勝手にアナリストレポート Vol.1028:アイスタイル(3660 TSE-P 時価総額372億円)
久しぶりの更新です。前回同様アイスタイルです。他社も仕掛で抱えている状態ですが、決算コメント優先です。
アイスタイルにとっては仕切り直しの中計初年度、大切な最初の3か月の通信簿です。ご覧ください。
25/6期1Q決算から見える景色~再拡大に向けしっかりとした一歩を踏み出した
<キーメッセージ>
25/6期1Qの営業利益は前年同期比+107%と好調な滑り出し。会社計画、当社予想共に上回っての着地であることから、通期会社計画の達成確度は高まったと言えよう。
マーケティング支援事業およびリテール事業が計画を上回って進捗したことに違和感はない。一方、我々が懸念していたグローバル事業できちんと営業赤字幅が縮小してきたことは評価したい。引き続き中国越境卸や香港店舗では厳しい状況が続いており、予断を許さない状況にはあるものの、戦略的に注力した韓国でのメディアサービスが伸長したことはポジティブな印象である。
足下業績が好調とは言え、あくまでも今期は中期計画達成に向け基盤をしっかりと作り上げていく期であることに変わりない。24年10月には、統合データ基盤(CDP:Customer Data Platform)の整備および次世代口コミ分析ツールの本格開発に着手している。今期中にCDPに基づいたデータソリューションや口コミAI分析のローンチを予定していることから、その進捗および来期以降の業績に与えるインパクトをしっかりと注視していきたい。
<サマリー>
25/6期1Qは前年同期比21%増収、同107%営業増益となり、会社計画(非開示)を上回っての着地。マーケティング支援事業、リテール事業などの国内事業が全体業績を牽引。我々が期初段階で懸念していたグローバル事業も韓国でのメディアサービスが好調に推移したことを背景に赤字幅を縮小しての着地となった。
25/6期1Q実績を踏まえると、通期会社計画の達成確度は高まったと言えよう。ただし、会社計画を若干下回ることを予想する当社予想は今回据え置く。今期は新規3店舗の開業(うち、@cosme STORE札幌ステラプレイス店は24年10月に開業済)、既存店5店舗の改装を予定していることから、その立ち上がりを見極めたいこと、12月に開催されるリテールイベント「@cosme BEAUTY DAY」のアップサイドポテンシャルを見極めたい(プロモーションとして1.5億円を投下予定)というのが据え置きの理由。
来期に向けては統合データ基盤の整備および次世代口コミ分析ツールの開発進捗に注目していきたい。メディア・EC・店舗のソリューションを通じてブランドとユーザーの満足度を最大化できるのは現状同社しかないと我々は考えている。決して簡単なサービス開発ではないが、これこそが同社がずっと思い描いてきた世界観であり、AIの民主化も相まって実現可能性は以前にも増して高まっているのではないだろうか。今期ローンチを目指し開発には着手しており、この進捗が今後同社のバリュエーションに大きな影響を与えるのではないだろうか。
<本文>
25/6期1Qは、売上高15,038百万円(前年同期比+21%)、営業利益762百万円(同+107%)。非開示ながら同社会社計画は上回って着地したとのこと。WARC予想に対しても上回っており、中期計画初年度最初の3か月は順調なスタートを切ったと言えよう。マーケティング支援事業、リテール事業などの国内事業が全体業績を牽引。我々が懸念していたグローバル事業においても赤字幅が大きく縮小しており、ポジティブな印象である。
各セグメントでの売上・利益については以下の通り。
マーケティング支援事業は、売上高2,636百万円(前年同期比+16%)、セグメント利益662百万円(同+37%)。同社は21年よりメディア・EC・店舗を連携したソリューションの提供を強化してきたが、その提供価値が徐々にブランドに浸透してきたことにより取引単価が上昇していきていると同社は分析している。ソリューション価値を伝えるための人材育成・組織強化も奏功してきているようである。この動きは一過性のものではなく継続性のある動きである可能性が高いことから、取引ブランドの新規開拓や取引単価上昇を通じたオーガニック成長の蓋然性は高まっていると考えて良いだろう。この事業は限界利益率も高いため、増収効果が大きい点を認識しておきたい。なお、今期より@cosme商標を利用しているグループ会社からアイスタイル本社へライセンス料を徴収することになったことも同セグメントの収益性を引き上げる要因となっている(全体業績での影響はなし)。
リテール事業は、売上高11,372百万円(前年同期比+29%)、セグメント利益714百万円(同+38%)。店舗売上は前年同期比+29%を確保した。既存店がしっかりと増収となったうえ、23年9月に開業した大型旗艦店@cosme OSAKAがフルに寄与したこともあり、直営店月間売上高(㎡あたり)が前年同期237千円、前四半期297千円から306千円へと伸長したことが奏功した。EC売上についても、リテールイベントやプラットフォーム連携を通じた顧客獲得・リテンション向上によって同+29%となった。なお、リテールイベント等の開催される2Q、4Qと比較すると、1Q、3QのEC売上は前四半期比でマイナスになりやすい点はしっかりと覚えておきたい。同社はかねてよりインバウンド関連企業としてみられることが多く、実際インバウンド向け売上高が増収要因の一因とはなっている。ただし、同事業のオーガニックグロースはあくまでもメディア・EC・店舗を連携したソリューション価値に連動していることを改めて認識しておきたい。なお、1Qリテール事業売上高に占めるインバウンド比率は15%弱と推計される。
グローバル事業は、売上高999百万円(前年同期比-9%)、セグメント利益-14百万円。我々は期初段階で同事業の改善を懐疑的に見ていたが、良い意味で裏切る格好となった。引き続き中国越境卸や香港店舗では厳しい環境が続いたことから減収となったものの、日本進出支援などBtoBサービスに注力した結果、韓国でのメディア事業が伸長し、赤字幅を縮小させた。
1Qの実績に鑑みると、同社会社計画の達成確度は高まったと言えよう。ただし、12月にはリテールイベント「@cosme BEAUTY DAY」の開催も控えていること、リテール事業での開業・改装がまだ予定されていること、を踏まえ、現段階ではWARC予想を据え置くこととする。
来期以降の業績拡大に向けた布石としては、統合データ基盤の整備および次世代口コミ分析ツールについて、トレジャーデータ(株)、(株)ベルシステム24、(株)シンカーとアライアンスを組んでの開発に24年10月から着手している。業績寄与は26/6期以降となるが、これまで蓄積してきたユーザーの購買データとメディア内でのアクションデータを連携することでメディア・EC・店舗の弾み車を大きく回すことができるのは同社にしかできないことであり、今後の展開には期待したい。
<ディスクレーマー>
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