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『メトロイド フュージョン』プレイ感想

 『メトロイド ドレッド』に備えて2Dメトロイドを遊んでおこうシリーズ第三弾。今回はメトロイド4こと『メトロイド フュージョン』を遊んだ。

「いや、第三弾なら『スーパーメトロイド』だろ?」とメトロイドに詳しい人なら思ったかもしれないが、スーパーメトロイドはもう遊んでいる。安心してください。

プレイ環境はWiiUのバーチャルコンソール。バーチャルコンソールで使える保存機能みたいなのは使わなかった。なるべく当時の環境で遊びたかったからだ。

これを書いている時点でのシリーズ経験推移は以下のような状態だった。

3DSの『メトロイド サムスリターンズ』でシリーズデビュー
→Nintendo Switch Online加入特典でスーパーメトロイド
→同じく加入特典で『メトロイド』
→3DSのバーチャルコンソールで『メトロイドⅡ』

で、今回は『メトロイド フュージョン』。ようやくシリーズを順番に遊んでいる状態になったと言える。

というわけで感想を書いていく。あ、ネタバレ全開で感想を書くので気を付けてください。(と、言いつつ自分が一番心を揺さぶられたシーンはあまりネタバレしないようにいつも書くけど)


フュージョンの追加要素

 新アクション、ハシゴ!ぶらさがり!崖つかまり!

まず、ハシゴとぶらさがり。壁や天井をジワジワと移動できる。これらのアクションは泥臭く、探索アクションとしてイイ感じのもどかしさ。Ⅱにあったスパイダーボールが部分的に使えるようになった感じ。次回作のドレッドでも似たようなアクションが紹介されてたね。

次、崖つかまり。これはシンプルに遊びやすくなった。適当にジャンプしても届くようになったので、シビアさが失われたとも言う。

あ、あと遊びやすさで言うとビーム⇔ミサイルの切り替えがやりやすくなった。Rボタン押しながら攻撃ボタンでミサイルになるシンプルさ。最高。


遊びやすくなったとはいえ、新アクションは少ない。加えて言うと、スーパーメトロイドにあった【ダッシュ】が削除された。シリーズタイトル的には据置機→携帯機と再び移行してパワーダウンと言える。

さすがにフュージョンはそんなに面白くないんじゃないか…?

と思っていたが、もう一つだけある追加要素が新しい風を吹き込んでくれた。

それがテキストだ。これまでのシリーズ作品では、テキストはゲーム冒頭にストーリーをだーっと説明して、あとはテキストでの説明を一切しないスタイルだった。今作ではがっつりテキストを用いた作りになっている。ここが今までのメトロイドとは大きく異なる。新たな魅力だ。


ストーリー・設定の作りかたが上手すぎる

 メトロイドシリーズは任天堂タイトルには珍しくストーリーのつながりを重視するタイトルだ。初代メトロイドをふまえたうえでメトロイドⅡのストーリーが作られているし、メトロイドⅡをふまえたうえでスーパーメトロイドのストーリーが作られている。

ゼルダもかなり時系列のつながりを重視している(というか無視しないようにしている)が、最新作『ブレスオブザワイルド』では“新解釈”とか言い出して制約をブチ壊しにかかっている。さすがしたたかである。


フュージョンではゲーム中のテキスト使用を解禁し、さらにストーリーに力を入れている印象だ。以下、ざっとあらすじ。

【惑星SR388】に生息する生物を捕獲・調査する隊の警護をしていたサムス・アランは、調査中に未知の生物【X】に襲われる。【X】は宿主を殺す寄生生物で、神経中枢を侵されたサムスは死の危機に瀕する。打つ手なしかと思われたが、【ベビーメトロイド】の細胞から作られるワクチンが【X】に対して効果的だと判明する。ワクチンによってサムスは一命を取り留めるものの、能力の大半を失う。

そして、【惑星SR388】の生物を輸送した【BIOLOGIC宇宙生物研究所】から一報が届く。研究所内の【特別保管庫】でナゾの爆発事故が起きたという。不安に駆られ、サムスは現場へと急行する……

ざっくりとだが、こんな感じ。

ここで一番注目したいのが、ワクチンがサムスに投与された点だ。これによって、サムスだけが【X】に対抗できるようになった。サムスでないといけなくなったわけだ。

【なぜ主人公でなくてはならないのか?】という理由付けは、ストーリーで一番大事だと僕は思っている。特にゲームのストーリーだと、ここの説得力が弱いと「自分がやらなくてもいいじゃん」と操作するモチベーションが薄れる。

主人公でなくてはならない理由を付けたうえに、前作からのつながりであるベビーメトロイドを使う……これはストーリー・設定作りが上手いと言わざるをえない。

 しかし、Xの設定がもたらす恩恵はこれだけにあらず。

①サムスが能力を失う理由
②敵を倒してエネルギー・ミサイルが補給できる理由
③パワーアップできる理由

これら全部にも説明が付く。

①サムスが能力を失う理由
 同一主人公シリーズモノあるある、「前作で最強だったのになんでレベル1になってるんだよ」問題。Xのおかげでこれにちゃんと説明が付く。

「Ⅱとスーパーではどうなんだ」というツッコミはスルー

②敵を倒してエネルギー・ミサイルが補給できる理由
 敵を倒すとエネルギーみたいなのを落として、それを取ると回復できる。ゲームにもよるが、こういうのは暗黙の了解みたいになっているタイトルもある。表現力が上がってくると、こういうゲーム的表現に違和感が生まれていく。

ワクチンによって抗体ができたサムスは、Xを吸収できるようになった。この設定によって【敵を倒す→エネルギー補給】の理由付けがなされている。

「ミサイルが回復するのはおかしいだろ」
「Ⅱとスーパーではどうなんだ」というツッコミはスルー

③パワーアップできる理由
 もともと寄生してきたXによって奪われた能力なので、それらを吸収して取り返す仕組みが理にかなっている。また、サムスの能力を使っているXは強力な個体で、それがそのままゲーム中のボスとして登場するのも自然だ。

【ボス撃破→新能力ゲット】の流れもメトロイドとしてはいつもの流れであり、これらにしっかりと説得力があることでボス撃破のモチベーションも高くなる。

能力獲得をいつまでも鳥人像に頼るわけではないっ!

また、最強の敵SA‐Xの存在自体が、パワーアップの必要性を説いてくる。これまでのメトロイドではパワーアップの必要性はストーリー上では強調されなかった。


これら以外にも、Xは寄生した生物に模倣・擬態する習性がある設定や、Xはバンバン増殖していく設定も上手い。これによっていろんな敵が大量に出せるし、なによりSA‐Xが生まれた。

「メトロイドのワクチン打ったから低温環境に弱くなったよ」っていうのも頭よすぎる

また、BIOLOGIC生物研究所の舞台設定も上手い。研究のために生物が生息している環境を再現する。これによってメトロイド特有の自然と機械が混ざり合った不気味な地形ができあがる。「なんでいろんな生物がいるの?」もこれでクリアー。そしてそれ自体が終盤の衝撃展開への伏線となる。

とまあ、とにかくストーリー・設定の作りかたが上手いなーと感心しきりだった。テキストを用いないのはシリーズの特徴でもあったハズだが、それを破っただけのことはある。


リニア路線でナビゲーション付き

 フュージョンは構造としてはメトロイドⅡのようなリニア路線になっている。さらにテキストを解禁したことで、ナビが付いた。

スーパーメトロイドでは飛ばしすぎたので、【リニア路線+ナビつき】でシリーズ初経験のあまりゲームが上手ではない人でもちゃんと遊べるようにしたようだ。新規お客さんへの配慮、いいぞ。(腕組み古参ヅラ)


しっかしこのナビ、もうとにかくしゃべるしゃべる

「次はマップのここに向かってくれ」
 おいおい……目的地を言うなよ

「マップのここでミサイルを取ってくれ」
 いやパワーアップも言うんかい!

初代メトロイドやスーパーメトロイドで鍛えられたので、ナビ付きの探索など探索にあらず。もはやツアー旅行やないかい!と不平が噴き出る。おいおい大丈夫ですかぁ任天堂さんよお!!!

大丈夫でした。

序盤はさっき書いたとおり「いや全部言うじゃんお前」って感じで萎えるのだが、徐々に様相が変わっていく。

「今回は目的地を自分で探してくれ」っていうパターンや、目的地自体は明確にするが、そこへ向かう道中や目的地、あるいは帰り道でアクシデントが発生するパターンが出てくる。これはジャンケンでいうところのアレだ。

「オレ、次はパー出すからw」って言う戦法だ。

あえて次の手を宣言することによって、意表を突く。序盤は親切極まりないナビゲーションにしたがってそのとおりに進行するが、中盤以降はナビを逆手にとっておどろきを与えてくる。

初めにナビのとおりになると思い込まされる。だが、実際にはそのとおりにはならない。そのときに「うおっ!」とおどろかされた。

また、ナビがある状態を当たり前にしたあとで、ナビが一切ない状態になったときに未知のエリアを探っていく感覚が出てきて楽しい。あらかじめ提示されたシナリオを外れる瞬間に興奮する。

こうした予定調和を外れるおどろきはメトロイドⅡで片鱗をのぞかせ、スーパーメトロイドで極まっていたが、フュージョンではテキストを用いておどろきを作っている。面白い


フュージョンのここ好きポイント

 以下、雑多に「ここ好き」っていうポイントを並べる。

◆各種おどろき演出
 一番好きなのは「ボイラー室で異常発生。あと6分で爆発する」って言われるシーン。初代メトロイドとスーパーメトロイドでは脱出シーケンスがある。どちらもラストシーンの印象が強く、【制限時間内の移動=ラスト】の図式が刷り込まれている。フュージョンではそこにいきなりのぶち込みである。英語ボイスの使いどころが上手いのなんのって。たまらん。

他、冷凍室で“ヤツ”を見かける→怖くてエレベーターに駆け込む→突然爆発して壁が空く→煙の中から“サムス”が登場とか、エレベーター停止→冷凍室で“ヤツ”がパキンってなるとことか、極秘エリアとか、挙げればキリがない。


◆ミサイルがどんどんパワーアップしていく
 フュージョンではミサイルもビームと同じように効果が重なって強くなっていく。これめっっっちゃ好き。スーパーミサイルが大量に撃ててバランス的にどうなんだっていう気もするけど、楽しいからええんや!!


◆セクター2 TROの時間経過演出
 セクター2 TROにおける時間経過演出については語らざるをえない。

TROでは最初に訪れた段階では、壁や天井を這う芋虫型の敵──Xによる擬態だが──が立ち塞がる。TROでの探索を進めると、これらの敵の様子が一変する。這い回るのを完全に止めてサナギのような状態になり、不気味にモゾモゾうごめいているのだ。

こいつら……まさかっ……?!

そして、ゲームプレイが進みTROに再び訪れると、サナギからかえった敵が元気にブンブン飛び回っているのである。ついでに木々も過剰に生長して建物を蝕んでいる。

こうした時間経過の演出はメトロイドⅡにおけるメトロイドの成長や、スーパーメトロイドのクレテリア地表の雨がやんでいる演出などもあった。フュージョンでは【ザコ敵+環境】のエリア全体を演出に組み込んでいる。一度サナギ状態を見せつけて“伏線”を貼ってくる点が実にニクイ


まとめ

 スーパーメトロイドは極限まで突き抜けた。フュージョンでは、テキストを本格的に解禁することで遊びやすくしている。そして、新たなおどろきを作り上げている。

サムスの独白とゲームプレイで浮き彫りになっていく、AIとX──心を持たない存在の冷たさ・おそろしさ。そして、人間の愚かさ。孤独な戦いのすべてに終止符を打つあざやかなラスト。これで感動しなかったら人間じゃないと思う

最後の演出は「二匹目のドジョウ狙ってんなー」と思いつつもやっぱり感動しちゃう


次は『メトロイド ゼロミッション』をやる。


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