明日笑おう。秋にも笑おう。まだ見ぬ遠い未来でも、共に笑おう。
相模原ギオンスタジアムのメインスタンド遥か後方にそびえる丹沢山地の雪は、まだ僅かに残っている。
けれど、僕の地元・相模原には確かに春がやってきている。
朝、家を出る時に身震いすることはなくなった。
暑がりの僕は、もう冬物の上着をクローゼットの奥に押しやった。
春は色々なものがやってくる。
鼻腔と目を厄介にくすぐってくる花粉、
音を立てて相模の地を吹き抜けていく春一番、
地中から顔を出してくる虫たち、
僕が苦手なたくさんの春のしらせ。
その中で、唯一待ち遠しいもの。
SC相模原。
2022年3月12日、僕はSC相模原を応援するようになって、初めての開幕を迎える。
昨年12月5日のJ2最終節・東京ヴェルディ戦から、3ヶ月あまりが経った。
正直に言うと、最終節で惜しくもJ3降格が決まったとき、今季は昨季ほどはSC相模原の試合を見に行かないと思っていた。
カテゴリーが下がるという悲しさや辛さは想像通りの大きなダメージだったし、上位カテゴリーでこそ経験できる快感や楽しみが減ってしまうのではないかと気持ちが萎んだ時期もあった。
けれど、試合の無い冬を過ごす内に、段々と考えが変わってきた。
契約満了、退団。
多くの悲しい別れに、ツイッターや周囲の人たちと寂しい思いを共有した。
新加入、入団。
新たに相模原に加わる選手たちの経歴やサポーターに向けられた言葉の数々に、期待と希望が湧いてきた。
そして、年が明けてから、日に日に高まる新シーズンへの熱。
就任2シーズン目、自身初のJ3での指揮となる高木琢也監督は、今季の目標を「優勝」と明言した。
そして、DeNA体制2年目を迎えた2022年、SC相模原が掲げたスローガン、
「ENERGY FOOTBALL」。
サポーターに、観客に、相模原に、エナジーを。
見るもの、関わるもの全てに、活力を。
そして、その力が再びチームへと流れ、相模原中をエナジーが循環していく。
ワクワクする言葉だと思った。
思えば、僕の去年の思い出はSC相模原一色だった。
春、初めてゴールを奪った瞬間を目の当たりにした時、身震いが止まらなかった。
夏、どれだけ必死にもがいても、勝てないチームを見て、心から悔しくなって、涙を流した。
秋、相模原で躍動する若く才能溢れる選手たちを見て、未来への希望を抱いた。
冬、1試合1試合、ワンプレーワンプレーに全てをぶつける選手達と心を一つにして、共に笑って共に泣いた。
この歳になるまで何もない街だと思っていた地元・相模原で、今は緑色の血が脈を打って僕の中に流れているのを感じている。
こんなに面白いものがある、熱くなれるものがあるともっと知ってほしい。
そして、去年僕がSC相模原に出会って味わったワクワクする体験をもっと多くの人と、もっと強くたくさん分かち合いたい。
「ENERGY FOOTBALL」
SC相模原には、それを叶える力がきっとある。
3月12日、開幕戦の来場者に配られるカードには、こんなメッセージが書かれている。
(SC相模原公式ツイッターアカウントより引用。同じ文面がクラブ公式HPにも上がっています)
SC相模原がどんなクラブで在りたいかが情熱をもって示された、凄まじい熱量のメッセージだと思う。
読み込むと、最後の3行で心に火が灯る。
応援する人間とされる人間、両者が同じ方向を向いて走り出すと、その関係性が溶けて曖昧になって、1つの大きなエネルギーとなる感覚。
きっと、僕はもうそれを知っている。
DeNA体制2年目、
1年でのJ2復帰を目指す、過酷なシーズン。
そして、SC相模原を更にこの街のシンボルに、皆が集える旗印にするための大切なシーズンが始まる。
そのために、まずは明日、開幕戦を勝利で飾ろう。皆で笑って家路につこう。
苦しいシーズンを戦い抜き、秋には皆で笑おう。来季への期待に胸を膨らませ、楽しい冬を迎えよう。
そして、まだ見ぬ遠い未来、今よりももっと多くの人と、想像すらできないまだ見ぬ新しい場所で、SC相模原と共に笑おう。
共に笑おう。
SC相模原で、僕達が未来を生きるためのエナジーを蓄えよう。
熱くなろう。
活力と情熱が溢れる空気を、共に応援する人々や選手達と分かち合おう。
そして、エナジーを送ろう。
SC相模原のフットボールを完成させるために。
2022年、SC相模原の新しい世界を切り拓く年が、やってくる。
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