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ちょい足しってなんだよ

今日の晩御飯は昨日買ってきたチキンラーメンにした。

チキンラーメンは良い。安く、美味しく、調理が容易で、なんならそのままバリバリと食べることもできる。
生活保護を受給し始める前の頃も、よくチキンラーメンを夕食に据えることでせめてもの「夕食感」を出そうとしていたものだ(一日にシリアルしか食べないという生活は心底気が滅入る)。

しかし、そんなありがたい存在であるチキンラーメンにも弱点があって、それは「飽きやすい」という点である。
貧乏人にとっては素晴らしく脂ののったスープに、湯加減次第だが柔らかめで素朴な麺。安くて美味しく保存性も良いという万能性は、裏返せば大味で変化に欠けるというふうにも解釈されうる。

実際、一食分食べ終わらないうちに「もう満足したかな」という風に飽きてしまうことも珍しくなく、連日連夜そればかり食べていればなおさらそうなりやすいであろうことは想像に難くない。

で、そういったマンネリ化を解消する手段の一つに「ちょい足し」と呼ばれるものがある。
「ちょい足し」。字を見る限りだと、ちょいと何かを足すという意味になる。
普段通りの食事にほんのひと手間を加えることで、いつもと違う新鮮さや美味しさを味わおうという試みのことを、「ちょい足し」と通称するらしいのだ。

私はチキンラーメンがお湯に漬かるのを待っている間、「そういえばチキンラーメンには飽きやすいという弱点もあるな」と思い至り、パソコンで「チキンラーメン ちょい足し」と調べてみたのである。
こういうのは自分の家にあるような調味料を適当に入れてみたりして発見されていくのが妥当な発生過程だが、せっかくなので「これはチキンラーメンと合うな」と唸るような何かを探してみたくなったのだ。

そう思って、Google検索がトップに推してくる記事をいくつか読んでみる。
「○○種類紹介!」みたいな記事があって、「そんなに足せるようなものがあるか?」と思いながらも色々と覗いてみたところ、自分の「ちょい足し」像とその記事らで扱われている「ちょい足し」像の間に深い溝があることが分かった。

その記事で紹介されていたものの中には、例えば野菜や肉を乗っけるだとか、あるいはいくつかの調味料(少なくともニートの家にはないようなもの)を組み合わせてソースを作ってみるだとか、もはや別の料理に組み込んでしまうようなものがかなり多く見られた。
もちろん「卵を入れる」「チーズを入れる」「お酢を入れる」といったような、つまり私が想定していたような「ちょい足し」の提案が真っ先になされていたのだが、記事を読み進めていくにつれてどんどん上記のような、「それはもう「ちょい」じゃねーだろ」とでも言ってしまいたくなる「レシピ」に溢れていたのである。

ちょい足し。難しい言葉である。
きっと今日私が参照したような記事を書いた人々にとっては、そのアレンジレシピは確かに「ちょっとしたひと手間」くらいのものなのだろう。あるいは「今日はちょっと贅沢に」といった風情でもあるだろうか。それでも「ちょい足し」という言葉の範疇に収まるものとして、それらの品々を見ることが出来ているらしい。

私が求めているのはそういうものじゃなくて、つまり卵を足したりだとかそういうやつだ。「ちょい足し」というからには、ほんの「ちょい」とであってほしいのだ。卵は今自宅にないから、例えば塩胡椒を多少振るだとか、麺つゆをたらしてみるだとか、一味唐辛子を一振りしてみるだとか、そういうものが欲しかったのだ。別の料理を作りたいわけではない。それが出来たら自炊して毎日もっと健康的な食事をしているだろう。

「じゃあ塩胡椒なりめんつゆなりを入れてみてから言えよ」という話は全くその通りで、上でも「そういう風に模索されていくのが妥当だ」と書いてはいるのだが、目の前のチキンラーメンを全然違うものに変えてしまう魔法の調味料的なものを期待していたので、勝手に失望してしまったのである。

まぁ、「ちょい足し」という言葉一つ取っても色々な解釈の余地があるのだなぁということで、ある意味勉強になるイベントであった。
連日食べるのは現状だとやっぱりしんどいので、明日は別の夕飯にしておこう。

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