラットフォーム最大手の「ふるさとチョイス」を運営していたり、ファミレスの配膳ロボットビジネスを展開していたり、今期はイー・ガーディアンを子会社化したり、意外に皆さんの回りに浸透していたりする企業です。
非常にユニークな会社ではあるのですが、ふるさと納税事業の収益インパクトが大きすぎて、株価はふるさと納税のブーム化で大きく上昇し、楽天ポイントやPayPayポイントによるプロモーション攻勢によってシェアも株価も落ちるという状況に陥っています。今期会社計画の過達確度は高いものの、中計最終年度の来期計画がかなりアグレッシブな数値目標になっていることから、株価はなかなか上昇しないという状況です。
こんな時だからこそ、その先を見たいところです。列挙した懸念材料は顕在化したタイミングで材料出尽くし、過去のものになります。賢者はその先に何が見えるか今から考えていきたいですね(見えるか見えないかは個々人の判断です)。

チェンジホールディングス(3962)

24年3月期3Q決算概況
M&A戦略を評価される企業群への仲間入りに期待

<キーメッセージ>
24年3月期3Qの営業利益は実質前年同期比+91%で着地。通期会社計画に対する進捗率は94%となったことから、今後は25年3月期以降の成長可能性に注目が向かうことになろう。

中期経営計画最終年度となる25年3月期の営業利益計画200億円の達成確度は決して高くない。そのため、通期決算開示に向け、株価はボラタイルな動きとなる可能性もあろう。こんな時こそ表面的な数値の達成具合に一喜一憂せず、中長期で何を成し遂げようとしているのかをしっかりと見極めるべきと考える。

同社はここまでM&Aを上手に活用し、事業規模を拡大してきた。型化に向けた屏風絵も映し出している。今後、ロールアップM&Aがシステマティックに行われることが認知されていけば、付与されるバリュエーション目線も変化していくだろう。

<サマリー>

チェンジホールディングス(以下、「同社」)の24年3月期3Q累計営業利益は実質前年同期比+91%の103億円となり、通期会社計画に対する進捗率は94%に到達した。今期会社計画の達成確度が非常に高くなったことで、株式市場は25年3月期会社計画(営業利益200億円)の達成確度に注目していくことになろう。
新規連結化の通年寄与を考慮しても、25年3月期会社計画は挑戦的な水準に映る。オーガニックグロースに加え、更なるM&Aの実行可能性も高いことから、現段階で達成不可能と考える必要はない。しかし、同社は中期計画を数字ありきでは考えていないとの見解を示していることから、我々も単に数値の達成具合にのみ着目するのでなく、中期的にどのような課題解決を行おうとしているのか、何を成し遂げようとしているのか、に目を向けていきたいところである。
中期経営計画「DJ2」において、同社はM&A等を通じた事業ポートフォリオの拡大に一定の成果を出してきた。しかし、領域を広げ過ぎたとも考えている。今後は資本効率や投資効率をしっかりと考えたうえで、領域を絞り込んだ展開に注力していくことを考えている。公共DXで培ったネットワークを活用し、DX領域でのアップセルおよび地方創生と、人材不足解消に向けたソリューションの提供が継続的な成長ドライバーとなっていくだろう。そこにサイバーセキュリティ領域が新たな成長エンジンとして加わることに期待していきたい。その際、M&Aが重要な成長ファクターとなるが、これが戦略的に型化されていくと、ロールアップM&A先進企業のようにバリュエーションへの織り込みが可能になってくる。
良くも悪くも同社株価はふるさと納税市場動向の影響を大きく受けてきた。営業利益の過半をパブリテック事業が占めている現状では致し方ない面もあるが、パブリテック事業を基点に生み出される新たな成長の芽に目を向けていくことが重要になってくると考える。


<決算概況>


<会社計画>

<キーポイント>

24年3月期3Q累計は、前年同期比86%増収、98%営業増益と、9か月累計として過去最高の売上高・段階利益を計上した。3Qから新規連結されたイー・ギャランティの寄与を除いた実質ベースでも68%増収、91%営業増益となっており、既存事業もしっかりと伸長したことが確認できた。通期会社計画(売上高340億円、営業利益110億円)に対する進捗率は、売上高85%、営業利益94%。
中期経営計画「DJ2」の最終年度となる25年3月期の数値目標は、売上高780億円、営業利益200億円。イー・ガーディアン(24年9月期計画:売上高133億円、営業利益19.4億円)、デジタルアーツコンサルティング(23年3月期実績:売上高1,663百万円、営業利益25百万円)の新規連結化を考慮しても、チャレンジングな目標のように思われる。ただし、同社は中期計画が数字ありきではないとの見解を示していることから、今後は次期中期経営計画「DJ3」においてどのような成長軌道を描こうとしているのかに着目していくべきだろう。短期的には計画に対する未達や下方修正が株価に影響を与えるかもしれないが、そのような時こそ同社が中期で成し遂げようとしていることに目を向けていきたい。
「DJ2」では「Local」をキーワードに「DX」×「地方創生」に取り組み、M&A等を通じ事業ポートフォリオを拡大させてきた。その結果、毎期約50億円の税引前利益を生み出すまで成長してきた一方、事業領域を広げ過ぎたと同社は考えている。そのため、今後は「DJ2」最終年度となる25年3月期の総仕上げに向けた事業再編に着手し、次期中期経営計画「DJ3」へと繋がる収益基盤の確立に注力する考えを示している。具体的には、(1)民間DX領域と人材領域の垣根がなくなってきたことから、今後は人材不足解消領域として常態化する人手不足に総合的に対応、(2)地方創生領域については、資本効率を意識した選択と集中に着手(エネルギー事業の縮小、観光事業への注力、など)、(3)公共DX領域については、ふるさとチョイスを通じて形成された全自治体ネットワークを活用したガバメイツの全業務網羅へのチャレンジ、(4)サイバーセキュリティ領域に積極投資していくことでデジタル赤字抑制を目指す、が再編の方向性となるようである。とくにサイバーセキュリティ領域においては、イー・ガーディアンの子会社化に続き、IT戦略コンサルティングおよび情報セキュリティコンサルティング等を手掛けるデジタルアーツコンサルティングの子会社化(所有割合91.86%)、サイバーセキュリティ関連事業を集約する役回りとなる中間持株会社サイリーグホールディングス設立を行ったほか、今後もM&A実施等を通じた事業規模拡大を示唆しており、同事業領域に対する積極的な姿勢が感じられる。
我々は同社のコアコンピタンスがDXコンサルティング力と自治体との密接な関係性にあると考えている。今後の事業展開も、コアコンピタンスをベースにアセットライトな形(プラットフォーム化など)での拡大を目指していくことを想定している。その一環としてロールアップM&Aが更に活用されていく可能性が高いだろう。株式市場でM&A戦略がしっかりとバリュエーションに織り込まれている企業は、エムスリー(2413)、SHIFT(3697)、GENDA(9166)、ヨシムラ・フード・ホールディングス(2884)、などまだ多くはない。評価されるか否かの分水嶺は、M&A戦略が仕組化されているか否か、成長ストーリーに準じているか、にあると我々は考えている。同社決算説明資料にはM&A戦略の屏風絵が描かれていることから、今後市場からきちんと評価されるようになっていくことに期待したい。



将来戦略が鮮明となりつつあるものの、足元では営業利益の大半をパブリテック事業が占めていることも事実である。近年は競合プラットフォームのポイント攻勢によって市場シェアを落としていたことが株価軟調に繋がったと我々は理解している。同社も一時ポイント還元を行うなどしたものの、総務省が制定するルールから逸脱すべきではないという経営判断と経済合理性から、現在ポイントを使ったマーケティングは行っていない。市場シェアは23%(23年度WARC推計)まで低下したものの、今後は提供返礼品の魅力を高めるなどプラットフォームの価値向上等を図ることで一定のシェア確保は可能となるだろう。今期からは競合と比較して半分程度だったテイクレートの引き上げも行ったことから、安定収益源としての存在がこれ以上脅かされるようなことにはならないだろう。同社株価はふるさと納税のブームによって上昇し、競合出現によるシェア低下によって下落した。今後は同事業を通じた全国自治体との密接な関係性と打ち出の小槌を元手にした様々な事業が生み出す収益拡大にしっかりと目を向けていくべきと考える。


ディスクレーマー
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