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未来は過去を変えられる。

2022年、J3リーグ・最終節、松本山雅FC対SC相模原。

終盤に失点を喫して、0-1で敗戦。
SC相模原は、勝ち点25で今季のJ3最下位が決まった。

敗因に関して、色々な意見があることは分かるし、スタジアムでリーグ戦を33試合見ることができた人間として、思うところもある。
そして、プロチームである以上、その評価は結果と数字が下すものであって、間違いなく今季の相模原は良くなかった。

けれど、僕はここまで何とか現状を打破しようともがいて必死に戦ってくれた選手たちを手放しに褒め称えたい。


夏場、覇気がなく一体感に欠けた試合を見て、率直に「何をやっているんだ」と感じていた時期があった。

もうこのチームはここで全てを放り投げてしまうのではないかとすら思った。目の前の試合やボールに対する執念が感じられない試合を見て、頭に来たこともあった。


しかし、秋口からチームは少しずつ変わっていったように思う。
本気で試合に臨む選手がどんどん増えていったように感じた。

前に進もうとする気持ち、仲間へボールを繋ごうとする気持ち、そういったものがよく垣間見えるようになった。

身体を張って全力で戦う彼等を見たら、いくら負けても応援したくなった。
今日の試合、身体を投げ出したディフェンス、フィジカルで圧倒してくる相手に何度も食らいつく姿、ボールを収めようと全力で身体を使って、あと一歩を絞り出すその姿。

ゴール裏で飛び跳ねながら、涙が止まらなかった。


この試合をもって、出場していた多くの選手は相模原を離れることになる。スタッフの多くも退任する。
それでもなお、必死に松本山雅を相手に90分間戦い抜いた。

彼等は何のために身体を張って相手と戦い、全力で走ってボールを追いかけたのだろうか。
僕らは何のために対岸の緑の大声援の壁と向かい合って、声を張り上げて、飛び跳ねたのだろうか。

ただ、目の前の試合に勝ちたい。
皆で笑って帰りたい。

そのために、彼等は日々練習に取り組んで、試合で必死にボールを追いかけてくれたのだと信じている。
そして、僕もそんな選手たちと喜び合いたくて、少しでも後押しがしたくて、あの場所で応援していたのだと思う。

彼等が悩んで、試行錯誤してもがいた証は、僕の脳内には確かに刻み込まれた。

必死で走った選手が倒れれば、声を上げる。
果敢にトライした選手は惜しみなく称える。
痛んで動けなくなる選手を見ると、心配で呼吸をすることすら忘れそうになる。

そこにカテゴリーや順位は関係なく、全てをぶつけて懸命に戦うフットボーラー達と、それを力の限り応援するサポーターという、どこにでもあるようでとても尊い構図が確かにあの時アルウィンには存在していた。


しかし、結果は敗戦。

秋口以降も結果が上向くことはなかった。
フットボールは積み上げのスポーツでもあると分かってきた。
どのクラブも、毎節・毎週・毎日、真剣にサッカーと向き合って練習し、それぞれのスタイルを磨いていっている。

その差を埋めて取り返すのは、困難だった。 

試合に負けて、一緒に下を向いたり、空を見上げたり。今年はそんな悲しくて悔しい思い出で溢れている。


最終節が終わり、2022年のSC相模原トップチームは解散する。多くの人が相模原を離れ、これから先はそれぞれが別々のキャリアを歩んでいくことになる。

最下位となった今シーズンは、試合が終わったその時から、過去へと変わっていく。

けれど、この"最下位"という過去をただの汚点にするか飛躍へのバネにするかは、クラブ、選手、そして応援している人間一人ひとりがこれから先の未来で決めていくことになる。


僕らは知っている。
どれだけ負けて苦しくても、懸命に何かを良くしようと、すべきことや出来ることを探していた選手達がいたことを。

一緒に前を向こうとスタンドで叫び続けた熱い気持ちを持った人々がいることを。

皆が本気だったことを、僕らは知っている。


この経験も気持ちも、絶対に無駄にしてはいけない。

未来は過去を変えられる。
この"最下位"を遠い先の未来でどう振り返ることができるか。
それは、これから先それぞれが行動と結果で示していくことになる。

証明しよう。このシーズンがあったから成長できたと。
悔しさを胸にしまって、新たな扉を開いていこう。

未来は、もう既に始まっている。
この悔しさを無駄にしない旅を、始めよう。

2022年のSC相模原に関わった全ての人々に、輝かしい未来が訪れることを祈って。

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